【ネタバレあり】笑いのための血しぶきに嘔吐…初心を忘れないサム・ライミ監督最新作『HELP/復讐島』をレビュー

【ネタバレあり】笑いのための血しぶきに嘔吐…初心を忘れないサム・ライミ監督最新作『HELP/復讐島』をレビュー

絶海の孤島に流されサバイバルを余儀なくされる者たち…。
古くはリナ・ウェルトミューラーの『流されて…』(74)やロバート・ゼメキスの『キャスト・アウェイ』(00)、最近ではリューベン・オストルンドの『逆転のトライアングル』(22)等々、そんな映画はこれまでたくさんつくられてきた。複数の人間がサバイバルする『流されて…』や『逆転のトライアングル』では、文明社会での立場が逆転し、使用人が王となり、雇い主が従者(というか奴隷?)になる。サム・ライミの4年ぶりの監督作『HELP/復讐島』(公開中)もそのジャンルに数えられ、同様のパターンを踏んではいるのだが、そこはライミ。数多の作品とは一線を画する“らしい”出来栄え。笑えて怖くて驚かされるサバイバルホラーになっている。

※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

孤島では財力は無意味!爽快感を生み出すクソ上司の転落

主人公は大手コンサル会社に勤める向上心も人一倍のリンダ。ライミの前作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(22)に続くキュートなレイチェル・マクアダムスが演じていることで、こんないい子が邪悪な上司に搾取され虐げられるんだと思ってしまいそうだが、そうはなっていないのだ。このリンダ嬢、上司が嫌がるのもわからんでもないキモい系の女子。話し相手はペットの小鳥だけで、本棚は自己啓発本ばかり。家にも会社のデスク周りにも自己啓発ワードをペタペタと貼って常に自分を鼓舞している。ファッションには無頓着、縁起担ぎらしい靴はボロボロ。食べかすがほっぺにつきっぱなしでもお構いなしで、会社ではひとり浮きまくり。ライミはそんな彼女を得意の大胆アップや動き回るカメラワークで次々と捉え、その変人っぷりを強調する。

趣味はアウトドアのコンサル会社で働く会社員、リンダ
趣味はアウトドアのコンサル会社で働く会社員、リンダ[c]2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

リンダはしかし、数字には滅法強く仕事ができるので出世も約束されていたのだが、その社長が亡くなり息子ブラッドリー(ディラン・オブライエン)が跡を継いだことで冷遇されてしまう。それも悔し涙に暮れるほどの意地悪な言葉と方法で、この無能で俗物としか思えない若造に!


ところが、リンダも同行するタイに向っていたプライベートジェットが上空で大爆発。これまでリンダをいじめ笑い者にしてきた上司や同僚たちが次々と夜空の彼方に飛んで行く!その悲惨な様をライミは得意の過剰演出の連続とホラーテイストで表現するので笑いがこぼれ、観ているほうは痛快な気分になる。

無人島では権力・財力はまったく役に立たない
無人島では権力・財力はまったく役に立たない[c]2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

かくて南海の孤島に漂着するのは、リンダとブラッドリーの2人だけ。サバイバル番組への出演が夢だったリンダが主導権を握り、大怪我をしているうえにそんな能力皆無のブラッドリーは彼女に従うしかなくなる。リンダのサバイバル能力はあらゆるシチュエーションで活かされまくり、文明社会ではあんなに冴えなかった彼女が俄然、輝き始める。一方、ブラッドリーは動くことすらできないのに、相変わらずの横柄さだが、それがこの世界では通用しないことを身をもって知ることになる。

見事なほどの逆転っぷり。リンダはクレバーな頭脳をもっているにもかかわらず文明社会ではサバイブできなかった女性だ。このブラッドリーのように、処世術と権力と財力がある者が生き残るのが現代の資本主義社会だが、孤島ではそんな財力はなにも生まず、生命力とサバイバル能力だけが命を保証してくれる。その大逆転が本作のおもしろさのひとつ。クソ上司の転落は爽快感を生んでくれる。

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