セバスチャン・スタンが製作総指揮も務めた意欲作『顔を捨てた男』本編映像&役作りの裏側が明らかに
セバスチャン・スタンが第74回ベルリン国際映画祭の最優秀主演俳優賞(銀熊賞)と第82回ゴールデン・グローブ賞最優秀主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)など多くの映画賞に輝いた、A24製作の『顔を捨てた男』(7月11日公開)。このたび、本作の本編映像、場面写真が解禁となった。
顔に極端な変形を持つ、俳優志望のエドワード(スタン)。隣人で劇作家を目指すイングリッド(レナーテ・レインスヴェ)に惹かれながらも、自分の気持ちを閉じ込めて生きる彼は、ある日、外見を劇的に変える過激な治療を受けて念願の新しい顔を手に入れる。別人として順風満帆な人生を歩みだした矢先、目の前に現れたのは、かつての自分の「顔」にそっくりな男オズワルド(アダム・ピアソン)だった。その出会いによって、彼の運命は想像もつかない方向へと逆転していく。
主人公エドワードを演じるのは『サンダーボルツ*』(25)にも登場した、ウィンター・ソルジャー役でおなじみの俳優スタン。また、スタンは、アメリカ現大統領ドナルド・トランプの半生を描いた『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』(24)での演技も高く評価され、同作で第97回アカデミー賞主演男優賞にノミネート。日本でも公開されるや、トランプ本人に酷似した細かい表情の作り方や独特の歩き方、姿勢、佇まいなど、念入りな研究を重ねたと思われる演技に観客は驚嘆させられたことも記憶に新しい。
今回、『顔を捨てた男』で演じたエドワードという役は、見た目の特徴から、自分に自信が持てない極度に内気な男。映画の前半では顔に大掛かりな特殊メイクを施し、顔を変えた後には別人ガイとして生きる。しかも、かつての自分に似た人物が現れ…と、感情面も複雑だ。スタンは脚本を読んで「ここ5年ほど、私は挑戦的に感じられる作品、つまり変革の要素がある作品に惹かれてきた。肉体的な変化だけでなく感情的なレベルでも、この作品は非常に新しい領域だった」と語っている。スタンは、この複雑な役エドワードを演じるために、より深く役を理解するため同じ症状をもつ当事者への取材も敢行。さらには、撮影の合間には演技を掘り下げるため、特殊メイクをした状態でニューヨークの街を歩き、地元のコーヒーショップにも入って周囲の状況を観察。ほとんどの客が自分と目を合わせなかったことを振り返り、「彼の病状についてできる限り理解しなければならないという大きな責任を感じた。見知らぬ人々の反応を吸収できたのは重要な体験だった」と明かす。
さらに、本作では俳優にとどまらず製作総指揮として作品に参加。ヒロインを務めたレインスヴェのキャスティングや特殊メイクを手がけたスタッフへも自ら依頼。作品に大きな貢献を果たした。
さらに、新たな顔を手に入れ、静かに高揚していく様子を捉えた本編映像が解禁に。新しい顔を手に入れ、夜の街に繰りだしたエドワード。実感がないのか、喜ぶどころか鏡に映った自分を見て戸惑いの表情を浮かべているようにも見える。その後、以前も訪れたことがあるバーに入るが、以前とは顔が違うエドワードに気づく人はもちろんいない。カウンターでウイスキーを注文し、店員から「氷は?」と聞かれると「薬効を薄めたくない」と、治療薬により変わった自分が元の自分に戻らないか不安げな様子。ウィスキーを煽りながら、静かに高揚していく様子が収められている。この場面で流れているのはパンクバンドTeddy & The Frat Girlsの「I Owe It To The Girls」という曲。「I've got the clap, I'm going crazy, I'm getting sick, I'm feeling lazy~」という歌詞には、実は大声をあげたいが性格的にそうはできないエドワードの「気が狂いそうだ!」という混乱ぶりが表現されているのかもしれない。
またセバスタの実際の幼少期の写真が劇中使用されている貴重な場面写真も解禁。夜の街に出たエドワードと鏡に映るエドワードの表情を切り取ったもの。さらに、エドワードの部屋に飾ってある母親との2ショット写真が何気なく写るシーンを切り取ったものも。なんとスタン本人が幼少期に母親と撮ったもので、美しい母親の横顔と丸い頬が可愛らしいスタンの貴重な1枚となっている。
究極の不条理の果てに、エドワードにどんな運命が待ち受けているのか?数々の賞で評価を受けた本作をぜひ劇場で目撃してほしい。
文/鈴木レイヤ