「嫌なこと全部忘れられる」「人はいつまで挑戦できるのか」映画『F1(R)/エフワン』の超爽快感と内に秘められたメッセージを徹底レビュー

コラム

「嫌なこと全部忘れられる」「人はいつまで挑戦できるのか」映画『F1(R)/エフワン』の超爽快感と内に秘められたメッセージを徹底レビュー

トップガン マーヴェリック』(22)のジョセフ・コシンスキー監督とブラッド・ピットがタッグを組み、究極の映画体験を届ける映画『F1(R)/エフワン』が公開中だ。かつて“天才”と呼ばれ将来を期待されるも、レースから退いた伝説のF1レーサー、ソニー(ピット)が、旧友との出会いをきっかけに現役復帰し、最弱チームを優勝に導くべく奮闘する様子を描く超高速体感エンタテインメントだ。

負け続きのF1チームのオーナー、ルーベン(ハビエル・バルデム)は、若き日に共に走ったレーサー、ソニーを自身のチームへ誘う。旧友のF1チームを救うためルーベンの誘いに乗ったソニーだが、そこで自信家のルーキー、ジョシュア(ダムソン・イドリス)と出会う。破天荒なソニーにジョシュアは苛立ち、ことあるごとに衝突してはチームの空気はいっそう悪くなるばかり。あとがないチームに緊張感が走るなか、ソニーの常識破りの作戦がやがてチームを勝利へと導いていく。

F1の全面バックアップのもと製作されているほか、世界各国の本物のサーキット場を使用、日本では字幕監修を元F1ドライバーの中野信治が務めるなど、徹底的にリアルを突き詰め制作された映画『F1/エフワン』。早くも海外メディアからは「まさに夏の超大作」「IMAXで観るべきレース」「これは映画ではなく、体験だ」など絶賛の声が多数寄せられているが、日本でもすでに映画『F1/エフワン』の虜になる人が続出。今回、その虜になった一人であり、映画関連の連載や番組MCを担当する映画ソムリエの東紗友美が、本作について熱量たっぷりにレビューを綴ってくれた。

すべてを背負う孤高のベテランの姿がアツい!

圧倒的な臨場感!155分間、私はどこにいたんだろうか?映画館にいたのだろうか?それともサーキットにいたのだろうか?“地上版『トップガン マーヴェリック』”と称されるだけあって、圧倒的な没入感をもたらした『F1/エフワン』は破壊的な魅力を放つ映画だった。映像も音響も極上、直球すぎるほど熱い展開に涙した。レースのたびに胸がいっぱいなり、仲間のためにすべてを背負う孤高のベテランの姿に胸が締め付けられる。命を懸けた勝負の世界はこの夏よりもアツいかもしれない。こういう“本気の映画”を待ってた。

実際にレーシングカーに乗っているような視点で、レースの様子が映される
実際にレーシングカーに乗っているような視点で、レースの様子が映される[c] 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

まずレース映画としての魅力を紹介したい。私は、カーレースものが大好き。通常では考えられないスピードの車を目の当たりにしていると日常の悩みがどこかに吹っ飛んでいくから。例えば実在のレースを基にした『ラッシュ プライドと友情』(13)や『フォードvsフェラーリ』(19)、ドキュメンタリー系の『アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ〜』(10)や『シューマッハ』(21)、オリジナルの『デイズ・オブ・サンダー』(90)や『スピード・レーサー』(08)と挙げてみてはキリがない。過去の名作は数ある。しかし、この映画『F1/エフワン』は異色かつ現代的な魅力にあふれている。

製作には7度の世界チャンピオンに輝くF1の現役レーサー、ルイス・ハミルトン選手も参加し、「F1映画史上最もリアルな作品」と太鼓判を押している。実際に現地の本物のF1サーキットを使用し、ブラッド・ピット自身が運転を担当するという前代未聞のリアリティを体感できた。

かつてソニーと共に走ったルーベンは、自身のF1チームにソニーを誘う
かつてソニーと共に走ったルーベンは、自身のF1チームにソニーを誘う[c] 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

続いて、音楽、音響、撮影の魅力!ハンス・ジマーの爆音サウンドに、脳内が歓喜。リアルなエンジン音と組み合わさり、まるで本当にレース会場にいるような体感。重厚でドラマティックなメロディがレースのスピード感とシンクロし、心拍数を強制的に引き上げてくる。ジマーは『デイズ・オブ・サンダー』や『ラッシュ プライドと友情』といったほかのカーレースものでも音楽に携わっていたが、今回の『F1/エフワン』では多様なアーティストとコラボし、“興奮”、“高揚感”、“没入感”、これらすべてを音楽だけで演出している。そんな、作品を“聴く映画”にも昇華させてしまうジマー節が炸裂。身体中に鳴り響く数々の音楽が感情の導火線として機能して現地感も出してくれている。


撮影も革新的で、『トップガン マーヴェリック』のカメラ技術をさらに進化させた小型高性能カメラを使用。時速300km超のレーシングカーでリアルタイム遠隔操作しながら撮影され、信じがたいレベルの映像体験に仕上がっている。ピット内の高精細カメラも加わり、“ここではないどこか”に連れて行かれるような映像世界が展開。自分自身が車内にいるような感覚にも繰り返し陥る。

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