有力は『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』『ハルビン』?第61回百想芸術大賞ノミネート作品&候補者をおさらい
“韓国のゴールデン・グローブ賞”と称され、韓国エンタメ界において権威あるアワードの百想芸術大賞。第61回を迎える今年の授賞式は5月5日(月・祝)に開催される。近年厳しい状況にある韓国映画界で、今年は昨年の『ソウルの春』(23)、『破墓/パミョ』(24)のような観客動員1000万人超えの“千万映画”は登場しておらず、本命不在ともいわれている。反面、様々なジャンルの作品や名実共に人気の俳優たちがノミネートされている。そこで、注目作、そして気になる俳優などをチェックしてみよう。
口コミで人気を伸ばした『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』『ハルビン』が有力?
『破墓/パミョ』と『ソウルの春』の二強が競い合った昨年と違い、決定打に欠ける今年の百想芸術大賞。とはいえ、口コミで爆発的な人気が広まった『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』(6月13日公開)と『ハルビン』(7月4日公開)の勢いが増しているようだ。
まず、『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』は、世界三大文学賞の国際ブッカー賞やダブリン文学賞にノミネートされたパク・サンヨンのベストセラー小説を原作に、『アメノナカノ青空』(05)、『女は冷たい嘘をつく』(16)のイ・オニ監督が映画化。他人の目を気にせず、自由奔放に生きるジェヒ(キム・ゴウン)と、ゲイであることを隠して孤独に生きるフンス(ノ・サンヒョン)。まったく正反対な男女が出会い、同居したことから互いの自分らしさを見つけていく姿を描くロマンスだ。韓国で昨年10月に公開された本作は、「2024 今年の女性映画人賞」でキム・ゴウンが演技賞を、第45回青龍映画賞および第11回韓国映画製作家協会賞でノ・サンヒョンが新人俳優賞を受賞。ほか、海外の映画祭での人気も高く、あと押しする声も多い。今回の百想芸術大賞では作品賞のほか、イ・オニ監督が監督賞、昨年の『破墓/パミョ』で主演女優賞を受賞したキム・ゴウンが2年連続で主演女優賞、ノ・サンヒョンが新人男優賞にノミネートされている。
対抗馬と目される『ハルビン』は、祖国の未来を変えるために命を懸けた若者たちと彼らの行く手を阻む者との闘いの物語。韓国の独立運動家アン・ジュングン(ヒョンビン)を主人公に、1909年10月、中国のハルビンで発生した歴史的事件を壮大なスケールで描くサスペンス・エンタテインメントだ。昨年12月に公開されて以来、ロングランヒットを続けており、観客動員数は490万人以上を数え、2025年の観客動員数1位を記録している。百想芸術大賞では、作品賞をはじめ、『インサイダーズ/内部者たち』(15)、『KCIA 南山の部長たち』(20)などで韓国現代史を描いてきたウ・ミンホ監督が監督賞、そして主人公のアン・ジュングンを演じたヒョンビンが主演男優賞、助演男優賞にチョ・ウジン、ホン・ギョンピョ撮影監督が芸術賞の候補に入っている。
日本ではすでに公開された『リボルバー』(24)は、名優チョン・ドヨンが『無頼漢 渇いた罪』(15)のオン・スンウク監督と再タッグを組んだリベンジ・ノワールで、作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、そして助演女優賞にイム・ジヨンがノミネート。彼女は放送部門の「オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-」で確実視されていた主演女優賞のノミネートがなかっただけに、こちらでの受賞が期待されている。
『戦と乱』(24)も注目作だ。Netflix配信映画でありながら、第29回釜山国際映画祭のオープニングを飾ったことで大きな話題に。カン・ドンウォン主演の時代劇で、パク・チャヌク監督が製作を手掛けており、作品賞と脚本賞のほか、パク・ジョンミンが助演男優賞、新人男優賞にチョン・ソンイル、さらに音楽が芸術賞にノミネートされている。また、家業の継承をめぐる家族の対立を描く『長孫(原題:장손)』からは、作品賞と脚本賞、そして新人男優賞にカン・スンホが挙がっている。
3月に開催された大阪アジアン映画祭でも絶賛された『朝の海、カモメは』(24)のパク・イウン監督は、前作の『ブルドーザー少女』(22)で新人監督賞を受賞し、今回は2度目で監督賞、脚本賞にノミネート。寂れた漁村を舞台に、年老いた漁師の不器用な生き様を描いており、御年75歳のベテラン俳優ユン・ジュサンが主演男優賞の候補にノミネートされたことは特筆ものだ。