韓国を“ミチゲッタ”させた『セカコイ』の系譜――『君が最後に遺した歌』が描く“記憶と歌に刻まれた純愛”

コラム

韓国を“ミチゲッタ”させた『セカコイ』の系譜――『君が最後に遺した歌』が描く“記憶と歌に刻まれた純愛”

国内興行収入15.3億円、観客動員数120万人を記録。道枝駿佑にとって、初めての主演映画であり、ターニングポイントとなった『セカコイ』こと『今夜、世界からこの恋が消えても』(22)から4年。監督の三木孝浩、原作の一条岬、音楽の亀田誠治、主演の道枝という「セカコイ」チームが再び集結した映画『君が最後に遺した歌』(『きみうた』)が公開中だ。道枝とは初共演となる生見愛瑠がヒロインを演じ、共に歌を作ることで、互いになくてはならない存在となっていく2人の10年にわたる運命の恋を描く。

どこか欠けた2人が紡ぐ、10年にもおよぶ純愛物語『君が最後に遺した歌』

人知れず、詩を作ることを趣味にしていた高校生の水嶋春人。だが、ミステリアスなクラスメイトの遠坂綾音にその才能を知られてしまう。音楽が好きな彼女は春人に自分の曲に歌詞を付けてほしいとリクエスト。彼女は文字の読み書きをすることが難しい症状、発達性ディスレクシアを抱えていた…。両親を事故で亡くし、育ててくれた祖父母のために公務員を目指し、代わり映えのしない日常を送る春人と、文字が読めないコンプレックスから人との距離を測りかねていた綾音。夢のない主人公と言葉のないヒロイン。共に自分にないところを補い合うような2人の人生は、出会いをきっかけにそれぞれの思惑とは裏腹に大きく動きだす。

【写真を見る】「セカコイ」チームが“歌をつくる2人”の10年間を描く『君が最後に遺した歌』
【写真を見る】「セカコイ」チームが“歌をつくる2人”の10年間を描く『君が最後に遺した歌』[c]2026「君が最後に遺した歌」製作委員会

今作で満を持して、初の映画単独主演を果たした道枝は、綾音に思いを寄せながら、彼女の華やかな将来のために自分の気持ちを抑え込む内気な春人を好演している。生見と共に高校時代とその10年後を演じるという難題に挑戦。10代最後の『セカコイ』で才能を開花させた道枝が、20代最初の『きみうた』で見せる大きな成長に注目が集まる。生見は綾音を演じるにあたり、音楽プロデュース、亀田のもとでおよそ1年半にわたるボイストレーニングとギターレッスンに尽力。初めてとは思えぬ見事な歌声は、綾音の才能を目の当たりにした春人の複雑な心境をリアルなものへと押し上げている。

『君が最後に遺した歌』で映画単独初主演を飾る道枝駿佑
『君が最後に遺した歌』で映画単独初主演を飾る道枝駿佑[c]2026「君が最後に遺した歌」製作委員会

『アオハライド』(14)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)など数々の恋愛映画を手掛けてきた三木監督ならではの抒情的で美しい映像は今回も期待を裏切らない。誰もいない放課後の教室で、自分たちだけがわかる暗号を使って曲作りする2人の夢のように儚く尊い日々。綾音が春人の詩をメロディに乗せて歌って見せ、やがて世界の扉が開く。彼らにとっての忘れ得ぬ日々が観客の心にリフレインするように響き渡る。

『セカコイ』ではヨルシカが初の実写映画主題歌として書き下ろした「左右盲」が世界観を一気に押し上げたが、今回は音楽アーティストのストーリーだけあって、劇中歌から容赦なく感情を揺さぶってくる。特に印象的なのは綾音が会えなくなった春人に思いを寄せ、歌い上げる劇中歌「春の人」。ステージで涙ながらに歌うアーティスト“Ayane”とその姿を目撃したことで、あふれ出る春人の10年にわたる思い。互いに心を震い合わせる、2人の音楽のような芝居は本作ならではの見どころだ。


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