『脱走』イ・ジェフン&ク・ギョファン、映画館で日本のファンと対面「夢が実現した。とても幸せ!」と感激
映画『脱走』(6月20日公開)の公開直前ジャパンプレミアイベントが6月17日に新宿ピカデリーで行われ、来日を果たしたイ・ジェフン、ク・ギョファン、イ・ジョンピル監督が出席した。
軍事境界線を警備する、北朝鮮の部隊にスポットを当てた本作。まもなく兵役を終える軍曹ギュナムは、自由を求め韓国への脱走を計画。軍事境界線を目指して決死の脱出を試みるが、予期せぬ困難が立ちはだかる。「シグナル」「復讐代行人~模範タクシー~」で人気を博したイ・ジェフンが、命がけの脱北を試みる軍人のギュナム役を。主人公を容赦なく追撃する軍少佐ヒョンサン役を、「D.P. -脱走兵追跡官-」のク・ギョファンが演じる。まずはイ・ジョンピル監督がステージに登場。キャストが「いない、どこだ?」とざわつくなか、イ・ジェフン、ク・ギョファンは会場の中扉から姿を現し、客席の間を通ってステージに上がった。思わぬサプライズに、イベントは冒頭から大盛り上がりとなった。
イ・ジェフンは「初めまして。私はイ・ジェフンです。よろしくお願いします」と日本語で挨拶。「撮影やファンミーティングでは頻繁に訪れていたんですが、映画の公開にあわせて舞台挨拶で日本に来るのは初めて。この日を指折り数えていました。このように劇場で皆さんとお会いできてうれしいです」と会場を見渡し、「とてもワクワクしています。いま夢を見ているようです」と感激しきりだった。
「皆さん、こんにちは。お会いできてうれしいです。ありがとうございます」と日本語でお礼を述べたク・ギョファンは、「映画を作っている時には、多くの観客の皆さんにお会いしたいという気持ちで撮っています。今日は日本の観客の皆さんにご挨拶できて、本作をお届けすることができて光栄に思います。皆さんにとっても、ステキな時間になるとうれしいです」とメッセージ。イ・ジョンピル監督は「この映画は疾走感があって、スピーディに展開します。楽しんでいただければと思います」と上映前の会場に呼びかけていた。
映画のタイトルにちなみ、「撮影でつらかったシーン。脱走したくなったようなエピソード」に話が及ぶと、イ・ジェフンは「本作では、ある場所から抜け出すための瞬間が描かれています」と映画の内容を紹介。
「とにかくずっと走り続けている」ような役どころだと語り、「撮影中は、このまま息が止まってしまうのではないかという瞬間がありました。まるでずっと自分の限界を試しているよう。劇中では捕まってしまうことは死を意味するので、生きるために走り続けていたんです。撮影するために車が追いかけてくるわけですが、それに負けないように全速力で走って。ただ、車よりも速く走ることは難しいことです」と体力的にも大変な撮影になった様子。「極限、限界に挑戦しながら走っていました。その時の感情がこの映画には込められていると思います。あんなに息が止まりそうな想いを抱えながら走ることは、この先にあるのだろうか。そう考えると、この『脱走』という映画はこんなふうに全力疾走した作品としては、僕にとって最後になるのではないかと思っています」というほど、全身全霊を注いだという。イ・ジェフンが自分の限界に突破している一方、ク・ギョファンは「私は車のなかで撮影をしていました。その瞬間はあまりにも申し訳なくて、つらかったです」と恐縮しながら語り、イ・ジェフンと会場の笑いを誘っていた。
終始、日本への愛を傾けていた登壇者陣。イ・ジェフンは「昨年は撮影で静岡に行きました。今年は福岡、長崎、奈良も訪れた」と回想。「撮影や仕事でつらくなった時には、いつも日本のことを考えていたように思います。これからも日本を訪れたいなと思っているんですが、私にとって日本はパラダイスのような場所です。どこに行っても楽しめると思う。なぜなら日本にはコンビニがあるからです」とお茶目に微笑んだ。ステージには本作を気に入っているという俳優の竹中直人から、「とてつもない疾走感。ジェフンとギョファンのエネルギッシュな芝居に釘付けでした。最高の映画をありがとうございます。もう一度観たいです」とメッセージ映像が届く場面もあった。イ・ジェフンは「近いうちに皆さんにご覧いただけるある作品で、竹中さんと共演をさせていただきました」と告白し、「『Shall we ダンス?』で初めて竹中さんを知って、『のだめカンタービレ』などたくさんの出演作を拝見してきました。いつも竹中さんの演技を観ながら、お腹を抱えて笑ったりしていた。竹中さんは、私たちに喜怒哀楽を伝えてくれる俳優さん」と、憧れの俳優からのメッセージに大感激。共演作の現場は「笑いが絶えない現場だった」と目尻を下げ、「皆さんにも期待していただけたら」とアピールしていた。
会場に手を振ったり、ハートポーズを繰り出したりと、日本のファンとの対面に笑顔をあふれさせていたイ・ジェフンだが、「日本の劇場で、皆さんにお会いできた。私はこの時間を一生忘れることができないと思います」と大切な1日になったとしみじみ。「いろいろな国に行くたびに、その土地の映画館に行くんです。そのたびに、いつかこの映画館で自分の作品が上映されたらどんなにいいだろうかと思っていました。それほど大きな幸せな瞬間はあるのだろうかと思っていましたが、まさにいまその夢が実現しました。とても幸せに思います」と喜びをにじませた。
ク・ギョファンも、「ある場面を映像で記録することがありますが、目で忘れられない瞬間を記録することがあると思います。僕はまさにこの瞬間を記憶して、思い出としてこの1日を残したいと思います。この瞬間を絶対に忘れません」と続いた。イ・ジョンピル監督は「自分の話のように感じてほしい。国籍、イデオロギーを超えて、一人一人の人生は似ていると感じてほしい。幸せを求めながら生きる人たちに関するメッセージを伝えたいと思いました」と本作に込めた想いを口にし、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