まもなくコンクラーベが本当に開催!注目度高まる『教皇選挙』とあわせて観たいフランシスコ教皇の関連作
“ロックスター”とも呼ばれたフランシスコ教皇
アルゼンチン出身で、アメリカ大陸から初めて選出されたフランシスコ教皇が就任したのは2013年3月13日。前任のベネディクト16世の辞任にともなう選挙を受けてのことだった。改革派として知られ、就任直後から式典の時間を短縮して駆けつけた約20万の信徒との触れ合いに時間を割き、自身に関わる慣例を質素なものに次々と変更。任期中には世界各地を訪れ、貧困に苦しむ人々に寄り添い、世界情勢や環境問題、人種差別、金融システムなどにも様々なメッセージを送ってきた。
その姿勢はカトリック教徒以外にも支持され、ローリングストーンズ誌の表紙まで飾った人気ぶりから“ロックスター教皇”と呼ばれることも。そんなユニークなキャラクターを持つフランシスコ教皇なだけに、伝記ドラマからドキュメンタリーまで何度も映画化がされている。
フランシスコ教皇が抱える壮絶な過去を映しだした『ローマ法王になる日まで』
フランシスコ教皇の激動の人生を映画化した『ローマ法王になる日まで』(15)。ブエノスアイレスにイタリア移民の子として生まれたベルゴリオは、大学で化学を学ぶ青年だったが信仰に目覚め、20歳でイエズス会に入会する。35歳の若さでアルゼンチン管区長に任命されるが、アルゼンチンでは軍事クーデターによる独裁政権が勃発。激しい弾圧が敷かれるなか、人々を救おうとするベルゴリオの想いも打ち砕かれていく。
当時のアルゼンチンは3万人の強制失踪という悲劇がもたらされた時代で、独裁政治に異を唱える者だけでなく、少しでも嫌疑がかけられた人も不当に連行され、逮捕、拷問にかけられていた。それは聖職者も例外ではなく、ベルゴリオが政権との関係性を模索するなか、奉仕活動を行っていた彼の仲間も犠牲となってしまう。慈愛とユーモアにあふれたフランシスコ教皇だが、その内にはここまでも壮絶な過去を抱えていたのかと思わず絶句させられる。しかし、だからこそ変化を恐れることなく、世界が向き合うべき問題に道を示してきたのだと改めて痛感し、深い感動が押し寄せる作品になっている。
前教皇ベネディクト16世との対話を映画化した『2人のローマ教皇』
『2人のローマ教皇』(19)は枢機卿だったのちのフランシスコ教皇が、当時のローマ教皇であるベネディクト16世との間で交わした対話を、実話に基づいて映画化。カトリック教会の方針に疑問を持つベルゴリオ枢機卿は、辞任をベネディクト教皇に申し出ようとする。聖職者による児童への性的虐待などのスキャンダルが明るみとなり、教会は激しく非難されていた。しかし、ベネディクト16世は彼の辞任を受け入れず、バチカンにある自身の別荘へ召喚する。
保守派のベネディクト16世と改革派のベルゴリオは、教会の在り方について真っ向から意見が合わず、様々な議論を繰り広げる。やがて教皇は職務を辞任するつもりであることを告げ、後継にベルゴリオを望んでいると語りかける。これに対し、ここでも彼を踏みとどまらせるのが、母国が独裁体制に陥った頃の自身の行動について。教会、信者たちを守るためとはいえ、政権とのつながりを持ったことを深く後悔しており、自身に教皇の座はふさわしくないと考えていた。告解を聞いたベネディクト16世は彼の罪に赦しを与え、「そんな君だからこそ、任せたい」となお強く推す。
意見や主張が異なっていても、互いを理解し、道を模索することができること改めて教えてくれる。そしてなにより、ベネディクト16世役のアンソニー・ホプキンス、ベルゴリオ役のジョナサン・プライスという名優2人のかけ合いがとにかく楽しい。議論を交わし、急に声を荒げたと思えば、次の瞬間には笑い合っている。ラストシーンでの、2014FIFAワールドカップの決勝、アルゼンチン対ドイツ戦に熱狂する2人の姿がなんとも言えない余韻をもたらしてくれる(ベネディクト16世はドイツ出身)。