“顔面崩壊”ポスターに騒然!水上恒司が『本当にあった話(の話)』で見せる怪演ぶりから目が離せない

“顔面崩壊”ポスターに騒然!水上恒司が『本当にあった話(の話)』で見せる怪演ぶりから目が離せない

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自分の正義だけを信じ、それを押し通そうとする姿

ここで間違えてはいけないのは、夛田は決してサイコパスだったり、他人を傷つけようとするシリアルキラーではないということだ。彼はあくまでも一生懸命で、ひたむきなだけ。初めてのお芝居で、しかも主役だから、のめり込み方がハンパではなかっただけなのかもしれないが、そこがおもしろい。

役作りに没頭していく夛田
役作りに没頭していく夛田鴻池留衣/文藝春秋/2026「本当にあった話(の話)」製作委員会

作品とマサキという役のことを真剣に考えるあまり、夛田は自分の考えに固執し、周りにもそれを通そうとする。近年流行りのグルテンフリーや日本の政治に対して独自の見解を口にするぐらいならまだいい。だが、台本に対する自分の解釈を脚本家や共演者にぶつけ、自身の意見を正当化しようとする暴挙に出てしまうのだから困ってしまう。

米良との個人レッスンで強引に距離を詰めていく
米良との個人レッスンで強引に距離を詰めていく鴻池留衣/文藝春秋/2026「本当にあった話(の話)」製作委員会

繰り返しになるが、夛田はただ一生懸命なだけなのだ。けれど、自分の正義だけを信じ、それを押し通そうとする彼の姿は傍から見るととんでもなく滑稽で、恐ろしい。それはまるで、己の正義を振りかざしてSNS上で誰彼構わず裁く人たちにも似ている。

脚本家の垣内にも遠慮なく意見をぶつける
脚本家の垣内にも遠慮なく意見をぶつける鴻池留衣/文藝春秋/2026「本当にあった話(の話)」製作委員会

役者が“役者に憧れる役者以前の男”を演じるユニークなアプローチ

そんな現実と虚構の境界を見失う夛田を、水上は大袈裟な芝居でキャラクターっぽく演じるのではなく、“こんな人いるよね”というリアリティを感じさせる言動で生っぽく体現。思ったらすぐ行動に出る。自分の解釈で相手を説き伏せようとする。その暴挙を暴挙とすら思っていない。本人は“これこそが正しい”という姿勢でいるから目はどんどん異様な光を帯び、言葉にも力が入り、暴走がさらに加速していく。自然にこぼれる笑顔が邪悪なものに見えてくる。だが、夛田にとってそれは正しい行動だから揺るがない。だから、始末が悪いし、目が離せなくなる。

役のことを真剣に考えるあまり、自分の考えに固執し、周りにもそれを通そうとする
役のことを真剣に考えるあまり、自分の考えに固執し、周りにもそれを通そうとする鴻池留衣/文藝春秋/2026「本当にあった話(の話)」製作委員会

そんな盲信する夛田のその時々の状態を、水上自身は言うまでもなく、ちゃんと把握し、冷静にコントロールし、自分の肉体で表現しているのだ。役者が“役者に憧れる役者以前の男”を演じきるというその二重構造こそが本作ならではのユニークなアプローチ。このハードルの高いミッションを、高度な芝居でまんまと成立させた水上は別の意味で恐ろしい。俳優という仕事の奥深さを痛感させられる。


文/イソガイマサト

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