【ネタバレあり】ニコケイの怪演も光るホラー界の新たなシリアルキラー、ロングレッグスを解剖!
斬新すぎる!ロングレッグスのまさかの犯行手口
数々のホラー映画のエッセンスが織り込まれた『ロングレッグス』同様に、このロングレッグス張本人にも様々なシリアルキラーや事件からの影響を読み解くことができる。
1966年7月14日のアップルホワイト家を皮切りに、14日生まれの9歳の娘がいる家庭をターゲットに誕生日の前後6日以内に殺人を行う「誕生日殺人事件」を繰り返してきたロングレッグス。その特徴の一つが現場に残された不可解な暗号が書かれた手紙。これは言わずもがな、現在も捜査が継続されているという未解決事件の犯人であるゾディアック・キラーの影響だ。
ロングレッグスからの“ヒント”をもとにハーカーが解読したこの暗号には、スペルミスや文法の誤りもあり、これは暗号化されたメッセージに誤字脱字が多かったゾディアックキラーへのオマージュとなっているとか。
また殺しの手口も特徴的で、人形を使ってターゲットを洗脳し、殺人をさせるという黒魔術的なもの。アトリエで作られた精巧な人形の頭部には、高エネルギーを持つ不思議な金属の球体が埋め込まれており、謎の力によって自らの手を汚さずにターゲットを死へと追いやっていく。
この人形による殺人のインスピレーションの一つが、劇中に何度も登場するジェームズ・フレイザー著の「金枝篇」。この本にはブードゥー人形、操り人形といった人間を模した無生物が人間の行動にもたらす影響について記載されている。
そしてもう一つの着想元としてオズグッド・パーキンス監督が挙げているのが、1996年、コロラド州ボルダーの自宅地下室で当時6歳の少女ジョンベネが遺体となって発見されたジョンベネ・ラムゼイ殺人事件。両親がジョンベネに贈ったクリスマスプレゼントの等身大レプリカ人形が、遺体から15フィート離れた地下室の段ボール箱に横たわっていたということに、監督は狂気を感じ、その要素を物語に組み込んだそうだ。
ケイジが役作りで参考にしたものとは?
そんな風変わりな役どころで怪演を見せるニコラス・ケイジもまた、ロングレッグスを作り上げるにあたって様々な映画のキャラクターを参考にしているようで、インタビューでは「フェリーニの『魂のジュリエッタ』(64)に登場する、『私きれい?』と聞く中性的な霊能者をイメージしていた」と語っている。
またモンスター映画のアイコン、ロン・チェイニーのファンであるケイジは、上向きの鼻を付けるなど、チェイニーの『オペラ座の怪人』(25)を自分なりも意識したのだとか。さらに「ロン・チェイニー演じる怪物たちが好きな理由は、彼らが心を持っていたから」と、この殺人鬼に感情や弱さを与えるため、なんと自身の母もモデルにしたというから驚きだ。
様々なインスピレーションから誕生したホラー界のニューカマー、ロングレッグス。仕事部屋にはルー・リードやT・レックスのポスターが飾られ70年代グラムロックへの嗜好が示されるなど、キャラクターを紐解くエッセンスが作品には数多くちりばめられている。繰り返し作品を観て、キャラクターへの理解を深めてみてほしい!
文/サンクレイオ翼