『ローズマリーの赤ちゃん』の再来とも…北欧発の子育てホラー『ナイトボーン -夜哭-』を通して見る母親の不安と恐怖
子育てホラーに北欧伝説を融合
物語中盤までは育児ノイローゼに陥ったサーガが強迫観念に陥って心身共に疲弊していく心理ドラマとして進むが、彼女の母親のひと言をきっかけに、本作は民俗系ホラーへと大きくドライブしていく。フィンランドをはじめ北欧諸国には森に潜む“トロール”の神話が語り継がれており、ベルイホルム監督はそこに独自の解釈を持ち込み、子育てホラーと融合させている。
宮崎駿監督の『となりのトトロ』は、この森の妖精トロールがモチーフの一つとも言われている。また、テレビアニメ「ムーミン」などのイメージもあって、日本ではトロールはかわいい妖精と思われがちだ。しかし、北欧では一般的にトロールは恐ろしい魔物として知られている。
宮崎アニメが人間社会と自然との共生を何度もテーマにしてきた一方、欧州の文化や民間伝承では、文明と大自然は相容れないものであるという考え方が歴史的に見られる。宮崎アニメ、ジブリアニメに長年親しんできたファンは、フィンランドの森を舞台にした本作の展開に、かなりのショックを受けるのではないだろうか。
そして、なかなかカメラが映しださない本作の赤ちゃんの顔が、ラストシーンで明かされることになる。ホラー映画として、最高に振り切ったエンディングだろう。ある種の爽快感すら与えてくれる。
ボディホラーの要素を盛り込んだ前作『ハッチング―孵化―』と同様に、観る側の予想を裏切っていくベルイホルム監督のサスペンス演出が心地よい『ナイトボーン -夜哭-』。予測不能な展開に、多くの観客はベルイホルム監督の独創性を楽しみながら翻弄されるはずだ。そして、この母子に幸多からんことを願う。
文/長野辰次
※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記
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