『ルックバック』の出口夏希、蒔田彩珠、是枝裕和監督らが第83回ヴェネチア国際映画祭へ!その模様を一挙レポート

『ルックバック』の出口夏希、蒔田彩珠、是枝裕和監督らが第83回ヴェネチア国際映画祭へ!その模様を一挙レポート

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藤本タツキ原作、是枝裕和監督&脚本&編集、出口夏希と蒔田彩珠がW主演を務める実写映画『ルックバック』(9月11日公開)が、イタリアで開催中の第83回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門にて正式出品され、是枝監督と、出口、蒔田、七瀬ふうり、岡田六花らキャスト4人が参加。現地での公式記者会見、フォトコール、レッドカーペット&公式上映までのレポートを一挙お届けする。

漫画の腕に絶対の自信を持つ藤野と、彼女に憧れを抱きながらも圧倒的な画力を秘めた京本。漫画へのひたむきな思いで結ばれた2人を、ある日思いもよらない出来事が襲う。原作と同様に、小学生時代から始まる2人の13年間の軌跡を、繊細かつみずみずしく描き出す。藤野役を出口が、京本役を蒔田が、藤野と京本のそれぞれの子ども時代を七瀬と岡田が演じた。

【写真を見る】ゴンドラに乗って運河を巡り、笑顔を見せる出口夏希と蒔田彩珠
【写真を見る】ゴンドラに乗って運河を巡り、笑顔を見せる出口夏希と蒔田彩珠

9月6日に現地に到着した一行は、さっそく“水の都”ヴェネチアの美しい街並みへ。名物のゴンドラに乗って運河を巡り、歴史ある街並みを心から楽しむ様子を見せた。出口は「水上タクシーを見て『ヴェネチアに来たな』と実感が湧いてきました」と目を輝かせ、蒔田も「建物が全部可愛くて、街並みがとにかく綺麗です」と、初めて目にするヴェネチアの街並みに感動しきりだ。

歴史ある街並みを心から楽しむ2人
歴史ある街並みを心から楽しむ2人

子ども時代を演じた七瀬は「空港が大きい(笑)。これまであんまり船に乗る機会がなかったので楽しかったです!」と大興奮すると、岡田も「島の方に手を振ったら、みんな振り返してくれるので楽しかったです!」と笑顔を見せた。そんなキャスト陣の喜ぶ姿に、是枝は「みんな船に乗って、もうすでにだいぶ満足している様子なので僕も満足です!」と笑顔をのぞかせつつ「頑張ってくれた4人と一緒に来れたことがうれしいですが、スタッフもたくさん来てくれたので、皆で上映を楽しみたいと思います」と、公式上映への想いを明かした。

是枝裕和監督が公式記者会見で語った、原作との出会いや映画化への熱い想い

藤野役の出口夏希
藤野役の出口夏希[c] Kazuko Wakayama

翌9月7日は、5人と小出大樹プロデューサーがヴェネチア・リド島の「Palazzo del Cinema」にて行われた公式記者会見&フォトコールに参加。会見の冒頭で小出プロデューサーは「『ルックバック』という作品を、是枝監督と1~2年の時間をかけて作って、皆さんに観ていただける機会が今日あるのが大変うれしいです」と喜びを語った。

京本役の蒔田彩珠
京本役の蒔田彩珠[c] Kazuko Wakayama

質疑応答では、まず是枝監督に原作漫画との出会いや実写映画化を決めた理由についての質問が。原作と出会ったのは「漫画が出版されてすぐ、2021年ぐらい」だという是枝監督。当時はコロナ禍の影響で、自身が関わってきた映画制作がすべてストップし、「立ち止まらざるを得なくなっている状況だった」と振り返る。

メガホンをとった是枝裕和監督
メガホンをとった是枝裕和監督[c] Kazuko Wakayama

「自分が関わっている映画が、世界が非常事態に陥った時に、どんな意味があるのか、価値があるのかを考えざるを得なくなった時に、この作品と出会って、覚悟を問われたような、背中を押されたような、もう一度映画を作ってみようという強い気持ちが自分の中に蘇ってくるような、そんな出会いでした」と明かし、「なので、藤本(タツキ)さんにお会いした時にまずお礼をお伝えして、『こんな漫画を作っていただいてありがとうございます』ということをお伝えしました」と語った。

W主演を務めた2人
W主演を務めた2人[c] Kazuko Wakayama

そして、「お礼を形にするのであれば、自分は監督なので映画にしようという流れに自然になりました」と実写映画化の経緯を説明。「普段あんまり映画化を前提に漫画を読むことはないのですが、この作品も映画化作品を探しながら出会ったわけではなく、ふと、背中が表紙になった漫画が気になって手に取ったという、偶然の出会いから生まれたものです。とても良い出会いだったと思います」と、原作との運命的な出会いを振り返った。

