田中麗奈、『雪風 YUKIKAZE』で噛み締めた平和への願い「『普通がいいな』という言葉が身に沁みた」

田中麗奈、『雪風 YUKIKAZE』で噛み締めた平和への願い「『普通がいいな』という言葉が身に沁みた」

映画『雪風 YUKIKAZE』(8月15日公開)の「ニッポン放送『上柳昌彦 あさぼらけ』特別試写会」が7月26日にニッポン放送イマジンスタジオで行われ、出演者の田中麗奈と企画、プロデュースを務めた小滝祥平が出席した。

『雪風 YUKIKAZE』「ニッポン放送『上柳昌彦 あさぼらけ』特別試写会」が行われた
『雪風 YUKIKAZE』「ニッポン放送『上柳昌彦 あさぼらけ』特別試写会」が行われた

数々の激戦を最前線で戦い抜いた駆逐艦で、ほぼ無傷で終戦を迎えた「雪風」。その知られざる史実を背景に、太平洋戦争の渦中から戦後、さらに現代へと繋がる激動の時代を懸命に生き抜いた人々の姿を壮大なスケールで描く本作。田中は、竹野内豊演じる「雪風」艦長である寺澤一利の妻、寺澤志津役を演じた。

『はつ恋』を振り返った田中麗奈
『はつ恋』を振り返った田中麗奈

田中にとって、2000年公開の篠原哲雄作品『はつ恋』からタッグを組んでいる小滝プロデューサーは「ご縁の深い方」だという。「『はつ恋』は18歳で高校を卒業して1作目の作品。『はつ恋』の撮影の前に卒業式を終えて、衣装合わせがあって。本当に、新生活スタートの時の作品」と振り返った田中は、「真田広之さんや原田美枝子さんという大先輩とご一緒して、毎日たくさん吸収をして、知恵熱が出るくらいだった」とほほ笑みながら、「そういった自分にとっても大切な作品で、小滝さんとご一緒した」としみじみ。さらに自身にとって初めての時代劇となった『山桜』(08)でも小滝プロデューサーと映画制作をともにし、田中は「歩き方や所作など、イチから学んでいった」とあらゆる“初めて”に立ち合ってくれた存在だと感謝を込めた。

プロデュースを務めた小滝祥平
プロデュースを務めた小滝祥平

小滝プロデューサーは、「250人の命を引っ張っていく艦長の妻」と田中が演じた役柄について解説し、「しっかりとスクリーンに焼き付けていただかなければいけない。それは最初から田中さんしかいないと思っていた。しっかりと自分の役柄をまっとうしていただいた」と全幅の信頼を寄せた。MCを務めた上柳は、「立ち居振る舞いなど、戦前の奥様というのはこのような感じだったのではないかというのを見事に演じられていた」と惚れ惚れ。茶道や日舞も学んできた田中だが、志津役を演じるためには「所作の先生にしっかりと教えていただいた」そうで、「座り方や旦那様のお迎えの仕方など、細かく教えていただいた。所作は、相手との関係性のなかで変わっていくものなので、茶道や日舞をやっていてもそれだけでは足らない部分があります。映画のなかでの立場としての所作を、先生に教えていただいた。小滝さんからは、武士の妻に近いような立ち姿、居住まいということを言っていただきました」と役作りについて明かしていた。

上柳昌彦、田中麗奈の演技を絶賛
上柳昌彦、田中麗奈の演技を絶賛

また若き水雷員、井上壮太役を演じた奥平大兼とは、「気が合う」と目尻を下げた田中。「『MOTHER マザー』を観て、なんてすばらしいんだろうと思った。華があるし、お芝居になると深みが出てくる」と奥平の俳優力を絶賛しつつ、「お互いの趣味のレコードや古着の話をしていて。奥平くんにあげたいレコードがあるので、会ったらあげようとずっと思っている。ジョアン・ジルベルトのレコード」と趣味も合うと笑顔を見せていた。

『雪風 YUKIKAZE』に込めた想いを明かした
『雪風 YUKIKAZE』に込めた想いを明かした

小滝プロデューサーは、膨大な量の資料を読み込んで本作の制作に臨んだという。田中は「撮影に入るまでもたくさんの資料をお調べになっている。そういった準備が(映画作り)の90%くらいじゃないでしょうか。俳優がやれることは、10%くらいだと思う。(映画作りは)船に例えたりしますが、制作の方々は船を作るところからやられている」と敬意を表すなか、小滝プロデューサーは「いまから20年前に真田広之さんと一緒に、『亡国のイージス』という映画を撮っていました。キャンペーンをするなかで、真田さんと『国益ってなんだろう』と話していた。その時に2人で話したのは、子どもたちの幸せな未来こそ国益なんだろうということ。そのためには絶対に戦さをしてはいけない。戦さをしないように、我々が小さな力ではありますが頑張ろうと思ってこの映画を作りました」と力強くコメント。

「もう少し年齢を重ねたら、娘と一緒に観たい」
「もう少し年齢を重ねたら、娘と一緒に観たい」

観客や記者にもお礼を述べたり、温かな人柄のにじむトークで会場を盛り上げていた田中。最後には「世代を超えて観ていただける映画」と切り出し、「私の娘ももう少し年齢を重ねたら、一緒に観たいと思います。身近な人に勧めていただいて、いま私たちは幸せだなと、噛みしめていただきたいなと思います。『普通がいいな』という言葉が、本当に私は身に沁みました。いま私たちが平和に生きてるこの日常は、先人の皆様が一生懸命作ってくださった未来。命を削って、力を尽くしてくださったからこそ、その未来を過ごしている。改めて感謝の気持ちが湧いてきます」と心を込め、大きな拍手を浴びていた。


取材・文/成田おり枝

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