ロッキーとの友情、カラオケシーン誕生秘話も。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』奇跡の舞台裏をライアン・ゴズリングらクルーが明かす
SF映画『オデッセイ』(15)の原作者として知られる作家アンディ・ウィアーの同名ベストセラー小説を映画化した『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が公開中だ。『LEGOムービー』(14)や『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズの脚本・製作でも知られるフィル・ロード&クリストファー・ミラーが監督を、主人公のグレース役、そして製作には『ラ・ラ・ランド』(16)、『バービー』(23)のライアン・ゴズリング、共演には『落下の解剖学』(23)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたザンドラ・ヒュラーを迎えた。
宇宙船の中で昏睡から目覚めた中学の科学教師のグレース(ライアン・ゴズリング)は、記憶を取り戻すにつれ、太陽のエネルギーが奪われ滅亡の危機に瀕した地球を救うために宇宙へと送り込まれた自身の使命を知る。もう一人の主役とも言えるのが、異星人“ロッキー”。地球を救う使命以外全く共通点のない者同士が、科学を共通の言語にして難題に立ち向かい、かけがえのない友情を育んでいく。
“ヘイル・メアリー”とは、アメフト用語で「絶体絶命の局面に、奇跡を信じて投げる最後のパス」を意味する。その名を冠した本作の公開直前、主演のゴズリングをはじめ、ザンドラ・ヒュラー、フィル・ロード&クリス・ミラー、アンディ・ウィアー、プロデューサーのエイミー・パスカルら豪華なキャストとスタッフが集結したグローバル記者会見を現地取材。その模様をロングレポートでお届けする。
※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。
「ある映画を観た時、どんな時代の自分だったかと結びつく作品がある。この作品にはその可能性がすべて備わっていました」(ゴズリング)
―― 今作に出演を決めた理由を聞かせてください。
ライアン・ゴズリング(以下、ゴズリング)「原作を読んだ時、アンディが瓶の中に雷を閉じ込めたような作品を書いてくれた、と瞬間的にわかりました。読んだのは、映画館も製作現場も閉まっていた時期でした。そんななかに、信じられないほど胸に迫る、楽観的な感覚が舞い降りる感じがしたんです。未来を恐れるものとしてではなく、解決すべき問題として捉える視点が非常に斬新で、『これしかない』と思いました。誰しも、ある映画を観た時、その時自分がどこにいて、どんな時代の自分だったかと結びつく作品がある。この作品にはその可能性がすべて備わっていました。あとは自分が台無しにしないようにするだけ。そのためには、考えうる限り最高のチームが必要でした。いま、ここにいるドリームチームが集まったのはそういうわけです」
――そこから、フィル・ロードとクリス・ミラーが監督として参加したのはどのような経緯だったのでしょうか。
エイミー・パスカル(以下、パスカル)「ライアンとこの企画について最初に話した時、彼はヒソヒソ声でこう言ったんです。『クリスとフィルを口説けると思う?』って(笑)。あの2人のすごいところは、スリリングな冒険の旅に観客を連れていきながら、常に映画を人間の物語として成立させる力があることです。この映画は笑えて、かつエンターテインメントとして機能しなければならない。でも同時に、世界をより良い場所にしようとする映画でもなければならない。そのどちらも実現できる監督は、この2人以外にいなかった。私はクリスとフィルと20年間一緒に映画を作ってきて、2人の尽きることない好奇心と持久力がわかっているから、この3人こそが共にこの映画を作るために存在していたのだと思っています」
「私たちの仕事の原動力は“対話”」(ロード)「どんな相手とでも、ライアンには人とつながる力がある」(ミラー)
――監督お2人にお聞きします。グレースとロッキーの友情をどう描きましたか?
フィル・ロード(以下、ロード)「私たちの仕事の原動力は対話だと思っています。昨日、ジェット推進研究所(JPL、NASAの研究機関)に伺ったのですが、彼らが生み出しているのは衛星ではなく、クリエイティブな人々と科学者たちの間で交わされる対話なんです。映画の撮影現場も同じです。このすばらしいプロデューサー陣がいるのは、アーティストや俳優、各部門のトップたちの対話を生み出すためであって、それが全員の創造性を高め合っているのです。スクリーンに映しだされるのは、多くの才能ある人々が一緒になにかを考えた成果です。この映画がすばらしいのは、2人の人間がとても困難な問題に向き合い、地球上では多くの人々が力を合わせ、その力がいかに大きなものをもたらすかを描いているところにあります」
クリス・ミラー(以下、ミラー)「ライアンがすばらしい俳優である理由の一つは、どのシーンでも共演する相手とのつながりを求めているからだと思います。ザンドラとのシーンでは、2人がお互いから刺激を受けてなにか新しいものを生みだしているのが感じられました。撮影現場でロッキーの主要パペッティアであり声を担当したジェームズ・オルティスと共演した時も、ライアンとジェームズは互いに刺激し合っていました。この岩のような生き物とのつながりを常に探し続けて、どんな相手とでも、ライアンには人とつながる力がある。その相手を敬意と愛情をもって引き寄せる。それがスクリーンに映しだされています」
――主人公を「ごく普通の人」として設定しながら、人類を救う使命に就かせようとした理由を教えていただけますか?
アンディ・ウィアー(以下、ウィアー)「ほとんどの人は自分を特別な存在だとは思っていないからです。本を書く時、読者に主人公と同一化してもらいたい。だから『(グレースは)自分と同じような普通の人間だ』と思える主人公を作りたかったんです。『こんな状況は絶対に嫌だ。どうしたらいいかわからない。すごくぎこちなくて居心地が悪い』と感じてくれる人物を作りたかった。映画でも同じ体験をしてほしいんです。ぎこちなく、居心地が悪く、怖いと感じてほしかった」
――ストラットのカラオケシーンはどのように生まれたのですか?
ザンドラ・ヒュラー(以下、ヒュラー)「出演を決めた時にカラオケシーンがあるとは知りませんでしたが(笑)」
ゴズリング「空母での撮影中、廊下の向こうから天使の歌声が聞こえてきたんです。まるで天国から蜜を注ぎ込まれているような音で。音をたどって行ったら、ザンドラが歌っていた。『そんなに歌えるの?』と言ったら、『うん、まあね』という感じで(笑)。『この映画の中で歌っていただけませんか』とお願いしたんです。ザンドラがハリー・スタイルズの曲を選んでくれて、それが映画のマーケティングキャンペーン全体の核になりました。あの曲がこの映画の精神とエネルギーと魂そのものを体現していました」
ヒュラー「私はずっと、携わるすべての映画にカラオケシーンを入れるのが隠れた計画だったんです。あんなにぴったりはまる曲を見つけられたことも含めて、本当に楽しかったです」
