ロッキーとの友情、カラオケシーン誕生秘話も。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』奇跡の舞台裏をライアン・ゴズリングらクルーが明かす
「私たちの共通認識は、ロッキーの表現次第でこの映画が成功するか否かが決まる、ということでした」(ウィアー)
――この映画を通じて、若い世代にどんなメッセージを届けたいですか?
ゴズリング「アンディの声は、いまこの時代にとって非常に大切なことを述べていると思います。別の銀河に行って、宇宙人の親友ができて、世界を救う。(この映画を観に行くのは)金曜の夜の過ごし方としては悪くないと思いますよ(笑)。家族との映画鑑賞体験を考えると、いまは家族全員で観られる作品を見つけるのは難しい。映画館で家族全員の心に刻まれるような、子どもの頃に誰しも経験した大切な思い出になる瞬間を探しているのだけれど。そういう作品を一つ作れたらと思っていました。人生最大の冒険でありながら、現実逃避にはなっていない。私たちが人間としてなにを成し遂げられるかという、力強い提示です。アンディが持っている“恐怖を好奇心に変える”という考え方は、実際に試みる価値のある考え方です。若い世代がその精神と希望を映画から受け取ってくれたらうれしいです」
――アニメーションでの映画制作経験、特にその分野での革新という背景のもと、アニメーション映画から『プロジェクト・ヘイル・メアリー』制作に活かした最大の教訓はなんですか?
ロード「この質問はよく聞かれるのですが、2つの映画制作スタイルの違いについて、実はあまり違いを感じていないんです。どちらも大きなチームスポーツで、物語をビジュアルで語っています。アニメーションでおもしろいのは、動きで物語を語るということ。多くの場合、セリフは副次的なものです。それはロッキーを描く時にも、ライアンと作業する時にも非常に役に立ちました。両方のキャラクターが、時に言葉なく自分を表現しなければならないから。ロッキーの場合、動き方そのものが長い間、自己表現の手段でした。ライアンはなんでもできますが、特に優れた身体的表現者です。体の動かし方、シルエットそのものに注目が集まる。それは言葉がない世界で物語を語ろうとする時に非常に価値が生まれます。この映画の核心には、身体表現が豊かな2人のキャラクターがいるわけです。そういう意味で、アニメーションの経験は大きかったと思います」
ゴズリング「ここは割り込んで話さずにはいられないのですが(笑)、エイミーと私が2人の名前をヒソヒソ声で言ったのは、他に選択肢がなかったからです。この映画を作れるのは彼らしかいない。彼らなしにはこの映画は存在しなかった。その恐れを知らない姿勢について、私も身をもって知っています。私が一人で撮影していたことについていろいろ語られていますが、確かにある意味ではそうでした。でも、いつも2人がいてくれました。ある日、非常に孤独を感じて、完全に行き詰まった気がして、自分の創造性が底をついてしまったような気分になって、『共演相手が欲しい』と思ったことがありました。『友達が必要だ、今日はちょっと無理かもしれない』と思っていたら、フィルがどこからかガムテープを取り出して…なぜかいつも持っているんですが(笑)。
別のセットにいたクリスと2人で、モップに手を付けて“モッピー・リングウォルド”と名付けてくれました。そのモッピーと踊って、笑って、モッピーとのすばらしい一日を過ごしました。しかもそれが映画の中に残っているんです。2人は計画していたことを全部止めて、私がなにを必要としているか、映画がその瞬間になにを求めているかに耳を傾け、モップ人形を作って一日中撮影してくれた。それが彼らのような映画クリエイターです。こういう魔法のような瞬間が、彼らの恐れを知らない探究心によってこの映画のいたるところに宿っています」
ウィアー「私も割り込ませてください。一つ言いたいのは、私たちの共通認識は、ロッキーの表現次第でこの映画が成功するか否かが決まる、ということでした。そしてこの2人はアニメーションを知っている。それが、顔も目もない一見感情を持たなそうな岩をキャラクターへと昇華させることに直結したと思います。誰もができることではありません」
「一つ忘れないでほしいのですが、これはとにかく超絶スリリングな冒険映画なんですよ」(ヒュラー)
―― この映画が伝える最大のメッセージはなんでしょうか?
ロード「地球でも宇宙でも、すべてのシーンで存在たちが問題解決のために力を合わせています。それが映画をあれほど希望に満ちた楽観的なものにしている理由です。技術的に見れば終末的な出来事を描いているのに、暗くも冷たくも無機質でもなく、温かく、希望に満ちている。人間の精神の本質が映し出されています」
ミラー「私が映画を好きなのは、多くの人間が、多くのアーティストがなにかに向かって力を合わせる、その魔法を目の当たりにできるからです。私たちはいつも、人々が善を想像できるような映画を作ろうとしています。自分たちにはなにができるのかを見て、可能性を思い出してもらいたいんです」
パスカル「この映画は単に人々が協力するだけの話ではありません。お互いを恐れながらも、見た目も話し方も出自もまったく異なる存在が、相手のことを理解しなければ終わりだと気づく話なんです。これは今とても重要なメッセージだと思います。もう一つ、この映画は最初から最後まですべての会話で、科学と信仰の交差を描いています。それが深い形で共存している。家族で、または大人として、どんな立場でこの映画を見ても、そのことを感じ取ってほしいと思っています」
ロード「ザンドラが演じるキャラクター(エヴァ・ストラット)は、ライアンが演じたキャラクターが自分を信じるずっと前から、彼のことを信じています。それがこの映画の核心的な部分です。エイミーが昔クリスと私を信じてくれたのと同じように。18年前に彼女は私たちをオフィスに呼んで、『この2人をクビにすべきか迷っている』という感じだったんですが(笑)。その面談を終えて、『この子たちには好意を持てる』と思ってくれた。そして一緒に最初の映画を作りました。信じる理由もないうちから信じてくれていました。ライランド・グレースを信じる理由がまだない状況で信じるストラットの姿と重なります。お互いのことを信じることは、とても力になります。肘でそっと背中を押してもらうことで、相手の可能性を想像できるようになるのです」
ザンドラ「一つ忘れないでほしいのですが、これはとにかく超絶スリリングな冒険映画なんですよ。初めて映画を見た時、席から浮き上がるくらい興奮して、スクリーンに向かって叫んでいました。こういうことも全部事実ですが、同時にものすごくおもしろい。それも大事なことです」
取材・文/平井伊都子
