永遠のチャッキー!ブラッド・ドゥーリフが75歳になったってよ【豆魚雷の「遊星からの物欲X」】

永遠のチャッキー!ブラッド・ドゥーリフが75歳になったってよ【豆魚雷の「遊星からの物欲X」】

洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」のスタッフであるサムゲタン市川が、ホラーキャラクター&グッズへのアツい愛を叫ぶ連載「遊星からの物欲X」。第10回は、ジャンルを問わず多くの映画に出演する怪優ブラッド・ドゥーリフの魅力に迫る…ということで、キャラクターの魅力を中心にした普段の連載とはひと味違うものに。ドゥーリフのファンを公言する市川が熱っぽく綴った“ラブレター”を、とくとご覧あれ!

ブラッド・ドゥーリフが75歳になったって?祝わねば!

『エイリアン4』(97)では、ニューボーンの犠牲となる科学者のジョナサン・ゲディマンを演じた
『エイリアン4』(97)では、ニューボーンの犠牲となる科学者のジョナサン・ゲディマンを演じた[c]Everett Collection/AFLO

みなさんこんばんは、サムゲタン市川です。さて、栄枯盛衰を繰り返すホラー界隈のなかで30年以上にわたり人気を維持し、老若男女問わず愛され続けているキャラクターといえば、そう、『チャイルド・プレイ』(88)のチャッキーです。殺人鬼の魂が宿り殺人を重ねる…という恐ろしい人形ながら、かわいらしい見た目をしており、そのギャップにやられてしまいますね。そしてなにしろ人形というのは、主にフィギュアを紹介するこの連載において相性が抜群です。

いくら殺されようとも魂とその器がある限り蘇る、永遠に等しい命を手にしたチャッキーですが、最新作であるドラマシリーズ「チャッキー」(21~24)まで約36年間にわたり声を当て、生前の姿を演じ続けてきたブラッド・ドゥーリフは、去る3月18日で75歳に。おめでとう!

死刑囚ルーサー・リー・ボッグスを演じた「X-ファイル」シーズン1第13話「海の彼方に」は、シリーズ屈指の傑作と名高い
死刑囚ルーサー・リー・ボッグスを演じた「X-ファイル」シーズン1第13話「海の彼方に」は、シリーズ屈指の傑作と名高い[c]Everett Collection/AFLO

実は私、演技が上手いと思う俳優は?と訊かれたら必ず答える一人がドゥーリフなのです。このたび「嗚呼…どうしてもドゥーリフについて書きたいッ!」という思いが爆発したため、今回は普段の連載と趣向を変え、俳優自身の魅力を解き明かしながら、演じたキャラクターの魅力にも迫ってみたいと思います。

それではここからは、私が個人的に推したい作品を彼の3つの魅力、ビジュアル・声・演技、それぞれに紐づけて紹介していきます!

『デスマシーン』…まずビジュアルがいい!

精神疾患のある青年ビリー役を演じた『カッコーの巣の上で』(75)で、本格的デビューを飾ったドゥーリフ
精神疾患のある青年ビリー役を演じた『カッコーの巣の上で』(75)で、本格的デビューを飾ったドゥーリフ[c]Everett Collection/AFLO

1950年3月18日生まれのドゥーリフは、本格的な映画初出演となった『カッコーの巣の上で』(75)で精神疾患のある青年ビリー役を演じ、若干25歳にして第48回アカデミー賞で助演男優賞にノミネートされるなど、演技派としてキャリアをスタート。以降、半世紀にわたって主にバイプレーヤーとして活躍してきたため、出演作が多いわりにあまり主演を張っていないのが彼の特徴です。

そのなかでも、『ブレイド』(98)のスティーヴン・ノリントンが監督デビューを飾った『デスマシーン』(94)は数少ない主演映画の1本。ここでドゥーリフが演じている科学者のジャック・ダンテは、ビジュが爆発しまくっています!

ドゥーリフは本作の演技で、若干25歳にして第48回アカデミー賞で助演男優賞にノミネート
ドゥーリフは本作の演技で、若干25歳にして第48回アカデミー賞で助演男優賞にノミネート[c]Everett Collection/AFLO

ダンテの登場シーンは暗いことが多いのではっきりと視認することは難しいのですが、右手の人差し指と中指には鉤爪のような、薬指にはオフセットレンチを彷彿とさせる独特な形状をしたアーマーリングを装備し、左耳には小さなテディベアに似たイヤーチャームを着けています。足首程まである丈の黒いレザーのロングコートを身にまとい、鳥らしきイラストが描かれたシャツとダメージジーンズという、科学者らしからぬパンク寄りのファッションがカッコいい!スプリング付きの目玉が飛び出るメガネをかけてふざけるギャップもたまりませんね。

そしてなんといっても、胸元まで伸びる少しボサついたロングヘアが最高なのだ!首を傾げたり髪を払う際に前髪がひと束だけ顔にかかるのがとってもセクシー。攻撃的で子どもじみた言動が目立つキャラクターですが、ふとしたカットに色気を感じるドゥーリフのビジュのよさにうっとりしてしまうこと請けあいです。

『エクソシスト3』…声色も絶品!

原作者のウィリアム・ピーター・ブラッティが監督、脚本を務めた『エクソシスト3』(90)
原作者のウィリアム・ピーター・ブラッティが監督、脚本を務めた『エクソシスト3』(90)[c]Everett Collection/AFLO

カルト的人気を誇る名作『エクソシスト3』(90)でドゥーリフが演じたのは、15年前に刑死した“双子座殺人犯”ジェームス・ヴェナマン。本作では『エクソシスト』(73)でデミアン・カラス神父を演じたジェイソン・ミラーが、自らを“双子座殺人犯”だと称する“患者X”を演じており、主人公であるキンダーマン警部補(ジョージ・C・スコット)の眼には“患者X”つまりカラス神父として映り、我々観客の眼には“双子座殺人犯”にも映る…という2人1役の特殊なキャラクターになっています。

“患者X”は薄暗い独房に収容されており、拘束衣に身を包まれたままベッドに腰を掛けて会話するため、その場を動くことはほとんどありません。それゆえ声が演技の大半を占めることになるわけですが、ドゥーリフの声がまた絶品なんです…!

