柄本佑、石橋静河、広瀬奈々子監督が第31回釜山国際映画祭に参加!『このごにおよんで愛など』ワールドプレミアから会見までをレポート
公式記者会見では「いろいろな愛の形」について柄本佑らがトーク
翌日10月12日には公式記者会見が開催され、昨日のワールドプレミアに続き、会見でも長澤演じる主人公、小島詩の顔パネルをもって柄本と広瀬監督が登場。アジア各国から詰めかけた大勢のメディアを前にトークを繰り広げた。
広瀬監督はこの作品を制作したきっかけが、レズビアンカップルの友人に子どもができたという知らせを受け、その子どもが無事に生まれて大きくなった時、いつかこの映画を観てもらいたいと思ったことだったという。
「婚姻や結婚、出産といった既存の家族像や固定観念に縛られて悩んでいる方に届けられる作品になればと思っています。当事者だけに閉じたお話にするのではなく、同性婚という形を借りながら、3人の物語として展開させました」と、本作に込めた想いを明かす。
続いて、主人公、詩の夫である杜夫を演じた柄本は「それぞれの愛の形を描いた作品ですが、僕自身はそういった様々な形があって当たり前だと思っていますし、非常におもしろい物語として楽しんで脚本を読ませていただきました。この3人はみんなすごくわがままで欲しがり屋さんなんです(笑)。そのなかで杜夫の欲望はどこにあるのかと考えた時、とにかく『詩と一緒にいたい』というシンプルな思いをベースにして演じました」と、まっすぐに役と向き合った舞台裏を振り返った。
「APM(アジアン・プロジェクト・マーケット)」に出展されていた本作。その当時から英題が変更となっており、広瀬監督はそのことについて聞かれると、当初の英題が『WHAT'S LOVE GOT TO DO WITH IT』なのですが、長すぎて覚えられないと言われたので(笑)、もう少しシンプルなタイトル(『BETWEEN TWO LOVERS』)にしました。重いテーマを扱いつつもとても軽やかな映画なので、シンプルに振り回されながら楽しんでほしいという想いや、2人の恋人の間で揺れ動く様をタイトルに込めさせていただきました」と想いを語る。「タイトルに続く言葉は、ぜひ観客の皆様それぞれに考えていただけたらうれしいです」と続け、詩、杜夫、潤奈の3人の関係が紡ぐ物語の行方にぜひ注目してほしいと呼びかける。
続いて「日韓問わず現代の若い女性たちが結婚や出産、キャリアなどのプレッシャーに悩む姿を描く作品が増えている背景をあげつつ、本作を通じて女性たちへどんなメッセージを届けたいですか?」という質問に対して、広瀬監督は「日本の女性たちは『こうでなければいけない』という価値観にとらわれすぎてしまって、我慢しながら生きている方がまだたくさんいらっしゃると感じています。特に出産期や年齢のこともあり、お仕事をしながら…ということが難しいんですよね。そういったことに私自身、非常に感心があって、この作品のなかで女性のライフステージというテーマを詰め込ませていただきました」と現代の社会背景と通ずる本作のテーマについて話す。
さらに監督は「社会の規範を守って一生懸命頑張っている人ほど、そうではない人に対して『私こんなに頑張っているのに』というような気持ちになってしまうことがあります。だからこそ、このキャラクターたちを通して『もうちょっと楽に生きていいんだよ』というメッセージを届けられたらと思っています」と作品に込めた真摯な想いを語り、生きづらさを抱える人々の背中を優しく押す本作の魅力を力強くアピールした。
また、今回が初の海外映画祭参加となった柄本が、釜山の印象や観客の反応、また複雑な杜夫という役の作り方について聞かれると「街全体で映画を盛り上げている空気感がありました。映画を観ていた時に笑いが起きる場所の不意打ち感みたいなものは、なかなか客観的には見えないところもありますが、それでも『この映画のおもしろいところってここだよね』というふうにどこか思っているところがあったりして。それとは全然違うところで笑いが起きていたりしていたので、それを見た時に『海越えたな』という感じがして、とてもうれしかったです」と生のリアクションに対して感無量の様子。
「全体的な印象で言うとすごくピュアに、精度高くこの映画を観てくれている。観客の方々がすごくストレートにまっすぐ作品を見に来てくれているなということも同時に思いましたね」と、国境や言語を越えて届いた現地観客の温かな反応に手応えを語る。
演じた杜夫について柄本は「(詩、杜夫、潤奈の3人で)豚の角煮を食べるシーンのリハーサルで、詩と潤奈の関係のことにはまったく気づいていないという演技をする時に、僕としてはそういうことを含ませているつもりはないのですが、ただ潤奈さんを見ていたり、ただ詩ちゃんを見ていたり…すると、『2人の関係に勘ぐってるようにみえる』と監督から言われたことがありました。その場を楽しんでいる雰囲気を少しオーバーに見えるくらい演じたほうが、そういった勘ぐっているという感じをゼロにできるのではないかなと。その晩に詩ちゃんからのカミングアウトを聞いて100になるみたいな(笑)。その差を出すということを監督から言われて、そこが杜夫を演じていくベースになりました」と監督とのやり取りを通じて役の奥行きを深めていったエピソードを披露。
柄本は「脚本の段階でも話をして、(詩ちゃんから)カミングアウトを受けた時もけっこうわかりやすく慌てふためいていたのですが、そこを逆にちょっとストップしない?(笑)というアイデアも提案させていただいたりして。“動と静”の使い分けみたいなことですかね。監督から受けた演出によって出てきたという印象です」と、監督との真摯な対話を通じて緻密に組み立てられた役作りの舞台裏を明かし、監督とキャスト陣の深い信頼関係が生み出した絶妙なキャラクター制作秘話に、現地メディアから大きな関心が寄せられた。
終始キャスト、監督陣の深いチーム愛があふれ、記者会見は終了。国境を越え、現地観客の心をしっかりと掴んだ映画『このごにおよんで愛など』。ワールドプレミアでの大盛況を皮切りに、今後の展開と日本公開へ向けて大きな期待が膨らむ釜山国際映画祭のステージとなった。
あわせて、レッドカーペットや公式記者会見で見せた表情とは一味違う、キャスト陣の自然体な魅力が満載のアザーショットもお届け。海風が心地よい釜山の海岸沿いを楽しむ柄本、石橋の姿や、会場となる「BIFF」の大型ロゴをバックに2人揃ってお茶目に指ハートを贈るキュートな姿、さらには今回登壇が叶わなかった長澤の顔パネルを掲げ、絆をのぞかせる笑顔のひと幕など、映画祭の現場のあたたかな空気感とキャスト同士の仲のよさがあふれ出た貴重なショットとなっている。
10月24日(土)にはいよいよジャパンプレミアが開催され日本でも本作が初お披露目となる。わがままで、ずるくて、だけどどこか愛おしい、不器用な3人が揺れ動く感情と向き合いながら紡ぎ出す映画『このごにおよんで愛など』にぜひ期待してほしい。
文/山崎伸子
