50歳の誕生日突きつけられた“自分の価値”『サブスタンス』元人気女優の主人公、残酷な現実と直面する本編映像
デミ・ムーアが主演を務める映画『サブスタンス』(5月16日公開)から、主人公が残酷な現実を突きつけられる姿を捉えた本編映像が解禁された。
50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス(ムーア)は、容姿の衰えから仕事が減少し、ある再生医療“サブスタンス”に手を出す。しかし薬を注射するやいなや、エリザベスの上位互換“スー”(マーガレット・クアリー)が、エリザベスの中から現れる。若さと美貌に加え、エリザベスの経験を武器に、たちまちスターダムを駆け上がっていくスー。だが、一つの心をシェアする2人には「一週間ごとに入れ替わらなければならない」という絶対的なルールがあった。しかし、スーが次第にルールを破りはじめてしまい…。本作は第97回アカデミー賞では主演女優賞含む5部門にノミネートされたほか、本年度の賞レースで主演女優賞を次々と受賞している。
このたび解禁された映像は、50歳の誕生日にエリザベスがトイレで自分の“価値“を突きつけられるシーンを捉えたもの。自身の冠がついたフィットネス番組の撮影終了後、故障中の女性トイレを避け、やむなく男性トイレにこっそり入ったエリザベス。ところが彼女が個室に入った後に電話をしながらトイレに入ってきたのは、自分の番組を担当するプロデューサーのハーヴェイ。そこで耳にしたのは、エリザベスを番組から下ろし、代わりに若いMCを登用したいという内容の電話で、50歳になったエリザベスを貶める雑言の数々だった。「あのババア、なぜこんなに続いた? にはまるで謎だ」「オスカー受賞? 知るか。いつだ?1930年代の『キング・コング』?」と耳を塞ぎたくなるような中傷に加え「女の生殖能力は25歳ごろから低下するんだ」などと下品に笑いながら発言。何度も“若い女を“と連呼していたハーヴェイの発言に傷つき、苛立ちながらも、なにも言い返せず鏡に写った自分を見つめるエリザベスの姿から、彼女のやりきれない怒りと哀しみが伝わってくる。
なお、多くの名作映画へのオマージュが込められていることも話題の本作だが、特に注目を集めているのが、スタンリー・キューブリックの『シャイニング』(80)を想起させる本シーンの演出。『シャイニング』の有名なシーンの1つでもある、特徴的なカーペットのパターンと長い廊下が本カットでも登場、独特の視覚と空間表現を作品に巧みに取り入れることで、監督のファルジャが唯一無二の世界観を作り上げていることも見どころの一つとなっている。
ムーアの熱演と刺激的な映像表現が話題の本作。封切りまで解禁された映像で期待を高めよう!
文/スズキヒロシ