ドゥーリフの声色の妙技が光る『エクソシスト3』
ドゥーリフの声色の妙技が光る『エクソシスト3』[c]Everett Collection/AFLO

ミラーのトーンが一定で地を這うような低い声もカッコいいのですが、ドゥーリフの少し抑揚をつけた空気を震わす声と皮肉めいた言葉遣いがたまりません。キンダーマン警部補の親友ジョセフ・ダイアー神父の殺害を仔細に語る場面では、キンダーマン警部補が拳を握り締めるのを見て、挑発するように声のトーンを上げていきます。こうした声色の使い分けの上手さもドゥーリフの好きなところです。

『スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火』…表現力に脱帽!

不気味なキャラクターを演じることが多いドゥーリフですが、不運な役もよく似合うんです。トビー・フーパー監督の『スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火』(90)で演じたサム・クレイマーは、突如として人体自然発火現象(SHC)が発現し、抑えきれなくなっていく炎と闘いながらも現象の究明や自身の出生のルーツを解き明かしていくというキャラクター。

隠れた名作として人気の高い『スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火』
隠れた名作として人気の高い『スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火』[c]Everett Collection/AFLO

どうやら発火のトリガーは怒りのようですが、隠された真実のすべてがクレイマーを憤らせるような、それはもう本当に酷く可哀想なものばかりなので、諸悪の根源に対する憎しみや不条理な生い立ちへの悲しみ、身体が燃え盛り続ける苦しみを一身に背負うことに。

このような“負”の感情を表現させたらドゥーリフは天下一品です。激昂した形相は不動明王さながらの迫力ですし、恋人リサのことさえ信じることが出来なくなっていくさまを表現した演技のなんと悲しいことか。彼が響きわたらせる絶叫はまるで断末魔のように苦しい響きがあり、強く胸を打ちます。

『スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火』には、ジョン・ランディス監督も出演
『スポンティニアス・コンバッション 人体自然発火』には、ジョン・ランディス監督も出演[c]Everett Collection/AFLO

『カッコーの巣の上で』での華々しいデビュー以降は、いまいちこれといった賞に恵まれていないドゥーリフですが、特に本作での表現力は「オスカーに値する」という声もあり、ファンとしては再評価を願ってやみません。

『チャイルド・プレイ』…結局全部が好き!

そんなドゥーリフのビジュアル、声、演技のすべての要素が堪能できる代表作こそが、『チャイルド・プレイ』で演じた“チャッキー”ことチャールズ・リー・レイです。

やっぱりコレ!『チャイルド・プレイ』(88)でのチャッキー
やっぱりコレ!『チャイルド・プレイ』(88)でのチャッキー[c]Everett Collection/AFLO

いまやその知名度はホラーの枠を超え、世界的なカルチャーアイコンといって過言ないほどですが、実際に本編を観て、ドゥーリフが演じたレイのことまで知っているという方は意外と少ないかもしれません。本稿では少しこのあたりをおさらいしてみましょう!

“湖畔の絞殺魔”と呼ばれる殺人鬼だったレイは逃亡中、仲間に裏切られ置き去りにされてしまい、脚を撃たれながらも玩具店に逃げ込むことに。店内での銃撃戦で致命傷を負ったレイはグッドガイ人形に魂を乗り移し、チャッキーとして人形のふりをしながら邪魔な人間を殺して回るのです。

「チャッキー」(21~24)でも、一貫してレイ/チャッキー役を務めている
「チャッキー」(21~24)でも、一貫してレイ/チャッキー役を務めている[c]Everett Collection/AFLO

チャッキーの姿ももちろんかわいくて好きなのですが、私はやはりレイが大好きなんだ…。登場シーンこそ短いものの、キャラクターとしての魅力は申し分なし。髭はなく、スーツの上にコートとマフラーを着用しており、身なりの整った色男であることがお分かりになられることでしょう。肌が綺麗なのもポイント高め!銃撃戦のさなかで車のボンネットを飛び越える身体能力もイカします。

仲間が乗るバンを「俺を置いてかないでくれ」と情けない声を上げながら追いかけたり、胸を撃たれ死に瀕した際には刑事に対し「貴様を殺してやる!なにがあろうともな!」と怒りで身を震わせながら涙目で罵声を飛ばしたりと、ドゥーリフの幅広い感情表現の引きだしには感服するばかり。


『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』ではグリマ役(左)で強い印象を残した
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』ではグリマ役(左)で強い印象を残した[c]Everett Collection/AFLO

高い攻撃性を持っていながら人間臭い部分を捨てきれず、それゆえの弱みが垣間見える…みたいなキャラクターが大好きなんですが、ドゥーリフはそのあたりの切り替えが本当に上手くって、レイはそのテクニックがもっとも活かされたキャラクターではないかと思います。

【豆魚雷】
1995年創業の「キャラクターショップ」。株式会社Ampusが運営する実店舗(高円寺店)、およびショッピングサイトで洋画やアメコミ、ゲームを中心としたフィギュアなどを始め、「豆魚雷」でしか買えない限定商品やオリジナル商品を多く取り扱っている。
最新情報は公式サイトhttps://mamegyorai.jp/をご確認ください。

「MOVIE WALKER PRESS」のホラー特化ブランド「PRESS HORROR」もチェック!