『ミッキー17』でポン・ジュノ監督が描いた、人間とクリーチャーの対比「美しさや威厳を宮崎駿監督作品から学んだ」

インタビュー

『ミッキー17』でポン・ジュノ監督が描いた、人間とクリーチャーの対比「美しさや威厳を宮崎駿監督作品から学んだ」

非英語作品として初めてアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(19)から約5年。韓国の鬼才ポン・ジュノ監督の待望の最新作『ミッキー17』が日本公開された。宇宙開発が進む近未来世界を舞台に、異星での重労働に駆り出されては命を落とし、複製されては何度も同じことを繰り返す男ミッキーの、どん底からの逆襲を描いたSFエンタテインメント。格差社会の現実を背景に置き、スリルとユーモアをまぶして重厚な物語をつづるポン・ジュノの手腕が、ますます冴えわたる。

ハリウッドで製作された本作は、ポン・ジュノにとって、同じくSF大作だった『スノーピアサー』(13)、Netflix映画『オクジャ/okja』(17)に続いての英語主体の作品となる。いまや韓国を越え、世界中が注目する監督となったポン・ジュノ監督を、日本公開を目前にして来日したタイミングで直撃インタビュー!本作に込めた想いを語ってくれた。

「クリーパーが王蟲に似ていることに気づきましたが、意識的に避けようとはしませんでした」

『ミッキー17』来日中のポン・ジュノ監督に直撃インタビュー!
『ミッキー17』来日中のポン・ジュノ監督に直撃インタビュー![c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

――あなたが宮崎駿監督を敬愛しているのは有名ですが、『ミッキー17』にも、例えば異星生物“クリーパー”のビジュアルに、『風の谷のナウシカ』の影が見られました。これを含めて、本作における宮崎監督への影響について教えてください。

「『オクジャ/okja』にも『となりのトトロ』へのオマージュを意図的に込めたシーンがありますが、今回のクリーパーの場合は当初、クロワッサンをベースにしていたんです。そこにアルマジロやダンゴムシの要素を加えたのですが、作業を進めているうちに、『風の谷のナウシカ』に登場した王蟲に似ていることに気づきました。しかし、意識的に王蟲を避けようとはしませんでした。こういうアイデアに到達できたことが私にはうれしかったんです。『もののけ姫』の動物たちもそうでしたが、宮崎監督が描くクリーチャーには存在感や美しさがあり、人間よりも威厳を持っているんです。宮崎監督の作品から学んだのは、そのような着眼点でした。『ミッキー17』のクリーパーも、同様の存在にしたかったんです」

【写真を見る】『風の谷のナウシカ』王蟲のようなクリーパーが登場する、ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』
【写真を見る】『風の谷のナウシカ』王蟲のようなクリーパーが登場する、ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

――確かに、本作に登場する人間のキャラクターは、あまり威厳がないですね。クリーパーは原作以上に重要な存在として描かれていますが、それは意図的なものだったのですね?

「そうです。なぜなら、それはこの映画の主題と結びついているからです。私の映画にクリーチャーが登場する時は、人間がとても情けなく、時には邪悪な存在のようにも思えます。言い換えれば、クリーチャーは人間を写し出す鏡のような存在ですね。例えばこの映画では、権力者が主人公ミッキーに汚れ仕事を押し付けて、彼を何度も死なせる。彼らの言い分は、それがミッキーの仕事であり、そのような契約だからということ。ほかの人々は、それによって安堵感を得ていて、ミッキーの死に対して罪の意識すら感じていません。逆にクリーパーの世界では、1匹の命を救うために全クリーパーが行動します。これは人間の世界の情けない部分と意図的に対比させています」

セリフがなくとも2役の見分けが付くパティンソンの演技を絶賛していた
セリフがなくとも2役の見分けが付くパティンソンの演技を絶賛していた[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

――ミッキーを演じたロバート・パティンソンの、俳優としての凄みについて教えてください。この映画ではジム・キャリーの演技をヒントにしたとのことですが。

「体の使い方がとてもうまい。フィジカルな柔軟さがあり、見ていて確かにジム・キャリーや、バスター・キートンを思い出すことがありました。本作でパティンソンはミッキー17と18番目のミッキー、つまりミッキー18と、実質的には二役を演じていますが、この2人は見た目が一緒でも性格は極端に異なっています。そのため、言葉を発していなくても17と18が違う人物であるとわかる必要がありました。パティンソンの場合、肩のラインや後ろ姿、または目つきだけの演技で、観客はそれがどちらなのか見分けることができます。相当な準備をして撮影に臨まれたんだと思います」


――女性キャラクターに意外性があり、良い意味で予想を裏切っていますが、これは意図的なものですか?

「そうですね。トニ・コレットが演じたイルファのように、好ましくないキャラクターもいますが、女性キャラクターは概ね善良です。ミッキー17の恋人となるナージャは、とりわけ重要で、彼女がいなければミッキーは持ちこたえることができなかったでしょう。それともう1人、科学班のなかにドロシーという女性がいます。目立たない存在ですが、私が特に愛情を感じているキャラクターです。というのも、このコミュニティでミッキーは軽視され、あざ笑われていますが、ドロシーだけは礼儀や配慮を持って接している。そこに大きな意味がある気がします」

ミッキー17の恋人となるナージャ
ミッキー17の恋人となるナージャ[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
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※応募締切:4月18日(金) 23:59 まで
“映画ファンに、もっと映画館で映画を見てほしい”という想いから立ち上がった 「I’m a moviegoer」プロジェクト。これに共感したポン・ジュノ監督が、Tシャツに直筆サイン&コメントを寄せてくれました。

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