子ども時代の藤野と京本を演じた七瀬ふうりと岡田六花(左)
子ども時代の藤野と京本を演じた七瀬ふうりと岡田六花(左)[c] Kazuko Wakayama

また、小出プロデューサーは藤本タツキが本作を描くに至った背景についても言及。藤本が大学生として上京し、美術大学に通っていたころに東日本大震災を経験したことにも触れ、「本当になにもできない」と感じていたという藤本の思いを説明する。

「本当にクリエイターとして自分の将来、どう進めばいいんだろうというところの悩みがあって、ボランティアに行っても、瓦礫を運ぶことがなにに繋がるんだろうみたいなことを自問自答。ただその時には技術もなくて、まだデビューもしていなかった時のモヤモヤというか、この衝動が、月日を経ってこういう形で『ルックバック』という作品になったという話を聞いていまして」と語った。

さらに、「自分がなにをできるのかどうなのかっていうところの、完全に形にならないけどなにか行動したいという気持ちって、みんな持っているある種不変的な気持ちみたいなところに、藤本先生が書かれたこの『ルックバック』は通じていったところがある。ヒットだったり、漫画が強い共感性を持った原体験が、3.11やコロナに起因しているところがあるからではないかなと、プロデューサーとして感じています」と分析した。

映画撮影で苦労した点と楽しかった思い出とは?

透明感が際立つシンプルな黒のVネックドレスで登場した出口夏希
透明感が際立つシンプルな黒のVネックドレスで登場した出口夏希[c] Kazuko Wakayama

映画のなかでは漫画家を目指す藤野と京本の姿が印象的に描かれているが、劇中で使用された絵について尋ねられると、出口は「私たちは撮影が始まる4か月前から漫画を描く練習を始めたんですけど、(劇中でも)使われています! 練習してきたものを、映像、映画のなかでも出していただいてます」と回答し、普段好きな漫画として「『ドラゴンボール』が好きです」と明かした。

繊細なレースが印象的なワンショルダーのロングドレスをまとった蒔田彩珠
繊細なレースが印象的なワンショルダーのロングドレスをまとった蒔田彩珠[c] Kazuko Wakayama

蒔田は、「私が演じる京本が美術の大学に行き始めてからの絵は、プロの方に描いていただいた絵の上から筆をのせる形で撮影していました」と説明し、普段読む漫画については「『NANA』ですかね」と回答。

ベージュのドレスをまとった七瀬ふうり
ベージュのドレスをまとった七瀬ふうり[c] Kazuko Wakayama

七瀬も「頑張って練習してきたので、使われてます」と笑顔を見せ、「好きな、普段読んでいる漫画は『ダークギャザリング』という、ホラー系の漫画を読んでいます」と話した。岡田は「私も、たくさん漫画の練習してきたんですけど」と語り、「いろいろな漫画を読んでいますが、有名なもので言うと『デスノート』ですかね」と好きな漫画を明かした。

黒のドレスに身を包んだ岡田六花
黒のドレスに身を包んだ岡田六花[c] Kazuko Wakayama

続いて、これまでの作品でも子どもや若者、少年少女の視点から物語を描いてきた是枝に、今回もそうしたテーマを選んだ理由、そして日本文化における漫画の存在についての質問が寄せられた。

是枝裕和監督が黒タキシード姿で登場
是枝裕和監督が黒タキシード姿で登場[c] Kazuko Wakayama

是枝監督は、「確かに僕の映画のなかには子どもがたくさん出てくるんですけれども、作品によって子どもの描き方は変わっていると思います」とコメント。

「大人の社会を批評する目としての子どもという存在もありますし、作品によっては大人が失ってしまったある種の純粋さみたいなものが、時には暴力的にもなることもありますけれども、そういうものを描くこともあります」と、これまで作品ごとに異なる子どもの姿を描いてきたことを語る。一方で、本作については「今回の子どもたちは正直言うと、自分で撮りながら、なにかに一生懸命になっている子どもの背中というのは、なんでこんなに尊いんだろう、美しいんだろうと思いました」と明かし、「現場にいる大人たちはみんなそう考えながらこの子たちを取り囲んで、尊いものとして撮ったという意識が強いかな」と振り返った。

出口夏希の全身ショット
出口夏希の全身ショット[c] Kazuko Wakayama

また、是枝監督は日本社会における漫画の存在については、「たぶん僕が子どものころ、漫画ばかり読んでいるとダメな大人になると言われてました」と回想。

「そういう価値観が、たぶん日本で突出して漫画文化というものが発展して以降も、日本以外の国ではまだ残っていたんじゃないかな。でも、それがここ10年、15年、20年ぐらいで、価値観が変わったなというのはすごく感じています」といい、「僕も、漫画を読みながら、僕の場合はもちろん最初は手塚治虫さんからスタートしてますけども、そういった漫画と出会いながら大人になってますので、文学を読むのと同じように漫画を読むという意識を持っているんじゃないかな、多くの人は」と自身の考えを述べた。

