『ローズマリーの赤ちゃん』の再来とも…北欧発の子育てホラー『ナイトボーン -夜哭-』を通して見る母親の不安と恐怖

『ローズマリーの赤ちゃん』の再来とも…北欧発の子育てホラー『ナイトボーン -夜哭-』を通して見る母親の不安と恐怖

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森に生息する不思議な生き物と純真な少女たちとの交流を描いたスタジオジブリの『となりのトトロ』(88)は、日本人にとって国民的アニメとも呼べるファンタジー作品となっている。だが、もし森の生き物が人間にとって邪悪な存在だったら…そんなふうにジブリファンも(?)震撼させてしまうのが、北欧ホラーの新作『ナイトボーン -夜哭-』(公開中)だ。

泣き止まない赤ちゃんに対し、唸り声を上げるサーガ(『ナイトボーン -夜哭-』)
泣き止まない赤ちゃんに対し、唸り声を上げるサーガ(『ナイトボーン -夜哭-』)[c] 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

監督を務めたのは、長編デビュー作『ハッチング―孵化―』(22)で欧州に伝わる「取り替え子」伝説を現代的にアップデートしてみせた、フィンランドのハンナ・ベルイホルム。これに続く本作に、第74回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『コンパートメントNo.6』(21)の主演女優セイディ・ハーラ、「ハリー・ポッター」シリーズのロン役でおなじみのルパート・グリントが出演。生まれたばかりの我が子に違和感を覚える母親の狂気、そして暴走が描かれる。

厳格な家庭で育った少女が拾った鳥の卵からクリーチャーを孵す『ハッチング―孵化―』
厳格な家庭で育った少女が拾った鳥の卵からクリーチャーを孵す『ハッチング―孵化―』[c]Everett Collection/AFLO

生まれてきた赤ちゃんがどこかおかしい…

新婚夫婦のサーガ(ハーラ)とジョン(グリント)は、理想の家庭を築くためにサーガの故郷であるフィンランドの森へやって来た。2人はかつてサーガが暮らしていた古い一軒家を明るくリフォームして暮らし始める。やがて、待望の赤ちゃんを授かることに。しかし、出産を終えたサーガは、我が子が不気味な存在に思えて仕方がない…。

【写真を見る】この赤ちゃん、どこかおかしい…。母親が抱える不安や恐怖を新たな“子育てホラー”に昇華した『ナイトボーン -夜哭-』
【写真を見る】この赤ちゃん、どこかおかしい…。母親が抱える不安や恐怖を新たな“子育てホラー”に昇華した『ナイトボーン -夜哭-』[c] 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

ほかの赤ちゃんに比べて妙に毛深く感じられるし、母乳を与えようとすると、強い力で乳首を噛まれてしまう。さらに、癇癪を起こして手がつけられないほど暴れることも。心配になったサーガは母親(ピルッコ・サイシオ)に相談するが、「あなたを育てるのも大変だった」「あなたに命を吸い取られるかと思った」と真に受けてもらえない。さらに、育児方法をめぐって温厚なジョンともケンカになってしまう。

自宅の床下から木が生え始める奇妙な現象も(『ナイトボーン -夜哭-』)
自宅の床下から木が生え始める奇妙な現象も(『ナイトボーン -夜哭-』)[c] 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

母親が抱く子どもへの不安感を新たな子育てホラーとして解釈

おかしいのはサーガなのか、それとも赤ちゃんなのか?彼女は必死になって我が子の異変を周囲に訴えるのだが、「母親なんだから」「努力が足りない」とむしろ自身に非があるように諭され、その姿は過度なプレッシャーにさらされる世間の母親とも重なる。本作はベルイホルム監督自身の出産と育児体験が作品づくりのベースにあり、それがサーガにまとわりつく不安感にリアリティをもたらしている。

親になるという体験には複雑な感情の揺れ動きが伴い、それが自身の思い描いていた理想と異なっていると、我が子とどう向き合うべきか?と自問自答してしまうもの。このような時に美しいとはいえない親から子へのままならない愛情に、ベルイホルム監督は鋭く切り込んでいる。

サーガとジョンは赤ちゃんを育てることができるのか?(『ナイトボーン -夜哭-』)
サーガとジョンは赤ちゃんを育てることができるのか?(『ナイトボーン -夜哭-』)[c] 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway

妊婦が抱く不安感や恐怖心を巧みに描いたロマン・ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』(68)の再来とも評される本作。一方で、生まれてきた赤ちゃんがエイリアンのように思えてしまう情景はデイヴィッド・リンチ監督のデビュー作『イレイザーヘッド』(77)に通じ、母親と赤ちゃんとの特殊な関係性を描いた楳図かずお原作の『赤んぼ少女』(08)なども想起させる。本来なら愛情を一身に浴びるはずの赤ちゃんを恐怖の対象として描く「赤ちゃんホラー」はひと筋縄では済まない作品が多い。

妊婦が抱く不安感や恐怖心を巧みに描いた『ローズマリーの赤ちゃん』
妊婦が抱く不安感や恐怖心を巧みに描いた『ローズマリーの赤ちゃん』[c]Everett Collection/AFLO


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