『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』西野亮廣が語る制作秘話「マーケティング的な邪な考えを捨てるのが一番難しかった(笑)」

『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』西野亮廣が語る制作秘話「マーケティング的な邪な考えを捨てるのが一番難しかった(笑)」


映画 えんとつ町のプペル」シリーズでは、音楽も重要な要素のひとつ。今作では前作の大ファンだという富貴晴美が初参加し、登場人物たちの心情を表現するエモーショナルな楽曲の数々を手掛けている。ちなみに本作の新たなメインキャラクターである時計師のガス(声:吉原光夫)と、人の姿に化けた植物の精霊・ナギ(声:小芝風花)のクライマックスシーンのテーマ曲を作るにあたり、西野から富貴へのオファーは「名曲を書いてください!」というストレートすぎる言葉だったとか。

「いや、ほんとひどいですよね(笑)。富貴さんには謝らなきゃいけない。実は当初、そのシーンにはほかの曲を入れる予定だったんですが、富貴さんから新しい曲を書きたいという提案があったんです。それで『わかりました。その代わり、名曲を作ってくださいよ』と。プロの作曲家さんに、そんな指示出しちゃダメじゃないですか。お笑い芸人に対して、『おもしろいことやってくださいね』って言っているようなものですから。ですが、僕も本気で言ったんですよ。『めちゃくちゃ大事なシーンなので、この曲で締めるような、名曲を作ってください』って。後日、富貴さんから曲が上がってきた時には、もうガッツポーズでしたね。最初にデータで届いた曲を聴いたとき、僕すぐに電話して、『富貴さん、コレ!コレっす!ありがとうございます!』って。最高でした。うれしかったです」。

”王道の大冒険”を西野亮廣が信頼を寄せるSTUDIO4℃が見事に描き切る
”王道の大冒険”を西野亮廣が信頼を寄せるSTUDIO4℃が見事に描き切る[c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

「エンタメだから、いろんなものがあっていい」

アニメーション制作は、前作に続いてタッグを組むSTUDIO4℃。昨年公開された『ChaO』(25)でもアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞を受賞するなど、国際的な評価が高いスタジオとして知られている。西野にとってSTUDIO4℃作品との出会いは、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した『鉄コン筋クリート』(06)だった。

「僕は中学生のころから松本大洋さんの漫画が大好きで、ずっと読んでいたんです。その松本大洋さん原作の『鉄コン筋クリート』を映画化するって聞いた時は、失礼ながら、ムリだろって思ったんですよ。ところがSTUDIO4℃は松本さんの絵をアニメーションの形で本当に見事に動かされていて、めっちゃ感動したんですよね。で、自分が劇場アニメを作るというターンになった時に、STUDIO4℃の名前が挙がってきて。あれだけ自分を感動させてくれたスタジオさんと組めるなんて…ぜひお願いします!という感じでした」。

西野が考えるSTUDIO4℃の魅力は、まず「圧倒的な技術力」。そして「ひと目でSTUDIO4℃の絵だとわかる」個性的なキャラクターデザインだ。「日本のアニメって、美人キャラの顔はコレ、イケメンの顔はコレ、みたいな定型がなんとなくあって、僕たち観客もそういうものが好きになってきてしまっている。そんななか、STUDIO4℃はワガママなのかなんなのか(笑)、好みもバッチリ分かれます、みたいなところがあって。STUDIO4℃が描くキャラが苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、僕はそこが本当に好きで。エンタメだから、いろんなものがあっていい。ひとつ確かなのは、STUDIO4℃はスタジオとしてのカラーが明らかで、日本国内だけじゃなく、海外でも、これはSTUDIO4℃の絵だなというのがはっきりわかるということ。いまのようにマーケティングのデータが取れて、観客の好みの答え合わせができる時代に、これだけ個性を残しているのはすばらしいなと思います」。

本作のヒロイン、ナギを小芝風花が、愛する者の帰りを信じるガスを吉原光夫が演じる
本作のヒロイン、ナギを小芝風花が、愛する者の帰りを信じるガスを吉原光夫が演じる[c] 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

今作の制作期間中、西野は前作『映画 えんとつ町のプペル』で長編監督デビューを果たした廣田裕介監督、SUTDIO4℃の田中栄子プロデューサーと3人で「王道をやりきろう」と話し続けてきたという。「とにかくど真ん中の直球で、ハッピーエンドの冒険活劇。ハシゴを外したり、期待を裏切ったりするんじゃなくて、お客さんが求めているところに投げて、それをさらに上回るのをやろう!って言っていました。僕、90年代のトレンディドラマが好きなんですよ。一番盛り上がるシーンで主題歌が流れ始める、みたいな(笑)。恥ずかしがらず、あれをやりましょう!って」。

変化球なしの王道を真正面からやるというのは、実は「同業者の目もあるし、たぶんけっこう抵抗あると思うんですよね」と西野は語る。「芸人だったら、目の前のお客さんがどんなに笑っていても、舞台袖はあんまり笑ってないな…とか、ちょっと意識してしまう気持ちがあるんですけど。いや、それは関係ないなと。少なくとも、このプロジェクトにおいては、王道をやりきりたかった。廣田監督の采配も大きいと思いますね。覚悟を決めて、その方向に舵を切ってくださったのは、本当にうれしかったです。観てくださったお客さんに、スケールアップした正統派ファミリーエンタテインメントを楽しんでもらえたらなによりです」。


文/石塚圭子

■「えんとつ町のプぺル」誕生秘話も!西野亮廣の最新エッセイ
タイトル:「ゴミ人間 日本中から笑われた夢がある」
著者:西野亮廣
定価:902円(税込)
発売:2026年3月23日
発売・発行:株式会社KADOKAWA
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