蒔田彩珠の全身ショット
蒔田彩珠の全身ショット[c] Kazuko Wakayama

日本の地方で暮らす少年少女がどのように夢を抱き、漫画家を目指していくのかという背景を世界へ伝える意義について是枝監督は、「意義というのは難しいんですけど」と前置きしながらも、「僕もこの映画を作りながら、漫画というものがどういうプロセスでできあがっていくのかということを学びました」と明かした。

さらに、制作を通して自身がテーマとして意識したものは「音」だったといい、「描く音が非常にためらいながら弱々しい音を立ててたペンが、やがて迷いなく力強い音を出して、それが2つに重なってデジタルに変化していく」と説明。「漫画というものがどういうふうに作られ、でき上がっていって、しかも時代とともに変わっていくのかということを、作品の2人の成長を通して描けたことがとても大きな意味があったかなと思います」と語った。

全員でフォトセッション
全員でフォトセッション[c] Kazuko Wakayama

映画作りにおいて苦労した点や楽しかった思い出について問われると、七瀬は、漫画の練習が大変だったと明かし、「この『ルックバック』の藤野を演じる前は、ちょっと絵に興味があって落書き程度で楽しんで描いてたんですけど、こんながっつりちゃんと描いたことがなくて。知らないことを学べたり、漫画の大変さが伝わってきました」と語り、楽しかった思い出については「撮影期間に、スタッフの皆さんがすごくノリが良くて優しくて、話しやすくてすごく楽しかったし、キャストの夏希ちゃん、彩珠ちゃん、六花ちゃん、この3人もすごく優しくて、ずっと(一緒に)いて幸せでした」と笑顔を見せた。

岡田も「漫画練習も大変だったんですけど、方言が大変でした」と告白。「秋田弁は全然触れたこともなかったし、聞いたこともなかった方言だったので、本当に練習がとっても大変でした」と語り、楽しかった思い出については、「やっぱりふうりちゃんと藤野の部屋とか京本の部屋のセットで、一緒に絵を描いたり、桜餅食べたり、漫画読んだり、こたつに入ったりしたのが、私にとっての楽しくていい思い出でした」と撮影の日々を振り返った。

公式記者会見には小出大樹プロデューサーも参加
公式記者会見には小出大樹プロデューサーも参加[c] Kazuko Wakayama

蒔田は「大変だったことは、漫画練習と、京本は美術の大学で油絵もやったので、その練習も大変でしたね。あと方言もあまり聞き馴染みのない方言だったので、時間をかけて練習しました」と回答。楽しかった出来事については、「お昼ご飯のケータリングに、たまにラーメンカーが来てくれて、監督が最前列に並んでいました。そういう光景が私は好きでした(笑)」と、現場での微笑ましいエピソードを明かした。

出口も「大変だったことは、やっぱり漫画練習が本当に大変でした。大人になってから絵を描く機会が本当になくて、マメができて、手が痛く、すごく大変だったのを覚えています」と当時を振り返った。楽しかったことについては、秋田県にかほ市での撮影を挙げ、「すごく撮影期間が一番楽しくて。秋田で本当に住んでいるような、生活しているような感じだったんですけど、みんなでスイカ割りしたり、花火したり、撮影じゃないところなんですけど、すごく楽しい夏の思い出になりました」と笑顔を見せる。

是枝監督は「楽しかったことしか思い浮かばないですけど、大体つらかったことは忘れるので(笑)」と会場を和ませる。「楽しかったがゆえに、最初の約束だと春夏秋冬で、一旦クランクアップをして花束も渡した後に、たぶん楽しかったからだと思うんですけど、もう1回冬と春と追加撮影をさせていただいて、それが素晴らしかったです。それが作品にも活きてますし、とてもいい時間だったなと思います」と語った。一方で大変だったことについては、「最初の撮影でとてもとてもすばらしい白鳥が偶然撮れてしまって。脚本にあったわけではないんですけど、それが撮れてしまったことをどう活かすかということで、脚本を書き直し、撮影で通うごとに白鳥を見つけるという作業が、僕ではなくてスタッフが大変だったと思います」と明かした。


さらに、本作における色彩や、四季の移り変わりの表現について「最初にこの作品を映画化する時に、藤本さんの出身地である秋田のにかほ市で、4つの季節、要するに4種類の光を撮りたいという、その4種類の光の中に、4人の、2人ですけども、成長を捉えていきたいというふうに企画書に書かせていただいた」と明かし、「色というよりは光の変化をフィルムで撮って、作品の中に閉じ込めるという意識でスタッフ全員いたと思います。本当に贅沢に時間を使わせていただいたことが、とても大きかったですし、その共通の価値観を、特に撮影の上野千蔵さんをはじめ、スタッフの方たちと共有できたのが良かったかなと思います」と締めくくった。

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