岩井俊二監督「不思議な魔法のような作品」『Love Letter 4Kリマスター』公開に感謝!豊川悦司は「中山美穂の代表作」と魅力を語る

岩井俊二監督「不思議な魔法のような作品」『Love Letter 4Kリマスター』公開に感謝!豊川悦司は「中山美穂の代表作」と魅力を語る

映画『Love Letter 4Kリマスター』の公開初日舞台挨拶が4月4日、TOHOシネマズ日比谷にて開催され、豊川悦司、酒井美紀、岩井俊二監督が登壇した。

【写真を見る】中山美穂との思い出、こだわり抜く岩井組の現場について語る豊川悦司
【写真を見る】中山美穂との思い出、こだわり抜く岩井組の現場について語る豊川悦司

1995年の公開から30年という年月を経たいまも、世界中で愛され続けている映画『Love Letter』は岩井俊二監督の長編デビュー作。婚約者の藤井樹を亡くした主人公・渡辺博子が、彼がかつて住んでいた小樽に送った手紙をきっかけに、フィアンセの中学時代の同級生で、彼と同姓同名の女性・藤井樹との文通を通して、博子そして樹の埋もれていた二つの恋を浮き彫りにしていく。中山美穂が一人二役で渡辺博子と藤井樹を演じ、博子の友人・秋葉茂には豊川悦司が、樹の少女時代には酒井が扮している。

本作で長編デビューを果たした岩井俊二監督
本作で長編デビューを果たした岩井俊二監督

「本当に夢みたい」と満席の会場を見つめた岩井監督は、「日本で公開され、中国、韓国を中心にアジアの方がすごく応援してくれました。アジアにはたくさんの友達もできたし、映画祭もやってもらったり…」としみじみ。現在でも映画の感想がSNSのDMに世界中から届くような状況が続いていると明かし、「今年30周年。なにかやりたいなと思って、美穂ちゃんに連絡をとったら、彼女も今年40周年。一緒になにかやれたらいいね、なんて話している矢先でした」と昨年12月に亡くなった中山をしのぶ。中山がこの舞台挨拶にいないことを「すごく残念だけど…」としながらも、「こうやって(たくさんの人々に)支えられてスクリーンに蘇る。不思議な魔法にかかったような作品。なにか持っている不思議な作品です」と心境を語った。

映画『Love Letter』は「中山美穂の代表作」と語った豊川悦司
映画『Love Letter』は「中山美穂の代表作」と語った豊川悦司

「僕の隣に美穂ちゃんがいないのがとても残念」と神妙な面持ちの豊川。「僕のなかでは『Love Letter』は美穂ちゃんの映画。たくさんの人に美穂ちゃんを観ていただいて、少し気が楽になった気分です」と話すと、出演した30年前の映画が、映画館のスクリーンにかかること自体がなかなか経験できないこととし、「俳優として役者冥利に尽きる。この映画と出会うことができてよかったと思います」とよろこびを噛み締めた。

当時を振り返り「岩井監督とはこれが3本目で。最初が『世にも奇妙な物語』の短編ドラマ『ルナティック・ラヴ』。撮影期間は4日間。スタッフ、キャストが徹夜してやっと間に合ってできた作品。次が16ミリで撮った『Undo』。撮影期間は1週間。ほぼ徹夜してやっと間に合った。そして『Love Letter』。撮影期間は2か月、スタッフ・キャストはほぼ寝ていない」とニヤリ。岩井組はとにかくこだわりぬく現場であるとし、「岩井監督という柔らかい(雰囲気の)カリスマがいる。魔法にかかったような感じになって、岩井さんのために頑張んなきゃって思って眠たいのを我慢している、それが岩井組」とこだわりがすごすぎる現場を指摘。そして出来上がった映画『Love Letter』は「映画が一人歩きしてくれた。いろいろな国に自分から出かけて行って、ちゃんと自分を観てもらっている。これは映画が持つ素晴らしい一面。作ったのは僕たちだけど、ちゃんと育って、歩いて、いろいろな人と出会ってくれているんだなって思います」と公開から30年を経てもなお愛され続ける理由を説明した。

中山との現場での初対面の様子を語った豊川と酒井
中山との現場での初対面の様子を語った豊川と酒井

こだわりの一つとして明かされたのが“12時間待ち”のエピソードだ。「カメラマン(篠田昇)もすごくこだわりのある方。岩井さんと双璧をなすこだわりの方。なかなか撮らない、なぜかずっと待っている。12時間(笑)」と振り返った豊川は「その12時間のおかげで雪が降った。もしその12時間がなければ、降雪機を使っていたはず。この映画って神がかっているなって。それが美穂ちゃんと一緒のシーンでも本当によくあって…」と懐かしみ、「映画の現場では初めましてだった。最初のシーンで『お待ちしておりました』と言ってくれた記憶があって。ちょっと普通の人では思いつかないような、すごく繊細なハートを持っている人という第一印象でした」と微笑む。

12時間待ちについて改めて触れた豊川は「椅子を並べていてもほとんどしゃべらない。僕も現場であまり話をしないほうで、12時間で2、3言話したくらいだと思います」と撮影時の裏話を披露。しかし、その待ちの間の中山の姿から感じたことがあるとし、「この現場を愛している。それが伝わってくるんです。この世界観がハマっていたんだと思います。僕は個人的に『Love Letter』は中山美穂の代表作だと追っているし、この作品以前と以降では彼女の仕事に対する考え方みたいなものが変わったんじゃないかなと思っています」と明かした。

中山に憧れ芸能界入りをしたという酒井美紀
中山に憧れ芸能界入りをしたという酒井美紀

本作がデビュー作だった酒井は「私は当時16歳。中山美穂さんに憧れて芸能界に入りたいと思っていたんです。憧れの美穂さんと同じ役をいただいて光栄に思っていたことを思い出します」と微笑む。初対面はロケ地小樽のロケバスのなかだったそうで「同じ役なので一緒の撮影はなかなかなくて。たまたまお会いしたらとても舞い上がってしまいました。ミーハーな気持ちを出してはいけないと一生懸命抑えながら、とても緊張していたのを覚えています。とにかく美し過ぎて、見ることもできないくらいまぶしかったです」と当時の様子を語った。

岩井監督は「僕のなかでは樹は美穂ちゃんがそれまで演じていた役柄のようなイメージがあり、博子のほうがイメージがなくて。でも会ってみると博子っぽさがあって、両方やれる!と思ったんです」とのこと。カメラが回ると役に入り、カットがかかると中山に戻るような、二役のどちらかに戻るようで、カメラが回っていない時に、いま目の前にいるのは誰なのかと思うことも多かったという岩井監督は「その分かりにくさみたいなのが彼女の個性であり、中山美穂が中山美穂たる所以。あの独特ななんともいえない見飽きない美しさと表現力。彼女のなかのラビリンスの一端を垣間見たような気がしました」と唯一無二の存在感に触れていた。


公開から30年、世界中で愛され続けている恋愛映画の金字塔
公開から30年、世界中で愛され続けている恋愛映画の金字塔

最後の挨拶で岩井監督は「本当に不思議な魔法のような作品。美穂ちゃんはいなくなってしまいましたが『Love Letter』という作品との縁が天国の美穂ちゃんとつながっていると思います。この縁が末長く続いてくれたらうれしいです」とこれからもずっと愛してほしいと呼びかけ、穏やかな笑みを浮かべていた。

取材・文/タナカシノブ