miss A以外も名曲揃い!『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』を彩った韓国の人気アーティストたちの劇中曲を深堀り
自由奔放に生きる女性ジェヒ(キム・ゴウン)と孤独なゲイの青年フンス(ノ・サンヒョン)の13年にわたる友情を描いた『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』(公開中)。共感度の高いストーリーはもちろんだが、終盤のシーンに流れるmiss Aの「Bad Girl Good Girl」など、音楽に心動かされた観客の声も多く見受けられた。本作の音楽監督はイ・オニ監督たっての希望で、ドラマ「D.P.ー脱走兵追跡班ー」などに参加したPrimaryが務めた。ジェヒやフンスの感情に寄り添い物語を盛り上げる、気鋭アーティストたちが手掛けた劇中曲の一部を解説していこう。
ジェヒとフンスの同居生活の始まりを祝うハッピー チューン「Friends」
「Friends」はJihae Kimm(キム・ジヘ)が初めて公式に世に出したと思われるオリジナル曲「Friends」。本人名義のInstagramやYouTubeで公開している動画や画像を確認すると、彼女はどうやらバークリー音楽大学に奨学金で入学した才媛らしく、プロのコンポーザーになったばかりといった感じだが、2025年は「隠し味にはロマンス」や『あの星に君がいる』など注目のドラマ・映画のOSTに参加している。「Friends」は、ジェヒとフンスがルームメイトになることを決めたときに流れるレトロなシンセポップ。印象に残るメロディーを書く力がありそうで、Primaryはその点を評価して採用したのではないだろうか。
ジェヒの恋心を表現した「La Danse De La Joie」
幸福感あふれる3拍子のラブソング「La Danse De La Joie」は、ジェヒがつかのまの恋に揺れる場面に挿入される。キュートな歌声を響かせているのは、女性シンガーソングライターのSTELLA JANG(ステラ・チャン)。2014年にデビュー後、たおやかで清潔感のあるボーカルとソフト&メロウなサウンドで韓国のインディーズシーンに新風を吹き込んだ。歌詞はフランス語で書かれており、メロディーラインや演奏は古き良き時代のシャンソン風だが、実は彼女、中学1年生のときに単身でフランスへ渡り、11年ほど現地で暮らしたことがあるという。本格的なムードが漂っているのも納得できる。
ジェヒとフンスの悩める心情を歌った「What Love Looks Like」
夜中に走る電車の中、ジェヒとフンスは“本当にこのままでいいのか?”と思い悩む。そんなシーンのBGMとして流れるのがこの曲である。甘くささやくような歌唱で、〈愛とはどんなものか教えてほしい/愛がどんな姿なのか見せてほしい〉と静かに訴える。映画を観る人たちを夢の世界へと誘う幻想的なトラックだ。『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』で使用されているDie Boyが手掛けた3曲は、基本的にサウンドメイクからアレンジ、楽器演奏までPrimaryがサポートしているようだが、この曲だけは作詞・作曲・演奏のすべてをDie Boyが1人でやっている。それゆえに彼の美学が最も鮮明に表れていると言えよう。
サブスクで聴き直してほしい「Sigh」
アーティスト名のmeegoはMe(私)とEgo(自我)を合わせたもので、“自分が好きなことを好きなだけやりたい”という意思表示だろうか。詳細不明な男性シンガーソングライターだが、2016年から自作曲をコンスタントに出しており、最近は映画・ドラマのサウンドトラックの制作に専念しているようだ。余白の美を生かしたサウンドで持ち味を発揮するタイプで、音作りにおいてはDie Boyと共通する点が多い。叙情的なフォークソング「Sigh」は、ジェヒが交際相手と話し合うために入った喫茶店でBGM風に流れている。映画での音量は小さめなので、サブスクなどで歌声を聴いてもらいたい。
観客に深い余韻を残すエンド曲「Prologue」
エンドロールで流れる浮遊感のあるバラード「Prologue」を手掛けたのは、男性アーティストのCloud koh(韓国語の読み方はクルム)。ロックバンド・Bye Bye Badmanで音楽活動を始めた彼は、2011年に参加したユニット・CHEEZE(当初は4人組だったが、現在はオリジナルメンバー・ダルチョンのソロプロジェクト)でプロデュースの才能が開花。2018年頃から女性シンガーソングライターのペク・イェリンと共に質の高いポップスを量産していった。2024年にサウンドプロダクションを設立したのを機に再出発。ソロ歌手としての魅力をアピールするべく、本作に曲を提供したようだ。
人気シンガーSAM KIMが手掛けた「Playing pretend」
フンスが爽やかな笑みを浮かべるラストシーンによく似合う洒落たナンバー。英語の歌詞の一部〈すべてがシンプルで明らか/私たちは生きる、そして何かを学ぶ〉が、ジェヒとフンスのこれからの人生のテーマのように感じられる。ボーカルと曲作り(Primaryと共作)を担当した男性アーティスト・SAM KIMは、1998年生まれの韓国系アメリカ人。15歳のときに参加した韓国のオーディション番組「Kポップスター シーズン3」で才能を見いだされ、プロの道へ。ソウルフルなギター演奏や情感あふれる歌声、幅広いジャンルを取り入れたクセのあるサウンドメイクで人気を集めている。
物語と完璧にマッチする楽曲の数々を改めて注目してほしい。本日7月18日からはTOHOシネマズ シャンテでも上映が開始した本作、すでに鑑賞済みの方も音楽にフィーチャーして再度楽しんでみてはいかがだろうか。
文/まつもとたくお