『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー監督、“憧れのスター”梶芽衣子との対面に感激!マイキー・マディソンに「早い段階で『女囚さそり』を観てもらった」

『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー監督、“憧れのスター”梶芽衣子との対面に感激!マイキー・マディソンに「早い段階で『女囚さそり』を観てもらった」

第97回米アカデミー賞で最多5部門を受賞した『ANORA アノーラ』(公開中)のショーン・ベイカー監督が来日を果たし、3月8日にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われた来日記念舞台挨拶にプロデューサーのサマンサ・クァンと共に出席。サプライズゲストとして梶芽衣子が駆けつけ、花束をプレゼントした。

ショーン・ベイカー監督とサマンサ・クァンが来日!
ショーン・ベイカー監督とサマンサ・クァンが来日!

ニューヨークを舞台に、ストリップダンサーとロシア新興財閥の御曹司の身分違いの恋という古典的な題材をリアルに映し出す本作。第97回米アカデミー賞では、作品賞、主演女優賞(マイキー・マディソン)、監督賞、脚本賞、編集賞の最多5部門に輝いた。ベイカー監督は、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞の4つの賞を受賞し、史上初めて1つの映画で4つの賞を獲得したオスカー受賞者となった。

オスカー像をお披露目
オスカー像をお披露目

『タンジェリン』(15)、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)でのプロモーションに続いて、7年ぶり3度目のプロモーション来日を果たしたベイカー監督。万雷の拍手で迎えられ、「こうやって日本に来られること、皆さんとご一緒できることを特別だと思っています。オスカー直後の来日で、受賞できたことを日本でセレブレーションしているような感覚です」とにっこり。4つの賞を獲得したうちの「監督賞を手にしています」とオスカー像を掲げ、「すべて持って来たかったんですが、結構重いんです」と目尻を下げた。温かな歓迎を受けた2人だが、ベイカー監督は「長いこと、日本の皆さんから応援していただいていることは、僕にとって意義深いことです。僕は、日本の映画の大ファン。映画づくりのうえでも大いに影響を受けています。日本でオスカーの受賞を祝福できることを、とてもうれしく思っています」と喜びをにじませていた。

プロデューサーのサマンサ・クァン
プロデューサーのサマンサ・クァン

アカデミー賞での快挙についてクァンは、「信じられません。夢にも思っていなかった」とコメント。ベイカー監督は「みんなでハグし合ったり、うれし涙を流したりした」とその瞬間を振り返りながら、「実はマイキーさんは、家族旅行で6か月前に日本に来ているんです。2週間を日本で過ごしたようで、『すごく楽しかった』と言っていました。僕らはベジタリアンなので、こういう店があるよとオススメしてもらいました」と主演女優のエピソードも披露。クァンも「マイキーと連絡を取り合っていたんです。私だけ日本に行けないなんて、ヤキモチを妬いちゃうわと(笑)。『日本のみなさんに、愛しているとお伝えください』と言っていました」と代わりにメッセージを送っていた。

キャスティングのこだわりを明かした
キャスティングのこだわりを明かした

「なぜ観る者の心を捉えたのか」を分析することになると、ベイカー監督は「人生において誰もが叶えたい夢がある。だからこそ、アノーラに共感するのではないかと思う。アノーラは夢をつかもうとして必死になっている。その夢を奪われかねない状況にある。そういう主人公に共感してくださったと思う。あとはすばらしいキャストが揃ったこと。それぞれが、一緒にひと時を過ごしてみたいと思うような人物像を作りだしてくれた」と俳優陣に最敬礼。さらにキャスティングについて、「まず第一に考えるのは、この役にふさわしいのは誰かということ。もっと大画面で姿を観たいというのは誰かという視点で、キャスティングをしています。この人を配役すれば興行成績が上がるということは考えていません。この人を見ているとワクワクする、興味を惹かれるという人をキャスティングする」とこだわりを口にしながら、「マイキーさんを『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』や『スクリーム』で観た時に、なぜ彼女がまだ主演をやっていないのか不思議だと思った。彼女もっとスクリーンで観たいと思った」と絶大なる信頼を寄せていた。

梶芽衣子が駆けつけ、花束をプレゼント!
梶芽衣子が駆けつけ、花束をプレゼント!

またベイカー監督は、アノーラ役で主演女優賞を獲得したマイキー・マディソンに役作りの参考として、梶芽衣子の代表作の一つである『女囚701号 さそり』(72)を勧めたという。この日は、梶がサプライズで登場。「おめでとうございます!」と花束をプレゼントした。梶は「本当にステキな映画でした。令和の恋愛ドラマはこういうものなのかと。私のようなアナログ人間にとってはちょっと驚きであり、最後は感動。すばらしかったです」と本作を大絶賛。

【写真を見る】対面に感激!ハグを交わしたショーン・ベイカー監督&梶芽衣子
【写真を見る】対面に感激!ハグを交わしたショーン・ベイカー監督&梶芽衣子

梶とハグを交わしたベイカー監督が「自分にとってのスターにお会いできて、ちょっとボーッとしています。梶さんの映画の大ファンです」と声を弾ませると、梶は「お会いできて光栄。こんなにステキな監督が私のファンでいてくださるなんて」と目を輝かせつつ、「私が映画デビューしたのが、昭和40年。初めての撮影の日、デビューの日は、いまから60年前の3月8日なんです。鳥肌が立ちました。一生忘れることができない3月8日」とうれしい偶然に胸を躍らせる。ベイカー監督も「お互いに記念日をセレブレーションできるなんて。ありがとうございます」と笑顔を見せていた。

くす玉を割ってお祝い!
くす玉を割ってお祝い!

さらにベイカー監督は、「マイキーさんには、役作りをしてもらうにあたってかなり早い段階で『女囚701号 さそり』を観てもらった」と告白。「この映画のなかの梶さんは、力強く家父長制に対して戦う姿を見せている。体を張った演技が堂々としていて、力強い。マイキーさんにそれを見てほしかった。だいぶ違う作品ではあるんですが、確実にDNAは受け継がれていると思う。マイキーさんは、梶さんの姿を見てそれを自分のなかに取り込んでくれた」と明かす。

『ANORA アノーラ』を絶賛した梶芽衣子
『ANORA アノーラ』を絶賛した梶芽衣子

梶は「最高でしたね」とマディソンの演技を称え、「体当たりな演技は見ていて気持ちがよかったし、最後に清々しさが残った。感動しました」と熱を込めていた。最後にはくす玉を割って、華々しくお祝いをしたメンバー。梶からの言葉をマディソンにも伝えると約束したベイカー監督は、「映画の作り手として、劇場での体験を大事に思っています。スクリーン用に、大画面用に映画づくりをしているので、ぜひ皆さんに応援していただければ」とスクリーンで観てほしいと願い、大きな拍手を浴びていた。


取材・文/成田おり枝

作品情報へ

関連作品

  • ANORA アノーラ

    3.9
    1346
    ニューヨークを舞台に、ロシア系アメリカ人ストリップダンサーの女性のロマンスと騒動を描いたドラマ