『BLOODY ESCAPE』谷口悟朗監督が語る、監督業への向き合い方「“どんなものでもやります“という、専門を持たないやり方」
「アニメ業界で一番無能なのは自分だと思っているくらいなんです」
演出業にこだわり続けてきた谷口監督の、監督であり続けるためのこだわり、譲れないこととは。「監督であり続けるためにと考えたことはないです。私はいつも『気に入らなかったら首を斬ってください』というスタンスでやっています。大手のアニメーション会社の出身でもなければ、アニメーターをやっていたわけでもない。声の仕事をしているわけでもないし。要するになにもない、アニメ業界で一番無能なのは自分だと思っているくらいなんです。会社というバックボーンがないから、主張しないと埋もれていってしまう。でも、埋もれて結果的に監督ができなくなるならそれまでのこと。そうなりたくないから、そうならないように動いているだけなんです。気をつけていることがあるとしたら、同じようなジャンルのものを連続してやったりしないこと。つまり、なにかの専門家にならないことです。ロボットアニメ、日常系アニメ、萌え系、コメディ、それぞれに専門家がいます。そういう方たちは才能が豊かなんです。私は、どんなものでもやりますという専門を持たないやり方。専門家の皆さんはイタリアンとかフレンチのシェフのようなもので、私はどちらかというと大衆食堂。『カルボナーラ作りながら刺身定食も出しちゃうよ』みたいな感じです(笑)」とジョーク混じりで笑い飛ばしつつも、自身の主張はしっかり伝える。
「その代わり、自分のなかでOKを出したものしか(料理として)出さない、そこだけは譲れません。安かろう悪かろうはご勘弁ください。それによりアニメーターや役者が腹を立てようが私は痛くも痒くもありません。だって、最初からなにも持っていないんだから。犯罪を犯さない “無敵の人”です」と監督という職業への向き合い方を教えてくれた。
取材・文/タナカシノブ
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