京都文化を赤裸々に描く『ぶぶ漬けどうどす』の感想を、映画ファンの“ご当地あるある”体験と共に紹介!「素直であることがいいことなのに、なんだこの異世界は…」
深川麻衣や室井滋らが体現する、人間味あふれるキャラクター
そんな本作で、主演として存在感を放っているのが深川麻衣。主演作『パンとバスと2度目のハツコイ』(17)でTAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞して以降、数々の注目作に名を連ねており、俳優としての活躍が目覚ましい。
本作でも、優しい言葉をかけられてつい調子に乗ったり、女将たちから怒られて目を丸くしたり、はたまた京都愛に耽溺しすぎるホラーな一面を覗かせたり…と、主人公まどかの暴走をコミカルに表現した面目躍如の演技を披露。人間味のある姿には好評が寄せられている。
「深川麻衣さんの、意思のある主人公像が見ていて応援したくなった」(30代・女性)
「一生懸命さが空回りしているところが人間としてリアルだった」(30代・女性)
「どんどん京都にのめり込んで狂っていく姿がすてきだった」(20代・女性)
また「キャストの皆さんの個性があふれていて、展開も早くてまったく飽きなかった」(40代・女性)とあるように脇を固めるキャストも個性派が勢ぞろい。
「笑顔なのにいろいろな感情が見える演技が怖かった」(30代・女性)という老舗扇子屋の女将でまどかの義母の澁澤環を演じた室井滋や、その夫である達雄役の松尾貴史をはじめ、騒動に巻き込まれるちょっと怪しげな不動産屋、上田太郎を演じた豊原功補には「食えない感じの演技がよかったです。本音が見えない食わせ者の表情が名演」(60代・女性)との声が上がり、ベテランたちがさすがの存在感を発揮。
さらに「もう忘れられないほど印象に残りました」(30代・女性)という仕事仲間の莉子を演じた小野寺ずる、「強烈なインパクトと内に秘めた熱い気持ちがよかった」(20代・男性)という風変りな大学教授、中村航役の若葉竜也…と、キャストたちの戯画化された演技のアンサンブルが織り成す人間模様にはクスリと笑わされてしまうことだろう。
冨永監督らしいシュールでリアルな人間ドラマ
そんなキャストたちをまとめ上げているのが冨永監督だ。末井昭の波乱に満ちた人生をユーモラスに描いた『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18)や、ジャズピアニスト南博のエッセイを大胆な手法で映画化した『白鍵と黒鍵の間に』など、リアリティあふれるキャラクターを大胆に表現する人間ドラマを手掛けてきた。
本作でも、京都に対する行きすぎた情熱を抱えるまどかを、おかしくも愛らしい存在として魅力的に描出。そんなまどかと義理の両親との距離感や、夫との関係、ご近所付き合いなど、他人との複雑な関係性、空気感を赤裸々かつコミカルに描いており、身につまされたり、笑ったりと反応も様々だ。
「気まずいシーンがリアルで、嫌な汗をかきました」(20代・男性)
「主人公とお姑さんの対話が全体を通して怖い」(50代・女性)
「人が増えるとより空気の読み合いになるところがおもしろい」(30代・女性)
「京都の女将さんたちの、見た目は落ち着いていつつも、はらわたが煮えくり返る気持ちが伝わってくるシーンが印象的」(30代・男性)
京都の風土とその土地で繰り広げられるおかしな人間模様に「京都に住むのはひと筋縄ではいかないと感じました」(40代・女性)、「京都の『本音と建前』を映画で学んで、もう一度京都に行きたくなる映画」(30代・女性)といった感想が並んでいる『ぶぶ漬けどうどす』。古きよき街並みはもちろん、一見すると面倒だが、それでも人々を引きつけて止まない京都の奥深い文化を、存分に堪能できるはずだ。
構成・文/サンクレイオ翼