『サンダーボルツ*』をネタバレレビュー!「*」の意味や『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』への展望も予想
罪の意識や孤独を抱えた者たちが寄り添い、苦しみを分かち合う
このサンダーボルツと敵対しヴィランとなるのが、ボブがスーパーパワーに目覚めたことで誕生した、飛行能力や銃弾をも跳ね返す強靱な肉体を持つ超人セントリーであり、彼の内面に巣食うもう一つの人格、ヴォイドだ。
まったく歯が立ちそうもない強力なヴィランに立ち向かうサンダーボルツの戦いは、ボブの心の内側へと入り、彼が抱える“孤独”という大きな闇と対峙する方向へと展開される。そして、その苦しみを分かち合い、仲間として寄り添うことで事件を解決に導いた。
エレーナたちには後ろ暗い過去があり、やはり孤独に生きてきた者同士で図らずもチームを結成することに。この要素を主眼とし、互いを癒すという到達点がボブを救うことにつながるカタルシスとなっているのはお見事。過去の過ちや善悪の相克は、いままでのアベンジャーズのメンバーでは語ることができない、本作ならではのポイントとなっているのは間違いないだろう。
サンダーボルツはニュー・アベンジャーズだった!?
さらにラストでは、タイトルに記されていた「*(アスタリスク)」が、脚注などを示す記号であり、「サンダーボルツはニュー・アベンジャーズである」という意味であったことが明かされる。「ニュー・アベンジャーズ」というチーム名は、その名の通り「新しいアベンジャーズ」と捉えることができるが、原作コミックスに倣う形だと多少事情が異なってくる。
「アベンジャーズ」は政府公認でありながら、政府の命令には従わずに独自に行動することが許されたヒーローチームの名称なのだが、その時々の情勢に応じて使われ方が異なることがある。ヒーロー同士の内戦=シビル・ウォーでは、アベンジャーズを政府の管理下に置くか否かで対立し、政府寄りのアイアンマン=トニー・スタークとヒーローの登録制に反対するキャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャースをそれぞれリーダーとする陣営に分かれ、戦いが繰り広げられた。最終的には内戦によって市民が影響を受ける姿にキャプテン・アメリカがショックを受け、投降することで幕を下ろす。
これにより、アイアンマン派のヒーローたちは、政府公認の「マイティ・アベンジャーズ」として行動し、連載タイトルも同じものが使われていた。一方、キャプテン・アメリカを失いながらも、自分たちの正義を信じて戦う本来のアベンジャーズ的な陣営は「シークレット・アベンジャーズ」を名乗ることになる。この際、従来のアベンジャーズの意思を継ぐシークレット・アベンジャーズの活躍を描くシリーズのタイトルが「ニュー・アベンジャーズ」と表記されており、同時期にアベンジャーズがタイトルにある2作品が動いていたことになる。
こうした事情を踏まえると、ポストクレジットシーンで描かれた新キャプテン・アメリカことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)とニュー・アベンジャーズが「アベンジャーズ」の名称の取り扱いの件で揉めているというシーンは、2026年5月全米公開予定の『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』にもなんらかの影響があるのではないかと考えられる。