ついにMrs. GREEN APPLE「フェーズ2」完結へ――活動の表と裏を対で描く『FJORD』と『THE ORIGIN』、あなたはどっちを先に観る?
ライブフィルム『FJORD』がミセスの表舞台を描いたものだとしたら、ドキュメンタリー『THE ORIGIN』はその裏側を描いた作品。どちらを先に観るかで、見え方が変わってきそうな2作品。観る順番さえもミセスのエンタテインメントとして楽しむことができる。
『FJORD』→『THE ORIGIN』:「完成形」の熱狂を浴び、その裏にある物語を知る
『FJORD』が、ミセスのライブ初体験となる人も多いだろう。そんな人はきっと、本作を観て一瞬で彼らの虜になってしまうはず。サービス精神たっぷりのトーク、ノルウェー語で「入り江」を意味する“フィヨルド”を模したセットには滝が流れ、水も噴きだす。バブルやファイヤーボールなど演出も実に多彩だ。セットリストも「コロンブス」、「breakfast」、「ダンスホール」、「ライラック」といったヒット曲が満載のうえ、10周年になぞらえてデビュー当時の懐かしいナンバーも披露されるなど、新旧のファン誰もが楽しめる内容。そんなライブの中盤に予告なく披露されたのが、この日のために書き下ろされた新曲「Variety」で、ミセスらしいポップさと10年の思いが詰め込まれている。
この曲が生まれるまでには、どんな物語があったのか。ドキュメンタリー『THE ORIGIN』では、制作スタジオでコンピュータに向き合う大森が、打ち込んだり楽器を弾いたりする様子など、実に貴重な制作風景が収録されている。また「FJORD」の裏側の様子も収録されており、彼らの姿を見ると、もう一度『FJORD』を観たくなってしまうだろう。
『THE ORIGIN』→『FJORD』:制作のリアル、葛藤を知り、想いが爆発する瞬間を目撃する
前述の順番が、ライブフィルム『FJORD』で虜にして『THE ORIGIN』でさらにその沼へと引きずり込むものだとすれば、『THE ORIGIN』→『FJORD』という順番は、犯人を先に知ったうえで、そのトリックの妙を楽しむ推理小説のようなものかもしれない。
『THE ORIGIN』は、インタビューの内容もこれまでの活動を振り返ったものや、お互いについて、なんのために音楽をやっているかなど多岐にわたる。イタリアでジェラートを食べているシーンも必見だ。
またリハーサル映像では、大森が若井や藤澤を追い込みながらクオリティを高めていく様子が収録されている。ライブフィルム『FJORD』ではリハーサルでやっていた曲の演奏シーンもあり、思わず「よく頑張ったね!」と拍手を送りたくなる。いかにして「Variety」が生まれたのか、「FJORD」というライブが完成されるまでにはどんな苦労と研鑽があったか。それを知ったうえで、ライブフィルム『FJORD』を観れば、その感動もひとしおだろう。
ステージでスターとして輝く完成されたミセスの姿を捉えた『FJORD』と、ミセスの“人間”という部分に踏み込んだ『THE ORIGIN』。表と裏という対照的な2つを観ることで、「Mrs. GREEN APPLE」という存在を多角的に理解できるはず。Mrs. GREEN APPLEとは何者なのか。「フェーズ2」で彼らがやりたかったこととは。「フェーズ2」の集大成として楽しみ、来年の「フェーズ3」に期待が高まる2作品である。
文/榑林史章
