吉沢亮、『国宝』は役者人生の集大成「いままで培ったすべてをぶつけた」横浜流星も「役者冥利に尽きる」と並々ならぬ想いを吐露

吉沢亮、『国宝』は役者人生の集大成「いままで培ったすべてをぶつけた」横浜流星も「役者冥利に尽きる」と並々ならぬ想いを吐露

吉田修一の同名小説を李相日監督が映画化した『国宝』(6月6日公開)の完成報告会が4月23日に東京都内で行われ、吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、見上愛、田中泯、渡辺謙、李相日監督が出席した。

『国宝』(6月6日公開)の完成報告会が行われた
『国宝』(6月6日公開)の完成報告会が行われた

吉田修一自身が、本作の歌舞伎指導も務めた中村鴈治郎の元で3年の間、歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にして書き上げた渾身の一作を映画化した本作。任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄の姿を描く。主題歌「Luminance」を担当するのは、本作の音楽も手掛ける原摩利彦。歌唱にはKing Gnuの井口理。作詞には故坂本龍一氏の娘である坂本美雨が参加している。

メガホンをとった李相日監督
メガホンをとった李相日監督

本作は先日、第78回カンヌ国際映画祭の「監督週間部門」に選出されたことも発表となった。李監督は「カンヌ、国宝、歌舞伎。語呂がいいなと思う」と微笑み、「超狭き門で、世界中からしのぎを削った映画が集まる場。日本の観客の皆さんにエンタテインメント作品として届けると同時に、カンヌに通ったということで作品性も評価されて。両軸が揃った作品として、あちらの方にも(楽しんでほしい)。カンヌでは皆さん、歌舞伎にいろいろなイメージを持たれていると思うので、そういったイメージを覆す映画体験をしていただければうれしい」と願いを込めた。

吉沢亮と横浜流星が、親友でありライバル関係を演じた
吉沢亮と横浜流星が、親友でありライバル関係を演じた

吉沢は、父を抗争の末に亡くし、上方歌舞伎の名門・丹波屋に引き取られ、稀代の女形として脚光を浴びていく主人公の喜久雄を演じた。横浜が、上方歌舞伎の名門・丹波屋の御曹司として生まれ、喜久雄の親友でありライバル、俊介を演じている。カンヌ選出のニュースが発表となった際、偶然にも2人は京都で同じ仕事をしていたという。吉沢は「映画に携わらせていただいている人間にとしては、カンヌは憧れの舞台。そのような場所にお邪魔できるというのはすごくうれしいですし、発表の時には流星と一緒に京都の東寺にいた。世界遺産の場所で、一緒にお仕事をしていた。すごく運命じみたものを感じた」としみじみ。「日本が世界に誇る文化が世界に放たれて、どういう評価をいただけるのかすごく楽しみ」と期待を寄せた。

「1年半、ひとつの役に向き合った」と貴重な経験を果たした吉沢亮
「1年半、ひとつの役に向き合った」と貴重な経験を果たした吉沢亮

そして吉沢は、本作にかけた並々ならぬ想いを告白。「撮影期間を含めると1年半、歌舞伎の稽古を重ねて、役作りに向き合ってきて」と振り返りつつ、「1年半という期間、ひとつの役に向き合うというのは、やろうと思ってもやれなかったりもする。もちろんどの作品も特別で、全力でやっていますが、特にこの作品にかけた時間とエネルギー量は桁違いと言いますか。それだけのものを背負って現場に臨んで、僕のいままでの役者人生の確実に集大成と言いますか。いままで培ったすべてをぶつけた作品です」と力強く語る。さらに歌舞伎役者という生き様に、「何百年も先人たちが積み上げてきた、芸を生きる。そこへの覚悟、積み重ね」と敬意を表し、「もちろん足元にも及ばないのはわかりきっていますが、がむしゃらにやっていた時間には、我々役者がこの作品をやった意味があるのかなと思う。がむしゃらな精神、意地みたいなものを喜久雄を通して感じた。そういったものも観ていただきたいポイント」と稽古に励んだがむしゃらさが投影されているとコメント。すでに完成作を「2回観た」そうで、「すごいものを観たという余韻があった」と打ち明けていた。

「幸せな時間を過ごせた」と充実の表情を見せた横浜流星
「幸せな時間を過ごせた」と充実の表情を見せた横浜流星

横浜は、「俊介という人物は、自分とは正反対で、もっと言いますと、苦手な人間」と演じた役柄を分析。「まず理解し、愛することから始めました。『流浪の月』の時もそうだったんですが、李監督と共に作品をつくらせていただく時は、きっと自分のなかにもあるけれど、自分が律して、眠らせているものを、監督は解放させ、挑戦させてくれる。これって役者冥利に尽きますし、まだ力不足も感じましたし、非常に幸せな時間を過ごせました」と李監督との際タッグは喜びの大きなものになった様子。完成作を観て「芸に人生を捧げた彼らの生き様が美しくて、感銘を受けましたし、励まされました。彼らのような人生を過ごすためには、芸に励むのみだなと思いました」と刺激を受けたと話していた。

渡辺謙、吉沢亮を絶賛!
渡辺謙、吉沢亮を絶賛!

上方歌舞伎の名門・丹波屋の看板役者である花井半二郎を演じたのが、渡辺だ。原作に触れた時には「こんなのは映像化なんてできないし、誰にもできないと思った」とぶっちゃけながら、「でもいたんですね、ここに」とにっこり。「吉沢はこれまでにも大河ドラマをやったり、映画もたくさん出ているけれど、試写を観た後すぐに、李に『これ、吉沢の代表作になるね』と言ったんです。これにかけている姿も知っているし、この作品を背負う覚悟と、ある種の執念みたいなもの。それを亮が持ち続けていた。試写を観た時には、俳優仲間として『すごいものを作ったなコイツ』と尊敬できました」と大役を演じ切った吉沢を大絶賛。「ありがとうございます」と照れ笑いを見せた吉沢は、「かなりの想いをかけて臨んだ作品。この作品が僕の代表作になってくれたらいいなという想いで、やらせていただいた作品。すごくうれしいです」と感謝をあふれさせていた。

豪華キャスト陣がずらりと並んだ
豪華キャスト陣がずらりと並んだ

キャスト陣の誰もが本作への並々ならぬ想いを吐露する会見となったが、完成作を観た原作者の吉田は「100年に1本の壮大な芸道映画」と称えたという。李監督は「ラッシュを観終わった後に、非常に興奮された状態でそうおっしゃってくれた。その後にボソッと『想像を超えてきた』と付け加えていただいた」と当時の状況を回想。「吉田さんも、はたして歌舞伎俳優ではない方々が演じて、歌舞伎役者としての佇まいが生まれるのだろうかとどこかで思っていたはず。その杞憂をすべて吹き飛ばした。ものすごいご機嫌でしたね。すごく喜んでいただけた」と原作者からも熱い反応があったことを明かしていた。


取材・文/成田おり枝

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