チェ・ミンシク主演『マイ・インターン』‟韓国社会のいま"を反映したリメイクが高評価、『もしもの愛』が銀獅子賞受賞…9月の韓国映画界を現地レポート!
韓国映画界の“いま”をお届けするPRESS KOREA。9月は、巨匠イ・ジュニク監督が手掛けたショートドラマの劇場公開や、チェ・ミンシク&ハン・ソヒ共演による『マイ・インターン』の韓国リメイク、さらにイ・チャンドン監督の8年ぶりとなる新作の国際映画祭での受賞など、注目のニュースが相次いだ。新たなフォーマットへの挑戦から、人気ハリウッド作品のローカライズ、世界から高い評価を受けた巨匠の最新作まで、韓国映画界の多彩な動きが見られた。注目を集めた3つのトピックを現地からレポートする。
巨匠イ・ジュニク監督のショートドラマ「父の家ごはん」が劇場公開!
イ・ジュニク監督が手掛けたショートドラマ「父の家ごはん(原題:아버지의 집밥)」が9月9日、韓国の劇場で公開された。スマートフォンでの視聴を前提として縦型で作られたショートドラマが横長の劇場スクリーンで公開されるのは韓国では初めて。1話2分程度のショートドラマ全61話が146分の1本の映画のように上映され、話題を呼んでいる。
イ・ジュニク監督といえば、『王の男』(05)、『王の運命(さだめ)―歴史を変えた八日間―』(15)などで知られる韓国を代表する監督の1人。それゆえ出演陣も豪華で、『王の男』で王・燕山君(ヨンサングン)を演じたチョン・ジニョン、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)の家政婦役で世界的に注目を浴びたイ・ジョンウンが主演を務め、2人が演じる夫婦の息子役としてピョン・ヨハンも出演している。
「父の家ご飯」は同名のウェブトゥーンが原作。ある日突然料理が作れなくなった母(イ・ジョンウン)に代わって、料理初心者の父(チョン・ジニョン)が奮闘する物語だ。縦型のため複数の人物が画面に入ることは少なく、出演俳優一人ひとりが映し出され、人物の表情から内面がより直接的に伝わってくる効果もある。
ショートドラマは数年前から中国で爆発的な人気となり、日本や韓国でも市場が拡大している。ソウルでは8月29日に第1回コリア・ショートドラマ・アワードの授賞式が開かれ、一般公開に先駆けて「父の家ごはん」が上映された。
人気俳優のソン・ソックが主演・共同製作を務めた約13分の短編映画『夜釣り(原題:밤낚시)』(24)が劇場公開されるなど、近年は劇場公開作品のフォーマットが多様化している。巨匠イ・ジュニク監督がショートドラマに挑んだのも、韓国映画界の不況が続き、若手監督たちが映画を撮るハードルが上がっているなかで、映像制作の機会を広げようという意図があったと語っている。
大物俳優チェ・ミンシクがインターン?韓国で『マイ・インターン』リメイク
チェ・ミンシク、ハン・ソヒ主演の映画『インターン(原題:인턴)』が9月16日に韓国で公開され、初日から興行1位に躍り出た。8月に韓国で公開され、観客数1000万人を超える大ヒットを記録したクリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』から首位の座を奪ったかたちだ。
本作は、ロバート・デニーロ、アン・ハサウェイ主演のハリウッド映画『マイ・インターン』(15)のリメイク。世界中で愛される作品が韓国映画として生まれ変わった。『82年生まれ、キム・ジヨン』(19)、『サヨナラの引力』(25)で知られるキム・ドヨン監督がメガホンを取り、韓国映画界のレジェンド、チェ・ミンシクとファッションアイコンであるハン・ソヒの共演にも注目が集まる。
30年以上務めた会社を退職したギホ(チェ・ミンシク)が、30代のソヌ(ハン・ソヒ)がCEO(最高経営責任者)を務めるファッション系企業にシニアインターンとして入社する。ブランド立ち上げからわずか3年で急成長を遂げた会社を率いる若きCEOソヌを、37年に及ぶキャリアを持つベテランのギホがサポートする。歩んできた人生も、仕事のやり方も異なる2人が、世代を超えて互いの足りない部分を補い合っていく。
当初はまったく縁のなかったファッション系企業に適応するのにあくせくするギホだが、次第に同僚たちと打ち解け、共に力を合わせるオフィスドラマだ。原作の大筋は維持しながら、男女間や世代間の葛藤を色濃く描くなど、いまの韓国社会の現実に合わせて脚色した。
主演のチェ・ミンシクもハン・ソヒもできるだけ原作を忘れてギホ、ソヌになりきることに専念したという。チェ・ミンシクはいまの韓国の若者が求める「理想の大人」を体現した。ローカライズの努力が功を奏し、「韓国らしい作品としてうまくリメイクされている」という好評の声が相次いでいる。
イ・チャンドン監督『もしもの愛』がベネチアで銀獅子賞を受賞!
イ・チャンドン監督の映画『もしもの愛』(10月23日公開)が第83回ベネチア国際映画祭で審査員大賞にあたる銀獅子賞を受賞した。チョン・ドヨンとソル・ギョング、チョ・インソンとチョ・ヨジョンがそれぞれ夫婦を演じ、2組の夫婦の人生が交錯する様子を描く。
2組の夫婦はまったく異なる階級に属する。リストラによって職を失った労働者夫婦ホソク(ソル・ギョング)とミオク(チョン・ドヨン)、そして彼らをカメラに収めるドキュメンタリー監督イェジ(チョ・ヨジョン)と資本家サンウ(チョ・インソン)を通し、階級間の格差が浮き彫りになる。イ・チャンドン監督は「単純な階級対立を超えて、人間関係の様々な側面を描き出したかった」と語っている。
韓国映画がベネチア国際映画祭のコンペティション部門で受賞するのは2012年にキム・ギドク監督の『嘆きのピエタ』が金獅子賞を受賞して以来、14年ぶりの快挙だ。映画祭での初上映後、7分間にわたるスタンディングオベーションを受け、ソル・ギョングとチョ・インソンが感極まって泣き出す姿も話題になった。
『もしもの愛』は11月6日にNetflixオリジナル映画として全世界に配信されるが、それに先駆けて韓国では9月23日、日本では10月23日に劇場で公開される。
『バーニング 劇場版』(18)以来、8年ぶりのイ・チャンドン監督の新作となる『もしもの愛』は、当初は劇場公開を目標に企画され、韓国映画振興委員会(KOFIC)の中規模予算の制作支援作品にも選ばれたが、韓国内での投資誘致が難航を極めた。制作中止の危機に直面したところへNetflixの大規模な投資が得られ、完成にこぎ着けたという事情がある。巨匠イ・チャンドンの新作にもかかわらず、お蔵入り寸前に追い込まれた『もしもの愛』は、グローバル資本の力を借りて日の目を見ることになった。
文/成川彩

