春とヒコーキの土岡哲朗&ジャガモンド斉藤が『セッション』を語りつくす!鬼教師の指導は令和にどう観られる?
『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼル監督による衝撃の長編デビュー作『セッション』(14)が、公開10周年に『セッション 10周年4Kリマスター版』として蘇り、4月4日(金)より公開される。3月31日には、4K&Dolby Atmosの設備環境による特別試写会が開催。ゲストとして、映画好きで公開当時に本作を劇場で観て衝撃を受けたというお笑いコンビ、春とヒコーキの土岡哲朗、MCとしてお笑い芸人で映画紹介人のジャガモンド斉藤が登壇するトークイベントも実施された。
『セッション』は、高校時代にバンドでジャズドラマーとして活躍したが、厳しい指導者に苦悩したチャゼル監督の体験から生まれた自伝的な物語。今回は“ご新規様”限定特別試写会と題して、いままで『セッション』を観たことがないという観客が来場したが、“ふてほど”時代である令和のいま、鬼教師フレッチャーによる狂気のレッスンを参加者はどう観たのか?実際に、賛否の声が飛び交い、大いに盛り上がった。
まずは土岡が「公開された当時に映画館に観に行って、その時の強烈な印象があります。今日鑑賞したのはそれ以来だったんですが、もうヘトヘトになりますね。ずーっと緊張していて。皆さんもたぶん、熱血に音楽をやる、熱血の青春のお話かなという気持ちで観に来られたと思うんですが、なんでこんなに緊張しなきゃいけないのかなという気持ち」と、観終えた直後の興奮を伝えた。
さらに「10年前に観た時より酷いなと思うことは増えましたね。(フレッチャーから)朝6時に(教室に)来いと言われたのに、本当は9時集合でよかったというシーンは、音楽の指導でもない、ただの嫌がらせじゃないですか。でもそれを耐えたヤツだけが本物になれるという説得力はやはり感じてしまって…。ちょっと時代にあっていないんじゃないかと思う気持ちもありながらも、飲みこんでしまうというところがありました」と答えた。
フレッチャーの鬼指導について会場の観客に有りか?無しか?を聞いてみると、会場の3割が「有り」に挙手し、7割が「無し」の挙手。有りという観客からは「自分は昭和の生まれで、取り組みに真剣さが伝わるから、これくらいはするかなと思いました。いまはちょっとパワハラだよ、といわれるかもしれないですが、これくらいやらないと伝わらないというのは思わなくもない。その時代は普通だったから、仕事を覚えさせるという意味では、そういうことも必要だったのかなと思います」という意見が挙がった。別の観客からは「20代なので、叩かれるとか罵りをあまり経験してこなかったから、バトル映画かアクション映画でも観ているのかなという気がしましたね」という意見も。
また、鬼教師フレッチャーにより完全におかしくなって行き、恋人とも別れ、友達も持たない主人公のニーマンについて会場の観客からの 「人間の種類として好奇心があります。どういう考えで生きているとか、定期的に報告をしてほしいです」という意見に、土岡は「僕は友達になれないかなと思っちゃいました。遠くで見ているくらいがちょうどいい。彼女からメールが来て、振ってしまったりするのも早いですよね。 親戚の集まりのシーンも、やはり運動部はもてはやされて、(そうではないニーマンが感じる気持ちは)めちゃめちゃわかるんです。でも同い年の彼らはなんの悪意も持っていないのに、その彼らにマウント取りしてしまうところで一気に同情できなくなりました」と吐露した。
その一方で、観客からは「ちょっと親目線で見てしまっているかもしれないけど、まだ若いから、ある意味まだ可愛らしい。どうしても自己承認欲求があるというか。性格はもともと悪くないし、彼女を振ってしまうことに関してもやはり音楽を極めたいというある意味真面目な方だと思うんです。根本には狂気があるかもしれないけど、芯はいい人なんだと思います」という意見も出た。土岡は「たしかに全部音楽のためではありました。それは一貫している」と言う。
最後に迎える“ラスト9分19秒”の演奏シーンの衝撃を、4K&Dolby Atmosの立体音響で体験したことについて、「あの演奏のシーンではちょっと段違いに心臓がバクバクしました。しかも視界からどんどん世界が消えていくというか、演奏の後半のドラムソロになるところでいったん照明が落ちて暗くなりますよね。実際にそうなっているのではなく、心象風景ですよね。そこで見ている自分もそこに引きずり込まれて、音だけが響くセリフの無い時間になる。これのためにずっとやっていたんだという、主人公たちもそうだし、この映画もそうだし。台詞一切なしのこの音楽を聴かせるために、いままで自分たちはずっとこれをやっていました、というのを見せられて、それが演奏のレベルもちゃんと高くて鬼気迫るものだから、これだったら、いままで(劇中で)起きていたことも納得です」と語った。
また、「理不尽な指導は本当に必要なのか?と思っていたけど、周りで演奏している大人のプロの人たちは、たしかに先生(フレッチャー)が要求するレベルに達しているんだと、そのレベル=プロになるには指導は必要なんだ、という納得もちょっとありましたね」と付け加えた。観客からも「余韻がすごくて1か月くらい続きそうです」という感想の声があがった。
最後に、土岡は「映画を観終えてすぐこの場でお話しできたのもよかったです。あと皆さん、全然意見が違うんだなという、凄いのはわかるうえで、有り無しの意見が分かれるんですよね。これはやはり、4K&Dolby Atmos の環境でたくさんの人に観てほしいですね」とイベントを締めくくった。
Dolby Atmosは、従来の「2Dサラウンド」に加えて、天井面にも配置されたスピーカーからの音により、包まれるような音響体験となる立体的なサラウンドシステム(イマーシブオーディオ)。これまで以上に臨場感、没入感のあるサラウンドとなり、観客はまるで映画の中にいるかのような感覚に陥る体験ができる革新的な映画音響システムとなる。ぜひラスト9分19秒の狂気の「キャラバン」演奏シーンを、Dolby Atmosの立体音響で体感してほしい。
文/山崎伸子