「愛の不時着」を経て『しあわせな選択』で7年ぶりに映画復帰! “国民の初恋”から深化し続けるソン・イェジンの軌跡
年下男性と恋に落ちる等身大の30代女性や禁断の相手を愛してしまう孤独な財閥令嬢を好演
2018年に放送されたドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」では、数々のラブストーリーのヒロインを務めてきた真価を発揮。若手トップ俳優チョン・ヘインとの共演で、年の差カップルの恋愛をリアルに見せた。イェジンが演じたのは、仕事も恋もうまくいかない日々を送っていた女性ジナ。職場ではパワハラ上司との関係に悩み、家では母親から早く結婚しろと責められている等身大の女性を好演した。幼い頃から親しくしてきた親友の弟を恋愛対象として意識し、本気で愛するようになっていきながら感じる戸惑いと喜びを繊細に演じているのに加え、親友や会社の同僚たちなど、いまを生きる様々な女性たちとの関係も丁寧に見せている。
コロナ禍の不安のなかで放送&配信され、韓国ドラマの力を改めて感じさせた「愛の不時着」は、イェジンにとってもキャリアの集大成ともいえる作品となった。演じたのは、財閥家に生まれ、自身のファッションブランドを率いる女性ユン・セリ。南北の境界近くをパラグライダーで飛行中に突風に巻き込まれた彼女は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に不時着して通りがかった軍人リ・ジョンヒョクに助けられ、韓国に戻るまで彼の家で過ごすことになる。ドラマ全体のほぼ半分が北朝鮮で展開するラブストーリーという斬新な設定のなか、経済的には恵まれていたものの、人の優しさを知らずに生きてきたセリが、ジョンヒョクだけでなく、彼の部下や村の人々と温かく交流していく。前半ではまったく違う環境にやってきて戸惑うセリをコミカルに演じて笑わせ、ジョンヒョクとの愛が深まるにつれせつない演技で涙を誘うイェジンがいたからこそ、このドラマが成功したことがよくわかる。寡黙ながらもさりげない優しさを見せるジョンヒョク役のヒョンビンも完璧だった。2人は2022年に結婚し、一児の両親となっている。
最新作『しあわせな選択』では失業した夫を支える妻役に!
結婚、出産で現場を離れていたイェジンが7年ぶりの映画出演作として選んだのが、ハリウッドでも活躍するパク・チャヌク監督の新作『しあわせな選択』。突然のリストラによって崖っぷちに追い詰められた夫マンスが家庭を守るため連続殺人を目論むという驚きの物語のなかで、家族を支える妻ミリに扮している。シングルマザーだったミリは、幼い息子を抱えてマンスと結婚。2人の間には娘も生まれ、一家4人で幸せに暮らしていたが、夫が失業。ミリは家計を切り詰めるため、テニスやダンスといった趣味を諦め、歯科医院での仕事を再開する。自分に隠れて不審な行動をしている夫を見守り、落ち着いて事態に対応する姿が印象的だ。チャヌク監督独特のユーモラスなセリフも軽々とこなしている。
昨年、ワールドプレミア上映された釜山国際映画祭では「ミリは現実的なキャラクター。自然な姿を見てもらえたら」とキャラクターを説明。実際に母親となったことで、2人の子を持つ母親役も「ぎこちなくは見えないだろう」と信じながら演じたと振り返った。初共演ながら抜群のコンビネーションを見せたマンス役のイ・ビョンホンについては「カメラの前で力を抜いて演技していたのが印象的。私もそうなりたい」と絶賛。一方、日本公開に合わせて来日したビョンホンもイェジンについて「出来上がった作品を見て、すごく細かい感情まで逃さず演技していたことに気付き、本当にすばらしい俳優だと感じた」と語っていた。
釜山国際映画祭で行われたトークイベントで「20代の時は早く歳をとって成熟した演技がしたかった。当時は演技しかなかったし、人生を楽しんだこともなかった。でも、その時期があったから、いま、ここで話せている」と、自身の歩みについて語ったイェジン。スターのオーラを常にまといながらも、果敢に新しい役柄を開拓してきた彼女のこれからが、一層、楽しみだ。
文/佐藤結

