鉄拳が、ある夫婦の半生をイラストで表現!『HERE 時を越えて』固定カメラで描く物語に「奇跡的に繋がっていると思うと涙が流れた」
巨匠ロバート・ゼメキス監督の最新作で、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)のトム・ハンクスとロビン・ライトの主演作としても注目を集める『HERE 時を越えて』が4月4日(金)に公開される。アメリカのとある場所を舞台に、古代の先住民から現代まで、この場所で暮らした幾世代もの人々を、カメラの位置がまったく変わらない=定点カメラで描くという壮大なスケールの意欲作だ。
かつて恐竜たちが駆け抜けたとある場所。やがて人類が誕生し、先住民たちが集落を作り、20世紀になると一軒の家が建てられた。1945年、何人もの人々が暮らしたこの家を買ったのは戦場から戻った青年アル(ポール・ベタニー)と妻のローズ(ケリー・ライリー)だった。画家に憧れる長男リチャード(トム・ハンクス)は、高校生の時にガールフレンドのマーガレット(ロビン・ライト)と恋に落ち、妊娠を機に結婚。この家に2世帯で暮らすことになる。楽しいことや悲しい時を乗り越えた2人は、やがて大きな岐路を迎えていく。
フィギュアスケーターの人生をモチーフにした「SLIDE」などパラパラ漫画でおなじみのお笑い芸人の鉄拳が、描き下ろしイラストで本作の世界観を再現!鑑賞後、感動し涙があふれたという鉄拳に、『HERE 時を越えて』の魅力やイラストに込めた想いを語ってもらった。
「同じ場所にいたことで、奇跡的に繋がっていると思うと涙が流れた」
定点に固定されたカメラの前で、何千年もの間の様々な人間たちの生活が切り取られていくという、独創的な表現が行われている本作。映画を観終えた鉄拳は、時を越えカメラが同じ場所にあり続けたことで、物語に“繋がり”を感じたという。「景色は違えど、それぞれの時代に生きた人々の運命が似ていることが、とてもすてきに感じました。お互い出会うことのない運命ですが、あの場所にいたことで奇跡的に繋がっていると思うと涙が流れてきました」と感慨深げに振り返る。そんな人々の物語が、これから先もずっと続いていくことにも感動を覚えたと話す。
本作にはいくつもの家族が登場するが、それぞれの人間模様は断片的に描かれていて、やがて全体像が浮かび上がってくるのが特徴だ。そのなかでもメインで描かれるのは、ハンクスとライトが演じる、リチャードとマーガレット夫妻。実年齢ではハンクスは68歳、ライトは58歳であるが、本作で2人はVFXを駆使することで、10代の高校生から第一線を退いた熟年期まで長い年月をすべて演じている。CGとは思えないリアルな映像に圧倒されたという鉄拳だが、なにより驚かされたのは演技そのもののクオリティだったいう。「若いころのしゃべり方や動き、歳をとった時の落ち着きや老人ならではの可愛い口調もよかったです。まるで本物の老人が演じていると思えるくらいリアルでした」と説明し、「どの時代がVFXを使っていない素の姿か知りたいです」と加える。
そんな2人の半生のなかでも鉄拳は、楽しい時も悲しい時も寄り添う夫婦の姿や、感謝祭になると家族が全員集まって笑顔でテーブルを囲むシーンに共感を覚えたという。「僕も奥様とケンカをしたり、仕事に追われて家庭をおろそかにした時もありました。でもお祝いごとは必ず一緒にしていたんです」と、当時を振り返る。また、子どもとの接し方にも同様に共感を覚えたそう。「子どもにどんなに厳しく接しても、いざとなると味方になって応援してくれる。やっぱり最後は愛情でそれはアメリカも日本も同じですよね」。
本作を監督したゼメキスは、長編デビュー作『抱きしめたい』(78)をはじめ、『フォレスト・ガンプ/一期一会』など時代や時間を意識した作品を描き続けている。なかでも代表作である「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズは、鉄拳もお気に入りの映画だと話す。「タイムスリップ物が好きなんです。昔の時代に行って驚かせてくれたり、物語の流れを自由に変えるところ、未来の世界はこうなっているのか、と驚かされるところも好きですね」といい、本作の過去や現在へ自由に時間を行き来する展開に同作を彷彿とさせられたという。「過去パートではただの屋敷として描かれていたのが、現代パートでは歴史的建造物に指定されていたり、古代の人が遺した装飾品が、いまでは貴重な文化財になっているなど、時の流れで価値観が変わっていくところが同じですよね」。
実は歴史好きだと明かす鉄拳は、いま住んでいる場所がかつて戦のあった場所であると補足を入れつつ、「当時の人がどんな思いであの景色を見ていたのだろうとか、夜空の月を見て昔の人もこう見えたのだろうかと想いを馳せることがあります」と、自身の趣向と本作がリンクしていたと熱っぽく語る。続けて、「部屋を借りるたびに以前はどんな方が住んでいて、この部屋でどんなことをしていたのか興味がわきます。引っ越す時にも、この部屋でどんな人がどんな物語を作るのだろうと、すごく気になりますね(笑)」とも説明し、本作はピタリとはまったようだ。