韓国を“ミチゲッタ”させた『セカコイ』の系譜――『君が最後に遺した歌』が描く“記憶と歌に刻まれた純愛”
韓国の観客の心を鷲掴みにした『今夜、世界からこの恋が消えても』
道枝にとっては『セカコイ』の時よりも成長した姿を見せられるかどうかが、本作『きみうた』の課題だったという。それだけ『セカコイ』が、彼にとって大きな作品であることが容易に推測できる。
道枝と福本莉子共演の『今夜、世界からこの恋が消えても』、通称『セカコイ』。新しい記憶が蓄積できず、眠るたびに記憶がリセットされてしまう難病、前向性健忘のために手帳や日記、スマホへの記録が欠かせない女子高生と、彼女が記すその日の記憶を幸せな体験で埋めようと支えながら重大な秘密を抱えている同級生の男の子のせつない純愛を描き、日本はもとより韓国では邦画実写映画の歴代2位となる125万人を動員した。特に道枝の圧倒的な清潔感や透明感が評価され、彼の名前と、“おかしくなりそうなくらいの感情”を表す韓国語の「ミチゲッタ」をもじって、「ミチゲッタシュンスケ」ブームを引き起こした。道枝は日本でも人気の韓国スキンケアブランド「numbuzin(ナンバーズイン)」のブランドアンバサダーに就任するなど、影響力は絶大。ロケ地となった藤沢市に観光客が訪れるなど、いまだに反響を呼んでいる。
韓国に舞台を移したリメイク版も大好評
日本では2月からNetflixで同名タイトルの韓国版の配信がスタート。リメイク版にはチュ・ヨンウ(「トラウマコード」、「オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-」)、シン・シア(「いつかは賢いレジデント生活」)が出演。藤沢市と同じように海に面した、韓国南部の麗水市が舞台になっている。ストーリーの大筋は変わらないが、主人公の姉が登場せず、ミステリー要素がなくなった韓国版は主人公の悪友が加わり、時系列通りに進行するストレートな青春映画。しっとりとした日本版と違って、コミカルな要素があり、緩急がはっきりした印象を与える。その分、伝わりやすく、胸が熱くなる展開が随所に見られるのはさすが韓流。主人公たちが制服を着ているのもノスタルジック。もちろんクライマックスの花火大会は日韓どちらも最上級の見せ場である。
Netflixではオリジナルの『セカコイ』も配信中。日韓の『セカコイ』の見比べ、あるいは『セカコイ』からの『きみうた』で、“ミチゲッタシュンスケ”の軌跡をたどるのも一興かも。
文/高山亜紀
