ホラーでも盛り上がる大阪コミコン!『MaXXXine マキシーン』など注目タイトルを語り合った「大阪“怖”コン」をレポート
5月2~4日にかけてインテックス大阪で開催中のポップ・カルチャーの祭典「大阪コミックコンベンション2025」(略称:大阪コミコン2025)。5月3日のイベント2日目より、メインステージで行われたおなじみのホラーステージ「大阪コミコン×MOVIE WALKER PRESS HORROR 大阪“怖(こわ)”コン」の模様をお届けするとともに、ホラー関連のトピックも紹介する。
ステージに登壇したのは4名。司会進行も務めるアメコミキャラ系映画ライターの杉山すぴ豊、タレントのRaMu、文筆家・映画評論家の氏家譲寿(ナマニク)、「DVD&動画配信でーた」編集長の西川亮という、ホラーをはじめジャンル映画を愛する者たちだ。
今回の「怖コン」では、「2025年G.W.~期待の新作ホラー」と題して今後注目のホラータイトルを紹介。まずは西川のもと、2025年に公開予定&公開される可能性のあるタイトルをリストアップ。『ブラック・フォン』(21)の続編や「ファイナル・デスティネーション」シリーズの最新作などの海外ホラー、『きさらぎ駅 Re:』(6月13日公開)、『近畿地方のある場所について』(8月8日公開)、『8番出口』(8月29日公開)といったJホラーまで様々なタイプの作品が上がっていた。
その中で特にフォーカスしたのが、『サブスタンス』(5月16日公開)、『ノスフェラトゥ』(5月16日公開)、『MaXXXine マキシーン』(6月6日公開)の3本。1本目の『サブスタンス』では、かつてのトップ女優が美と若さに執着し、禁断の再生医療“サブスタンス”に手を出してしまう。すると彼女の上位互換「スー」が出現し、次第に立場を追われていく恐怖が描かれる。主演のデミ・ムーアがゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受賞(ミュージカル、コメディ部門)、アカデミー賞主演女優賞候補にもなるなど賞レースでも高く評価されている。
予告映像と“怖”コンのために撮られたコラリー・ファルジャ監督からのメッセージを全員で観たのち、西川が「アカデミー賞候補になったという意味でもホラー映画として一つ突き抜けている」と改めてそのクオリティの高さを絶賛。RaMuも「女性の搾取という重いテーマを扱ってはいるけれど、最後にとんでもない展開が待っているので超気持ち良く観られました」と社会性とエンタメのバランスが良かったことを指摘する。これに対し、ナマニクが「そのテーマは逞しさを求められる男性にも当てはまるところも面白い。周囲から求められる人間にならないといけない“呪い”」と誰もが共感できる作品であると説明し、杉山も「どこか『世にも奇妙な物語』にも通じますよね。デミ・ムーアにはアカデミー賞を獲ってほしかった」とお気に入りの作品であったと語っている。
続いては、『ライトハウス』(19)の鬼才ロバート・エガース監督が吸血鬼映画の古典『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)に独自の視点を加え、荘厳な映像美で再構築したゴシックホラー『ノスフェラトゥ』(5月16日公開)。舞台は19世紀、不動産業者のトーマス・ハッター(ニコラス・ホルト)は仕事でルーマニアのトランシルヴァニアにある古城へ向かうことに。その一方、彼の新妻エレン(リリー=ローズ・デップ)は恐ろしい夢と幻覚によって生気を失っていく。古城の主、オルロック伯爵を大阪コミコン2025にも参加しているビル・スカルスガルドが演じている。
杉山が「アーロン・テイラー=ジョンソンさん、ニコラス・ホルトさんとアメコミ作品の面々も出演されています。でも、ビル・スカルスガルドさんはほとんど出てこない」と予告映像の感想を述べると、トークテーマは劇中に登場する吸血鬼のビジュアルに展開。西川は「なかなか斬新でしたね。吸血鬼って紳士的で甘美な、クリストファー・リーが作り上げたドラキュラ伯爵をイメージしますよね」と振り返る。ナマニクは「一般的な吸血鬼って首元から血を吸うところを想像しますけど、(胸元を指しながら)ここから直に吸っていましたね」と衝撃シーンを振り返り、RaMuも「やっぱり怖さを求めるなら醜くないと。今回はこのビジュアルで良かったなと思いました」と同意。本作における吸血鬼像にも期待してほしい。
最後は『MaXXXine マキシーン』。タイ・ウエスト監督による『X エックス』、『Pearl パール』(共に22)に続く3部作の最終章で、過去2作に続いてミア・ゴスが主演を務めている。主人公はハリウッドスターを夢見るポルノ女優のマキシーン。オーディションを経て気鋭監督の新作ホラーの主役に選ばれるが、彼女の回りでは不審な連続殺人事件が巻き起こっていた。やがて私立探偵を名乗る男も現れ、6年前に起きた猟奇殺人事件をちらつかせながら彼女を脅し始める…。アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』(60)などからの影響も感じさせ、ホラーファン必見のタイトルになっている。
杉山は「3部作の最後。こういう落とし込み方かと感動しました。『Pearl パール』での最後のミア・ゴスの表情が怖かったのですが、今回はかわいかったです」とゴス演じるマキシーンのキャラクターが良かったと紹介。RaMuは「『X エックス』、『Pearl パール』を通してマキシーンがどういう子なのか私たちは知っているので、次の展開が楽しみでワクワクしながら観ていました」、西川も「マキシーンがハリウッドスターを目指すという軸になるストーリーがありつつ、ロサンゼルスを謎の連続殺人鬼が震撼させるという別のストーリーもあって、それが最後にきれいにまとまる。過去2作の伏線もきちんと回収されていましたね」と物語構成や演出にハマったと思わず笑顔に。ナマニクはウエスト監督が描こうとしたことに言及し、「ハリウッドの華やかさは虚構なんだよって言いたかったんだと思います。なんとか這い上がろうとするマキシーン自身もそのことがわかっているので、どこまでも突き進む強さがあるのではないでしょうか」と主人公マキシーンの魅力について独自の見解を述べている。
またこの日、ステージでは「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」シリーズの恐怖のピエロ、ペニーワイズ役でおなじみのビル・スカルスガルドによるトークショーも行われた。ペニーワイズや『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(23)で共演したキアヌ・リーブスについて語られたほか、勢揃いしたホラーコスプレイヤーたちと記念撮影をする場面も。ペニーワイズに加えて、「テリファー」シリーズのアート・ザ・クラウン、「ハロウィン」シリーズのマイケル・マイヤーズに囲まれたイレギュラーな状況に感激し、笑顔で楽しんでいた。
さらに、「アダムス・ファミリー」のウェンズデー役でブレイクしたクリスティーナ・リッチのステージも実施。「アダムス・ファミリー」はもちろん、『バッファロー'66』(98)、『スリーピー・ホロウ』(99)など出演作にまつわるエピソードが語られた。そして、こちらのステージにもウェンズデーほかアダムス家の面々に扮したコスプレイヤーたちが集合し、リッチを喜ばせている。
ホラーファンにとっても欠かせない交流の場となっている大阪コミコン。次回の企画にも期待したい。
取材・文/平尾嘉浩