『ドールハウス』矢口史靖監督に “Jホラーの申し子”がインタビュー!「観客が能動的に怖がってくれるような“共犯関係”を作れたら」

『ドールハウス』矢口史靖監督に “Jホラーの申し子”がインタビュー!「観客が能動的に怖がってくれるような“共犯関係”を作れたら」

「子どもの僕にとっての映画館は“日常と地続きのリアルお化け屋敷”みたいな場所でした」

――人形が登場するホラーでは『チャイルド・プレイ』(88)などが代表的ですが、意識された部分はありましたか?

「むしろ“反面教師”として意識しました。『チャイルド・プレイ』のチャッキーや、近年の『アナベル』、『M3GAN/ミーガン』などは人形が動いた瞬間に怖くなくなる。動いたとわかった時点で、メカかCGか人の操作か、仕掛けを想像してしまうんですよね。だから『ドールハウス』では、ギリギリまで動く瞬間を見せない。観客にも、登場人物にも『本当に動いたのか?』と疑わせたままで物語を進めたかったんです」

――たしかに“見えない恐怖”がずっと続きます。

人形に隠された秘密が徐々に解き明かされていく、謎解きミステリーの要素も醍醐味となっている
人形に隠された秘密が徐々に解き明かされていく、謎解きミステリーの要素も醍醐味となっている[c]2025 TOHO CO., LTD.

「でも物語が進むと、誰もが『やっぱり動いてる!』と認めざるを得なくなる。そこからは実体のある“モンスター”として見せる必要がある。袋の中で暴れる、フラッシュで一瞬映る…そういう小出しの表現を段階的に提示していくのは、難しくも楽しい作業でした」

――演出のうえで影響を受けたホラー作品にはどのようなものがあるのでしょうか。

「ウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』やデヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・ブルード/怒りのメタファー』などですね。『エクソシスト』はすべてが現実の延長にあって、いま観ても本当に怖い。悪魔に憑かれたリーガンを病院に連れて行き、治療を受けさせる。母親はそれが正しいと思うけれど、実はそれが一番いけなかったという。『ザ・ブルード』も精神科医による治療が物語のきっかけとなりますが、子どもたちの怖さには観た当時非常にショックを受けました。『ドールハウス』でも、ドールセラピーという“治療”が恐怖の引き金になっています。これらの作品には、オカルトと現代科学が地続きに存在する怖さにすごく影響を受けました」

少女に取り憑いた悪魔と、その邪悪な存在と対峙する神父の壮絶な戦いをリアルなタッチで描き出した映画『エクソシスト』(73)
少女に取り憑いた悪魔と、その邪悪な存在と対峙する神父の壮絶な戦いをリアルなタッチで描き出した映画『エクソシスト』(73)[c]Everett Collection/AFLO

――監督ご自身も70年代の“オカルト・パニック映画ブーム”世代ですよね。

「そうですね。『ジョーズ』、『タワーリング・インフェルノ』、『大地震』なんかを封切りに劇場で観て、強い衝撃を受けました。子どもの僕にとっての映画館は“日常と地続きのリアルお化け屋敷”みたいな場所でした。現実のすぐ隣にある恐怖を、スクリーンの中で体験する。あの感覚はいまも忘れられません」

「『呪怨』シリーズを観て、これは“怖い『男はつらいよ』”なんだなと思いました」

――監督自身が撮られたホラー作品というと、やはり関西テレビの「学校の怪談」シリーズが印象的です。1999年の「春のたたりスペシャル」から2001年の「春の物の怪スペシャル」まで、3本を撮られていますね。どういった経緯で参加されたのでしょうか。

「最初はプロデューサーからコメディリリーフとして依頼されたんです。『みなさん本気で怖いのを撮ってくるから、ちょっと息抜きとして、まっすぐ怖いというよりは笑えたほうがいいかもしれません』というお願いのされ方でした。そうして最初に撮った『悪魔の選択』をプロデューサーも気に入ってくれて、翌年もよろしくということになった際、『もうちょっと怖くしてもいいですか?』と言って、キラキラ大学生たちが集団催眠の実験に参加するプロットを書いたらすんなり通って。それが『恐怖心理学入門』になりました」

――「恐怖心理学入門」は、まさに僕ら30代の世代にとってトラウマ的な作品です。

「プロデューサーは、ちょっと怖いくらいの楽しい作品になるって思っていたんですよね(笑)。中盤までは確かにそうなんです。最後のほうに行くにしたがって、おもしろおかしい連中の様子がだんだん変わってくる。それまでキラキラしていた分、より闇が深く見える…という作品になったので、僕は撮っていてすごく楽しかったです」

『ドールハウス』には多彩な演出や映像の仕掛けが盛り込まれ、第45回ポルト国際映画祭で最優秀作品賞を受賞
『ドールハウス』には多彩な演出や映像の仕掛けが盛り込まれ、第45回ポルト国際映画祭で最優秀作品賞を受賞[c]2025 TOHO CO., LTD.


――「学校の怪談」シリーズでは、Jホラーブームを担った監督たちとオムニバスで競作するかたちでしたが、印象に残っている作品はありますか?

「1998年の『学校の怪談G』で清水崇さんが撮られた『片隅』、『4444444444』を観た時はすごく怖くて、『なんだこれは…こんなことする人がいるんだ』と思っていたら、ビデオオリジナル版の『呪怨』が出て、すごく怖かったんですが『あれ、このキャラクター知っているぞ』と。その後『呪怨2』、さらに映画版の1と2を観て、これは“怖い『男はつらいよ』”なんだなと思いました。おなじみの寅さんが柴又に帰ってきてひと騒動が起きるのと同じように、伽椰子と俊雄があの家でまた怖い目に遭わせてくれる。その後のハリウッド版『THE JUON/呪怨』も観ましたし、清水さんの作品はかなり観ています」

――同世代のJホラー監督の作品は、ほかにどういったものをご覧になっていますか?

「黒沢清さんの作品はほぼ観ています。もう中毒ですね。ホラーじゃない時でも大抵は変なことするな、というのが楽しい。中田秀夫さん、中村義洋さん、白石晃士さんの作品も観ますし、やっぱり本質的に怖いもの好きなんですよね。今回も怖がらせていただきますっていつもワクワクしながら観ています」

――最近のホラーで印象的だった作品はありますか?

「近藤監督の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』、拝見しました。すごく怖かったですし、おもしろかったです」

――ありがとうございます、光栄です!

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