『PROJECT Y』で来日したハン・ソヒ。『12月の君へ』「わかっていても」「マイネーム: 偽りと復讐」で見せた無彩色の個性
様々な役の“服”を纏い、そのキャラクターの人生を生きる
傷つきながらも強く生きていく女性を演じてきたソヒだが、「作品に取り組む時、私は一旦ハン・ソヒを捨ててスタートします。“私”をできる限り捨てて空っぽにしておかなければ、そのキャラクターになり切れないからです。そして撮影が終わったらすぐその“服”を脱いでハン・ソヒに戻ってくる」と語っているように、ハードボイルドからラブロマンスまで、どんなキャラクターも演じこなせる役者でもある。ここまで、比較的“悪い女性”“自立したパワフルな女性”という印象が強かったソヒだが、「わかっていても」では、恋愛はしたいが愛を信じられなくなった美大生ナビに扮し、恋愛は面倒だが愛情そのものはほしい男性ジェオン(ソン・ガン)とのラブロマンスに挑戦している。
現代のオム・ファタールともいえるソン・ガンの存在感はもちろん、ソヒもその美貌を全面に出すことなく、卑怯な元彼に心をくじかれて恋愛にトラウマを抱きながらも、ジェオンに心をかき乱されてしまう素朴な美大生を演じた意外性が光る作品だった。傷ついた恋愛経験から、“わかっていても”人を愛してしまう人間の性を、自問自答しながら相手に惹かれていく等身大の女性として上手く体現していた。
そして、まっすぐだけれど鈍感、といういままでと違った女性を演じたのが「サウンドトラック#1」。ソヒが演じていたのは、売れない作詞家ウンスだ。彼女は大物作曲家から「君の書く歌詞にはせつなさが足りない。片思いの経験がないのでは?」と歌詞にダメ出しをされたことから、長年の幼なじみで写真家のソヌ(パク・ヒョンシク)に相談。彼が誰かに片思いしていると知り、住み込みで作詞を手伝って欲しいと頼み込む。
ソヌを演じたパク・ヒョンシクは抑制の効いた演技ながら、ウンスへの恋心を眼差しでずっと表現しており、視聴者はいつウンスが気づくのかを見守ることになる。そういう意味で「サウンドトラック#1」は、率直な性格のウンスが自分の中に込み上げた感情の名前を見つけていくことが主旋律だ。だからこそ、19年来の親友ソヌが兵役に行く夜、ようやくウンスが自身の恋心に気づくシークエンスが感動的だった。
ドラマで着実に実力と認知度を上げ、新たに映画というフィールドに挑戦するハン・ソヒ。日本で2か月続けて『12月の君へ』、『PROJECT Y』というジャンルの異なる2本が公開されるいま、彼女の演技の幅を目の当たりにしながら、スクリーンでの躍動を堪能してほしい。
文/荒井南

