鈴木亮平のボケに有村架純が関西弁でツッコミ!『花まんま』初日舞台挨拶は和気あいあい
第133回直木賞を受賞した朱川湊人の同名短篇集を、『そして、バトンは渡された』(21)や『九十歳。何がめでたい』(24)など感動作からコメディまで幅広く手掛ける前田哲監督のメガホンのもと映画化した『花まんま』(公開中)。本作の初日舞台挨拶が4月25日丸の内 TOEIにて行われ、鈴木亮平と有村架純、鈴鹿央士、ファーストサマーウイカ、そして前田監督が登壇した。
両親を早くに亡くし、大阪の下町で男手一つで妹を育ててきた人情味あふれる兄の俊樹(鈴木)と、子どものころから別人の記憶を持って育ち、まもなく結婚を迎える妹フミ子(有村)の姿を描く本作。父と交わした「どんなことがあっても妹を守る」という約束を守り続けてきた俊樹。ある日、妹の結婚が決まり肩の荷がようやく下りるはずだったのだが、遠い昔に2人で分陰したはずのフミ子の秘密がよみがえってしまい…。
俊樹役を演じた鈴木は「この話は兄妹だけでなく、親から受け継がれていく命や、次の世代にどう伝えていくか、別れざるを得なかった人との喪失感など、立ち直っていく過程も含めて人間らしく、美しい姿だと思います。皆さんがどんな気持ちで観てくださるのかを想像しながら過ごしたいと思います」と、初日を迎えた喜びを語る。
一方、フミ子役の有村は「私たちは監督も含め、スタッフの方たちとも非常に和やかに過ごしていました。そういった空気感がしっかりと映っている映画になっています。ぜひ、この映画を観て温かい気持ちになってほしいです」と、撮影現場を振り返りながら挨拶。また、原作との出会いから17年越しで映画化にこぎつけた前田監督は「いまここにいるメインキャストの皆さんのおかげですばらしい作品になったと思います」とキャスト陣へ称賛の言葉を述べた。
役づくりについて訊かれた鈴木は、俊樹役を演じるうえで家族や兄妹のバックボーンを考えて準備を重ねたことを明かす。「いい脚本には役の本音は書かれていない。その裏にどんな気持ちがあるかを大事に考えています」と語り、「俊樹は幼いころに両親が亡くなってしまった原因について考えて乗り越えてきたんじゃないかと思います。映画で描かれていないフミ子の思春期について、すごく大変だったという設定を想定し、いろんなことを経てきた2人の歴史が見えてくるといいなと思いながら取り組みました」と説明。
“別の人の記憶を持つ”という難しい役どころに挑んだ有村は「フミ子にとってその存在が恐怖心なのかというところからひも解いていきました。自問自答をしながら、別の女性の存在と共存していく感覚で台本を読み進めていました」と明かし、俊樹との関係性について「私も姉がいて妹の立場ですが、異性の兄妹だと関係性が違う。ベタベタはしない、お互いの悩みや相談事はしないドライな距離感が心地よく、でも根底には感謝の気持ちがある。それがラストシーンに繋がっていくのだと想像していました」。
さらに兄妹役で共演した感想を求められた鈴木は「心からよかったな、幸運だったなと思います」と満面の笑みを浮かべ、有村も「『阪急電車』という映画がデビュー作で、一緒のシーンはありませんが亮平さんも出演していました。それから約15年を経て、関西が舞台の映画でご一緒できて縁を感じました。地元のお兄ちゃんのような親近感を持って、自分も現場に立つことができました」と感謝を伝え合っていた。
その後は、劇中のフミ子の口癖である「一生のお願い」にかけて、共演者やスタッフの誰かに「一生のお願いをするなら?」というテーマでトークが進行。「『花まんま2』をやりたい!」と続編を熱望するウイカに会場から拍手が湧き、鈴鹿は役づくりで頻繁に肉体改造をしている鈴木に「胃腸をください。きっと素敵な胃腸をお持ちなんじゃないかと」とまさかのお願い。それには鈴木もツッコミを入れつつ、「後で控室で分けます」と笑いを誘う。
さらに有村は「お芝居をしている身としてはすごく欲しいスペックです」と、ウイカに「声(声量)を少し分けてほしい」とお願い。「出そうと思えば大きい声を出せるのか?」と振られると、マイクなしで「おはようございます!」と元気な挨拶を披露する有村に会場は大盛り上がり。続けて有村は、鈴木から「関西弁でツッコんでください」とお願いされ、鈴木の「映画『アンパンマン』ぜひ観てください」というボケに「アンパンマンちゃうねん!」と勢いよくツッコミを入れていた。
最後に有村は「観終わったあとに、家族のことを思い返したり、自分の人生を振り返ったり、そんな愛おしい時間に浸れる映画になっていると思います」と本作の魅力をあらためて語る。そして鈴木も「原作を読んでからまた映画を観ていただくと、より深くこの作品を楽しめると思います。誰もが持っている記憶の琴線に触れる映画。ぜひ周りの人にもおすすめしてもらえたらうれしいです」と観客にメッセージを送った。
文/久保田 和馬