『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太監督と作家の梨が驚嘆!『サブスタンス』は「爽やかな絶望」「想像以上の阿鼻叫喚」
『ゴースト ニューヨークの幻』(90)や『G.I.ジェーン』(97)などで知られるデミ・ムーアが、若さと美貌に執着する元人気女優を演じ、キャリア初のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた『サブスタンス』(5月16日公開)。本作の先行“接種”上映が4月23日にTOHOシネマズ日比谷で開催され、上映後のトークショーに映画監督の近藤亮太と怪談作家の梨が登壇した。
50歳を迎え、容姿の衰えを理由に仕事が減少した女優のエリザベス・スパークル(ムーア)は、“サブスタンス”という再生医療に挑戦。手に入れた薬を注射するやいなや、エリザベスの上位互換体であるスー(マーガレット・クアリー)が出現し、若さと美貌、そしてエリザベスの経験を武器にたちまちスターダムを駆け上がっていく。一つの心をシェアする2人には“1週間ごとに入れ替わらなければならない”という絶対的なルールがあったのだが、スーはそれを破ってしまい…。
「かわいそ笑」や「ここにひとつの□がある」などで知られ、インターネット上で主に活動する怪談作家の梨は、顔出しNGということで、劇中の重要アイテムとなる“口紅が強烈に強調されたデミ・ムーアお面”をかぶって登場。すでに本作を複数回鑑賞していることを明かし「今年観た映画のなかで一番好き!気付いたらラスト30分は立ち上がって観ていた。最後は一人スタンディングオベーション。私が8回転生しても生みだせない物語だと思います」と大絶賛。
また、長編監督デビュー作となった『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(配信中)がスマッシュヒットを記録した近藤監督も「ビックリするくらいおもしろい映画でした」と興奮気味。「ストーリーの設定だけを聞くとベーシックだけれど、思っていた以上に大変なことになり、かつ期待したモノがそのままある。ビジュアルも含めて想像を遥かに超える阿鼻叫喚。僕が観た試写室も、ラスト30分は大爆笑に包まれていました」と語った。
さらに近藤監督は「キラキラした時代のデミ・ムーアを知っている分、本作で演じたキャラクターの持つ“現役ではない感”がご本人と重なってるかのように見え、そのような表現をデミ・ムーアがしているのもすごい」と、本作で完全復活を遂げた大女優の並々ならぬ役者魂に驚嘆。「対する“若さパワー”があふれきっている状態を演じたマーガレット・クアリーも、一世一代の当たり役をいまこのタイミングで出会えているのが良い」と、メインキャスト二人の配役に唸る。
一方で2000年生まれだという梨は、ムーアの活躍ぶりをまったく知らなかったと明かし、「このようなジャンルでずっとやってきた人なのかと思ってしまうくらい、いい意味で老かいな演技のベテランだと思っていました。鑑賞後に色々と調べたら、アイドル的なキャリアで…」と、これまでのムーアのパブリックイメージを180度覆す怪演に驚愕したことを告白。
そして「R15+の作品ですが、できれば高校を卒業するまでに観てほしい」と、若い世代にこそ本作を観てほしいと呼びかける梨は、「老いることの怖さ、周囲からよく見られたいという願望は誰しもが持つもの。どこにも救いの要素はないのに、なぜか楽しく観られるという恐ろしさ。私は爽やかに絶望しました」と熱弁をふるう。続けて近藤監督も「観終わった時に、いまが一番若い!という前向きな気持ちになって、いろいろとがんばろうと思える。観たら元気になるはずです!」とアピールしていた。
文/久保田 和馬