AI裁判はフィクションで終わらない?“起こり得る未来”が描かれる『MERCY/マーシー AI裁判』をレビュー
ここ数年、あらゆるジャンルの話題でトピックに上がる「AI」。もはやその2文字を目にしない日はないくらい、われわれの日常に浸透してきた。そしてその進化は、予想を超えるスピードを遂げている…。当然ながら、映画でもAIネタは急増中。ハリウッドではAIの俳優に演技をさせるべきかという論戦が沸騰しているし、全世界レベルで全編、生成AIのみで製作された映画も次々と誕生している。そのAIの未来を示す意味で、最高の見本になりそうな1本が『MERCY/マーシー AI裁判』(公開中)だ。
敏腕刑事が被告人に!?予想外の展開に引き込まれる
AIが司法を任されるようになった近未来。事件の容疑者は、“マーシー裁判所”でAIの裁判官によって有罪/無罪が決められる。本作のこの設定は一見、奇抜であるようで、じつはAIの最も有効な使われ方かもしれない。人間の裁判官の場合、どんなに客観的かつ統計的、冷静に判決を下したとしても、そこに個人の感情が影響することは、完全にゼロにはならないからだ。情状酌量(英語でMercy=マーシー)のように、被告への同情が加味されるケースもあるはず。それならば人間の感情は基本的に有しないAIのほうが、より正確な判断ができるに違いない。劇中でも「人は必ず嘘をつく」と鋭く指摘するセリフがある。その意味で本作は“起こり得る未来”の風景として説得力満点だ。観ているわれわれもSF的な非現実世界とは感じにくく、その発想にまず感心してしまう。
『MERCY/マーシー AI裁判』の主人公は、刑事のレイヴン。妻を殺害した容疑でマーシー裁判所に拘束されたのだが、皮肉にもAI裁判官を誕生させるきっかけを作ったのが、レイヴンが担当した事件だった。自らが道を切り拓いたAI裁判で、まさか被告になるとは…。このあたりがサブプロットとして重要な意味を持つのも、映画的なおもしろさである。
