ファン必見!プラダ青山で開催中のニコラス・ウィンディング・レフン&小島秀夫による展覧会をレポート
東京の表参道にあるプラダ青山店で、ニコラス・ウィンディング・レフンと小島秀夫による展覧会「SATELLITES」が8月25日(月)まで開催中。内覧会に参加してきたので、気になる内部についてレポートしたい。
デンマークの映画監督であるニコラス・ウィンディング・レフンは、24歳の時に監督した『プッシャー』(96)でその名が知られるようになり、批評面でも高く評価されるように。続編の『プッシャー2』(04)と『プッシャー3』(05)、同シリーズにも出演したマッツ・ミケルセンの主演作『ヴァルハラ・ライジング』(09)などを次々と発表し、カルト的人気を博していく。ライアン・ゴズリングを主演に迎えたハリウッドでの初監督作『ドライヴ』(11)ではカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞。近年は、テレビシリーズ「トゥー・オールド・トゥー・ダイ・ヤング」やNetflixのミニシリーズ「コペンハーゲン・カウボーイ」を手掛けたほか、プラダ2023年春夏レディスファッションショーのショートムービー『Touch of Crude』も制作している。
一方の小島秀夫は世界的なゲームクリエイターで映像作家。大ヒット作「メタルギア ソリッド」シリーズで広く知られ、2019年にはノーマン・リーダスやミケルセン、ギレルモ・デル・トロ、レア・セドゥといった錚々たるスターたちが参加した「DEATH STRANDING」をリリースし、6月26日(木)には続編「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」が控えている。
2人のコラボといえばやはり、「DEATH STRANDING」でレフンが“21分毎に心停止しては3分で蘇生する”ハートマン役で出演していることがまず頭に浮かんでくる。しかし、その交流は10年以上も前からあったようで、『ヴァルハラ・ライジング』に衝撃を受けた小島がレフンとのコンタクトを希望したことから始まったという。現在に至る両者のコミュニケーションは少し前衛的なもののようで、メールでのやり取り、しかし文字ではなく、写真や映像、絵文字によって交わされているそうだ。そんなレフンと小島のユニークな関係性に触れることができるのが、今回の「SATELLITES」におけるインスタレーションとなっている。
会場となるプラダ青山の5階フロアに到着すると、そこにはベッドや椅子が並ぶ家庭的な雰囲気、一方で一昔前のSF映画のなかに入り込んだような空間が広がっている。まず目に飛び込んでくるのは6台のテレビだ。宇宙船を彷彿とさせるレトロフューチャーなデザインで、モニターにはレフンと小島の顔が映しだされている。2台ごとに横に並んでいたり、向き合う形で設置されており、映像内で片方が話す際にはもう一方がそれに耳を傾けるなど、レフンと小島が本当に会話をしているようなレイアウトになっている。
フロアから外れたところには更衣室と呼ばれる部屋もあり、ソファや吊るされた小さなモニター、カセットラジオが置かれているほか、いろいろなカラーケースに入ったカセットテープも山積みに。このテープにはサウンドバイトや映画のサウンドトラックが収録され、さらにレフンと小島の対話も様々な言語でAI翻訳され、織り交ぜられているという。フロアのベッドにもテープとウォークマンが置かれていて、このウォークマンでテープを再生することもできる。
そしてなんと、内覧会当日の会場にはレフン本人の姿が。了承を得たうえでカメラを向けると、カセットテープを口で咥える独特なポージングを披露。ハードでバイオレンスな監督作とは異なる、チャーミングでユーモアにあふれるキャラクターに触れることができた。
ニコラス・ウィンディング・レフンと小島秀夫、両者の関係性やクリエイティブにも迫ることができる展覧会「SATELLITES」。2人が手掛けた作品のファンなら、ぜひ一度会場を訪れてみてほしい。
取材・文/平尾嘉浩