原田知世が絶賛!笑福亭鶴瓶&重岡大毅の笑顔は「人を幸せにする」『35年目のラブレター』公開記念舞台挨拶
ある夫婦の本当にあった話を映画化した『35年目のラブレター』の公開記念舞台挨拶が3月8日に丸の内TOEIで行われ、笑福亭鶴瓶、原田知世、重岡大毅(WEST.)、上白石萌音、主題歌アーティストの秦基博、塚本連平監督が出席した。
戦時中に生まれ、十分な教育を受けることができなかったことから読み書きができないまま大人になった保が、自分を支えてくれた最愛の妻、皎子(きょうこ)への感謝を自身で書いた手紙で伝えようと、夜間中学に通い始める姿を描く。主人公の西畑保を鶴瓶、その妻を原田、西畑夫妻の若かりしころを重岡と上白石が演じる。この日の模様は、全国329のスクリーンでライブビューイングが行われた。
上映後の温かな拍手に包まれて、ステージに上がった登壇者陣。鶴瓶は「いい映画に出させていただいた実感がある」としみじみ。「昨日うちの嫁が観に行った。帰って来て『すごいよかった』と。あまりそういうことを言わないんですよ。うれしかったです」と妻の反応を明かした。
原田は「ちょうど昨年の今日は西畑家のセットの最終でした。あの時にもう1年後は公開されていると思って、どういうふうになるのかなと思っていました」と振り返りながら、「和やかですごくいい現場だったので、きっとステキないい作品に仕上がるなと思っていましたし、監督を信じてついていこうと思って、いま本当にすばらしい景色を見せてもらったと思っています」と感無量の面持ち。家族が来場しているという塚本監督が「いつもありがとうさん」とメッセージを送ると、重岡は「自分も『ありがとうさん』と言いたくなる映画だなと思った。(監督が)大切な人に言っているのを聞いて、心が温かくなった。そういう連鎖が日本全国に巻き起こっていけばいいなと思っています」と願いを込めていた。
上白石は、この物語が実話だということにとても感銘を受けているという。西畑さんご本人は現場にも足を運んでいたそうで、上白石は「鶴瓶さんと似ていらっしゃる」と吐露。鶴瓶は大きくうなずきながらそれを認めつつ、「しげ(重岡)もだんだん俺に似てきて。(映画を観た人から)言われるんですよ、めっちゃうれしい」と目尻を下げた。重岡は「めっちゃ言われます。めっちゃうれしいんですけど、どこか複雑です。なんででしょう!」と冗談混じりに語り、鶴瓶からツッコまれるなど楽しげな雰囲気。原田が「お2人とも人を幸せにする笑顔」だと分析すると、重岡が「鶴瓶さん、原田さんにそう言われていますよ」とからかい、鶴瓶は照れながら「ありがとうさん」と喜びをにじませていた。
劇中では、夫婦の間に流れる自然な空気感が心地よいものとして映しだされている。鶴瓶が「ここ(原田との関係性)が夫婦に見えるということが、一番大事やなと思っていた」と語ると、原田は「初日から自然に横にいられた」とにっこり。「皎子さんは、保さんに出会ったことによって、『とにかく力になってあげたい』という気持ちが自然と湧き上がってくる。心が動いて、それが愛になっていったのかなと思った。私も鶴瓶さんの横にいて、ただそばにいることが一番大事だなと思っていました。自然と鶴瓶さんに対して『なにかできることはないかな』と思う自分がいた。鶴瓶さんの保さんがいたから、皎子さんになれた」と鶴瓶の横にいることが、役作りに繋がったと話す。鶴瓶も「泣くシーンって、泣こうと思って泣けない。でも自然と嗚咽した」と原田と同じ気持ちだと語っていた。
保の葛藤を体現した重岡は、「萌音ちゃん、皎子さんがそばにいてくれて。自分自身にどうしても一生懸命に必死になっていると、いろいろと見え方や感じ方が狭くなるけれど、自分一人で喜ぶより、一緒に喜びたいなと思う大切な誰かがいるから、その人を思い浮かべると力が出るんだと思った。改めて、そういうことを信じられるようになった」と相手がいてこそ、湧き上がってくる感情があったと実感したという。上白石も「私も知世さんと一緒で、ただただ横にいて呼吸を感じて、隣にいるだけで、皎子さんになれた」、「毎日(重岡が)隣でガッツを燃やして、保さんの人生を全身にインストールして頑張っている姿を見ていた。どうしたらこの人のためになれるかと考えた」と明かし、「しげちゃんのおかげ。保さんに皎子さんを作ってもらった。ありがとうさん」とお礼。重岡は「ありがとうさん」と返し、「照れるね」と2人で笑顔を見せ合っていた。
主題歌「ずっと作りかけのラブソング」を書き下ろした秦は、「この映画の持っている温かさ、映画を観終わった時にじんわり胸に迫るものをそのまま、映画館を出たあとも持って帰ってもらえるような曲にできたらと思っていた」と曲作りを回想。「文字を書ける、書けない以前に、ラブレターを書くということ、ここ(胸)にあるものを形にするというのは、すごく難しいことだと思う。それは歌を作ることに似ている。ここ(胸)にある、なんとも言えないものを歌にしようと思って作りました」と本作の内容と曲作りをリンクさせたといい、「この映画と出会えたことで、僕もこの曲と出会えた」と大切な1曲になったと明かしていた。
最後の挨拶でも、原田が鶴瓶に「ありがとうさん」、上白石が重岡に「ありがとうさん」と笑顔で呼びかけ、鶴瓶と重岡が悶絶するひと幕があるなど、感謝にあふれた舞台挨拶となったこの日。鶴瓶は「僕がちゃんとした形で落語を始めたのは、52歳から。『やれるかな』と思ったんですが、『やりきらないとあかん』という状況でいまに至っています。やれるんですよね。50過ぎてからでも、そういうスイッチを入れたら。ぜひなにかを始めていただきたいし、この映画をきっかけに皆さんにも挑戦をしていただきたい」と心を込め、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