元カミセンが映画館に集合!森田剛、三宅健、岡田准一の“出演作ラリー”を完遂せよ
天才ジャズピアニストの風格を全身全霊で熱演した岡田准一
そして、いまや俳優のみならず、プロデューサーとしてもファイトコレオグラファーとしても日本映画界になくてはならない存在となった岡田准一は、この秋冬で2作品に出演。主役としてもバイプレイヤーとしても、さすがの演技で燦然たる煌めきを放つ。
公開中の西川美和監督作『わたしの知らない子どもたち』では、戦争孤児となった主人公らを手先として使いながら面倒を見るヤクザの親分、菊沢役で出演。もちろん、菊沢には子どもたちを悪事の手先として利用する目的もあろう。とはいえ大人の狡さに留まらず、孤児らの精神的&物理的な拠りどころともなっていく、子どもたちが憧れや頼りがいを覚える大人の男としての魅力や人情を、岡田が十二分に全身に纏ってスクリーンで躍動する。演技経験の少ない子役たちをガッチリ脇から束ねて支える、重要なキーマンとして作品への多大なる貢献がうかがえる。
さらに、第39回東京国際映画祭オープニング作品にも選出された『SUKIYAKI 上を向いて歩こう』(12月25日公開)では堂々の主演。岡田は主人公の天才作曲家、中村八大を演じている。天才ジャズピアニストとして頭角を現した中村を演じるにふさわしいピアノの腕前と風格を、『ラ・ラ・ランド』(16)のライアン・ゴズリング張りに岡田がいかんなく発揮している。
聞き覚えがない人も多いかもしれないが、中村こそが坂本九が歌う「上を向いて歩こう(英題:SUKIYAKI)」を作曲した人。本作では作詞家の永六輔に歌詞を依頼する経緯から、かの曲が世界的大ヒットを記録するに至る過程が、実にスリリングに描かれる。中村が坂本を抜擢し、抑揚をつけて歌わせたことに永が怒り狂ったり、のちに名前をもじって「689トリオ」と呼ばれて一世を風靡した3人の友情、才能の共鳴やぶつかり合いなど、永役の松坂桃李、坂本役の仲野太賀との演技派3人による人間ドラマが実に味わい深い。
近年、アクションや男気系な役が多かった岡田の、麗しさや繊細な憂いなどを久々に堪能できるのもうれしいところ。天才ゆえの葛藤、凡人には理解できない苦悩やこだわり、譲れないものなど、青年期から晩年まで刻々と移りゆく姿を岡田が全身全霊で熱演する。数々の名曲がどのように生まれたか、それを取り巻く当時の日本のショービス界の様子や人間関係に至るまで、すべて興味津々だ。
この秋冬は、元カミセン映画スタンプラリーを完遂することを、ぜひともお勧めしたい。
文/折田千鶴子
