アーティストから俳優へ。『Page30』で演技初挑戦のMAAKIIIにインタビュー「孤独や痛みを役に乗せられるのは最高の喜び」

インタビュー

アーティストから俳優へ。『Page30』で演技初挑戦のMAAKIIIにインタビュー「孤独や痛みを役に乗せられるのは最高の喜び」

「毒にも薬にもなる”劇薬”を、ひたすら浴び続けた撮影期間」

 出自、経歴がまったく違う4人の女優が集められた
出自、経歴がまったく違う4人の女優が集められた[c] DCTentertainment

「ひとりではない力を撮影中はすごく感じていたんです」とさらに述懐するMAAKIII。「共演者のみなさんがいたし、いろいろな経験をした魂がいっぱいあったので、そういう目に見えないものを味方にしていたところもあって。それに、現場は芝居を一緒に作る者同士の刺激と衝撃のぶつかり合いだったから、いろいろな脳を使っていましたね。私はまだ不器用なので、みなさんの芝居に実際に見入っちゃう時もあったし、それが樹利亜の言動と混じり合っているところもあったと思います」。

 舞台となるのは外界と断絶された円形劇場
舞台となるのは外界と断絶された円形劇場[c] DCTentertainment

そこで改めて堤監督の演出について聞くと、「円形劇場という閉ざされた空間を用意し、ものすごいスピードで展開させながら、物語の深みもある劇団マカリスターの主宰・井上テテさんのシナリオと、山田佳奈さんの劇中劇の台本をバーンと置いて『これを全部覚えるように』ってサラッと言うから、その時点で堤さんの魔法にかけられている感じでした」と1年前の撮影に思いを馳せる。そのうえで、「ピッタリの言葉があるんですよ。あれは“劇薬”だなと思っていて」と笑顔をのぞかせた。「ハイテンションで高カロリーなお芝居をキープしなければいけない私たちに、毒にも薬にもなる劇薬を1週間ずっと浴びせ続けてくれた監督はスゴいです。私たちをあそこまで追い込む堤さんはやっぱり確信犯だったんでしょうね」。


異様な状況に追い込まれ、ぎりぎりの精神で稽古する女優たち
異様な状況に追い込まれ、ぎりぎりの精神で稽古する女優たち[c] DCTentertainment

本作のラストでは中村正人が曲を手がけ、DREAMS COME TRUEの吉田美和が詞を書いたMAAKIIIの歌う「終わりの歌-Page30-」が流れ、大きな感動に深い余韻をもたらす。「生命の流れを感じるすごく美しい歌で、あの歌で4人の女優のそれぞれの思いが昇華したように感じられるから、歌の力って本当にすごい」とMAAKIIIも噛みしめる。「あの曲を4人で歌ったラストシーンの撮影も忘れられないですね。泣き叫ぶシーンを撮ったあとの本当のファイナルで、もう声も出ないような状態で歌ったんですけど、それも『Page30』ならではだし、みんなかっこいいんです。完成した映画であのシーンを観た時も『みんな、かっこいいぞ~!』って叫びたくなっちゃいました(笑)」。

本作のメイン上映館として新設された「渋谷 ドリカム シアター supported by Page30」(渋三広場・渋谷警察署裏)では、MAAKIIIたちが円形劇場で奏でた美しい歌声を最高の音響システムで追体験できる。「私もまだドリカム シアターでは観ていないので、早く体験したいです。みなさんにもシアター内に敷いてある芝生に横になったり、置いてあるYogiboに抱きついたりしながら、自由な体勢で楽しんでほしいし、最後にかかる歌を一緒に口ずさんでいただけたらうれしいですね」と語ったMAAKIII。

「アクションをやってみたい!」と活き活きと語ったMAAKIII
「アクションをやってみたい!」と活き活きと語ったMAAKIII撮影/興梠真穂

それにしても、本格的な俳優デビューとなる本作でこんなにもハードルの高い芝居をクリアしてしまったら、どんな役でもやれてしまうのではないか?そう問うと、「今回共演させていただいた広山さんにも『MAAKIIIちゃんはもう怖いものないよ』って言われました(笑)』と笑いながらも、すぐに「でも、役者の仕事は今回のようなアプローチのものだけではないし、芝居も奥の深いものですからね。もっと貪欲にと言うか、もっと精進していろいろな役柄に挑戦していきたいですね」とキリッとした表情に。そして、思い出したように「あっ、アクションをやりたいんです、私!」と訴える表情がさらに輝きを増した。

『Page30』(公開中)
『Page30』(公開中)[c] DCTentertainment

「今回、撮影に入る前に、堤さんに『なにか準備することはありますか?』ってお聞きしたら、『キックボクシングとかやってみたら』って言われたんです。監督はたぶん精神力を鍛えるためにそう言われたと思うんですけど、キックボクシングのトレーニングに行ったジムで『このまま続けたら大会に出られますよ』という言葉をいただいて。自分でもけっこう動けるなと思ったし、それは発見だったんですけど、短期集中でひとつのことに打ち込むのが私は好きだし、アクション映画はいつかやってみたい。私の初恋の人はジャッキー・チェンさんですからね(笑)」

取材・文/イソガイマサト

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