鈴木亮平は“ヘタレな兄貴”をどう演じたのか?役作りの舞台裏を『花まんま』本編映像と共にお届け
第133回直木賞を受賞した朱川湊人による短編集を映画化した『花まんま』(4月25日公開)で、兄妹役で初共演を果たした鈴木亮平と有村架純。このたび、鈴木演じる兄の俊樹が、妹の結婚式の準備に奮闘する本編映像が解禁された。あわせて、どこか頼りない役柄の兄、俊樹役を、より人間味あふれるキャラクターに昇華させた鈴木が役作りについて語ったコメントも到着した。
記憶の濃淡を丁寧に語り分けながら、人間の哀しさや温かさを繊細に織り込む巧みな筆致で評価される作家、朱川の代表作「花まんま」は、ある兄妹の不思議な体験を描いた物語。早逝した両親と交わした約束を胸に、たった1人の妹の親代わりとして大阪下町で生きる熱血漢の兄・俊樹を、シリアスな役からコメディ、アクションまで幅広い役柄をこなし、国際的にもその演技力が高く評価されている鈴木が、結婚を控えながら、ある秘密を抱えている妹・フミ子を、いまや“国民的俳優”とも評される有村が好演。メガホンをとったのは、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)、『そして、バトンは渡された』(21)など、コメディから感動作まで幅広い表現力をあわせ持つヒットメーカー前田哲監督だ。
解禁されたのは、俊樹が、フミ子の結婚式に向けて入念に準備をしているシーンの本編映像だ。映像の冒頭では、俊樹が結婚式のガイドブックを片手に悩みながらスピーチ原稿を何度も書き直し、職場では熱心にスピーチの練習をする姿が映されている。さらに、動画を見ながら新婦入場の歩き方を予習するなど、妹の結婚式に対する俊樹の並々ならぬ想いが詰まったシーンとなっている。
これまで「西郷どん」(NHK大河ドラマ)での西郷隆盛役や、映画『シティーハンター』(Netflix)での冴羽獠役など、強さや責任感を感じさせる役柄を多く演じてきた鈴木。しかし本作では、これまでのイメージを覆すような、どこか頼りなくヘタレながら愛すべき兄の役に挑戦し、新たな一面を見せている。
本作で演じた自身の役柄について鈴木は、「俊樹の印象ですが、ずっと怒っているんですよね(笑)。これをどうやって柔らかくて、妹のことを思いやっているがゆえの人間にしていけるかというところが、自分のなかでの1つのテーマになっていました。兄貴として年上の立場で、言いたいことは言うし、叱るときは叱って、ぶつかる時もあります。でも、結局は可愛い妹に嫌われたくないという兄ならではの絶妙な距離感が、フミ子と俊樹の間にあるんだろうなと想像しながら演じていました」と振り返り、役作りへの想いも明かしている。
また、最終的な結婚式のスピーチ内容は、鈴木が前田監督とプロデューサーに相談して一緒に考えることになったと言う。その点について鈴木は、「俊樹が旅を通して隠された想いを知り、結婚式でスピーチをする場面では、彼がその場で感じたことを言葉にしたほうがいいのではないかと思い、監督やプロデューサーに相談させていただきました」と話し、脚本の変更についても言及している。監督とプロデューサーは、結婚式のシーンは撮影の最後に行うので、俊樹の心情をその時に合わせて考え、言葉にしていきましょうと提案し、鈴木もそれを受け入れたそうで、意見を交わせる現場の雰囲気には感謝の意を示した。
妥協のない役作りと各界から称賛される高い演技力によって、鈴木の新たな一面が垣間見える映画『花まんま』に注目したい。
文/山崎伸子