吉沢亮、横浜流星らと作り上げた『国宝』初日舞台挨拶で「冗談抜きで、これまでの役者人生の全てをかけた」と熱い想いを告白!
吉田修一の小説を、『悪人』(10)や『怒り』(16)に続いて李相日監督が映画化した『国宝』(6月6日公開)。その初日舞台挨拶が6月6日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、宮澤エマ、田中泯、渡辺謙らキャスト陣に李相日監督を加えた13名が出席。喝采を浴びつつ、それぞれが本作に込めた想いを語った。
「パレード」で山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞。「悪人」では毎日出版文化賞や大佛次郎賞など数々の賞に輝いた作家・吉田修一の著作の中でも、最高傑作との呼び声が高い「国宝」。吉田自身が、作中の歌舞伎指導も務めた中村鴈治郎の元で3年間、黒衣(俳優の演技をサポートする後見役が着る黒い装束)を纏い、全国の劇場をともに回った経験を活かして書き上げたという本作は、任侠の一門に生まれながらも歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる主人公の50年を描いた、壮大な一代記となっている。
父を抗争の末に亡くし、上方歌舞伎の名門・丹波屋に引き取られ、稀代の女形として脚光を浴びていく主人公・立花喜久雄を演じる吉沢は、公開初日を迎えた今の気持ちを聞かれ、「素晴らしいキャストの皆さんと共に、今日という日を迎えることができました。現場では共演できなかった両親(永瀬、宮澤)や、少年時代の喜久雄と俊介(黒川、越山)ともこうして一緒に舞台に立てて、まさに勢揃いと言いますか。この映画に欠かせない方々とともに、ここに立てていることを本当に嬉しく思います」とコメント。
上方歌舞伎の名門・丹波屋の御曹司として生まれた、喜久雄の親友でありライバルでもある大垣俊介を演じた横浜は、「こうして映画が無事に公開を迎えられることって、当たり前ではないんですよ。なので今は、安堵と感謝の気持ちでいっぱいです。それと監督から、あまり言い過ぎると安っぽく聞こえるからほどほどに…と言われているんですけど、それでも本当に、我々一同、魂を込めて作った作品ですので、一人でも多くの方にご覧いただいて。そうした思いが皆さんの心に届きますと幸いです」と話し、会場を沸かせた。
続けて出演陣が、順に撮影時の思い出や感想を話すなか、吉沢と横浜には「それぞれが演じた役柄の少年時代を担当した黒川と越山に対して、何か一言お願いします」といった話題が振られる。吉沢は実際に、現場で黒川の演技を見たことがあるそう。「ネタバレになるようなことはあまり言いたくないんですけど、彼の演技は本当にすごいですよ。僕自身がインする前に一度、少年時代の喜久雄が登場するシーンの撮影にお邪魔したことがあるんですけど、もう本当に色っぽすぎて。ひと目見た瞬間、“やばいな!”って思いました。それと同時に、“このレベルで少年時代をやられてしまうと、ここからどうやって演じればいいんだ?”という、とんでもないプレッシャーも感じて。メイクさんからもずっと『黒川君やばいね。これ大丈夫?黒川君に負けないように演じられる?』と言われ続けて、あの時はちょっと憂鬱でした(苦笑)。とはいえ、それくらいお2人(黒川、越山)のお芝居は素晴らしくて。土台をしっかり作っていただけたので、それをさらに良いものにしよう…という思いで頑張らせていただきました」と感想を述べた。
一方の横浜は、直接現場では越山と交流できなかったものの、映像などを細かくチェックしてその芝居を研究したそうで、「本当にお2人とも素晴らしかったです。喜久雄と俊介の対照的な部分を丁寧に演じられていたし、特に少年時代の俊介は、愛嬌だったり、放っておけない感じだったり、そういったところがすごくリアルで、生き生きと演じられていたのが印象的でした。彼(越山)の芝居を何度も見させてもらって、少年時代の俊介の意思をそのまま引き継ぐ…ということを心がけて、この役を演じさせていただきました」といった、役作りに関する裏話を聞かせてくれた。
最後に吉沢が「先ほど流星も言いましたが、本作は本当に魂を込めて作り上げた作品になります。1年半もの準備期間を一つの役に込めるというのは、なかなかできない経験ですし、僕は冗談抜きで、これまでの役者人生の全てをかけて、この作品に取り組みました。本当に素晴らしい、至極のエンタメ作品が生まれたと思っていますので、大勢の方にご覧いただいて、ともにこの映画を盛り上げていけたら嬉しいなと思っております。映画『国宝』を、どうぞよろしくお願いします」と締めくくり、会場は万雷の拍手に包まれた。
取材・文/ソムタム田井