『サスペリア』『テリファー』、『エイリアン:ロムルス』も!ホラーやジャンル映画と相性抜群の“VHS時代”はなぜ再来?
あの名作ホラーが4KマスターのVHSとして再リリース!
一方日本では、VHS全盛期の1990年代に放送された「新世紀エヴァンゲリオン」のビデオパッケージを再現した「ビデオテープミニチュアチャームコレクション」というガシャポンアイテムが好評を博し、再販されるなど、徐々にではあるがVHS回帰への機運が高まっている。もっとも、日本ではホラー映画のビデオ以上に、アニメ作品に郷愁を抱く人が多いかもしれない。
さらにVHSが劇中の重要アイテムとして用いられた近藤亮太監督の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開中)では、公開直後にSNSで行われた感想投稿キャンペーンで、劇中に登場した“失踪した瞬間が映ったビデオテープ”が抽選で当たるという、作品の世界観を追体験できる試みも行われた。
そして6月4日(水)には、ホラー映画の金字塔として名高いダリオ・アルジェント監督の名作『サスペリア』が、字幕版と吹替版、各500本の数量限定で発売されることも決定している。VHSからDVD、Blu-ray、4K UHDとさまざまな形態で時代を超えてきた名作がこのタイミングであらためてVHSとしてリリース。4Kマスターの素材をワイドスクリーンで収録したことで、これまでとは一味も二味も違う『サスペリア』を堪能できることだろう。
ジャケットはリバーシブルジャケットが採用され、数量限定生産であることを示すナンバリング入り。また、Amazon限定で1982年に発売されたVHSのジャケットをイメージしたデザインの「オリジナルアナザージャケット」が付属するという、往年のVHSファンにはたまらない粋な計らいも。
コロナ禍以降は配信サービスが主流となり、レンタルショップは相次いで閉店。ソフト市場も苦境に立たされ、フィジカルで映画ソフトに触れる機会は著しく減少するなど、映像メディアはこれまで以上に目まぐるしい変化の時を迎えている。そうしたなかで進むVHSへの回帰の流れは、一見すると時代に逆行しているように見えるかもしれない。
けれども配信サービスには、いまも“いつ好きな作品が観られなくなるかわからない”という課題があり、映画ファンの一部ではかえってパッケージの所有意欲が高まりつつある。また、好きな作品を応援するためのグッズとして、そのパッケージを手元に残すという行為は、ある意味でいまの時代に即しているとも思える。いずれにせよ、映画体験の選択肢を増やしてくれるムーブメントのひとつとして、このトレンドに今後も注目しておきたい。
文/久保田 和馬