「この作品を日本へ届けられるのはとても意義深いこと」単独監督デビュー作『スマッシング・マシーン』を引っ提げ、ベニー・サフディ監督が来日!
“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソンが伝説の格闘家マーク・ケアーを演じ、第83回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)にノミネート。第98回アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞にもノミネートされた『スマッシング・マシーン』(5月15日公開)。その公開に先駆け、3月31日に都内で日本最速試写会が開催。来日中のベニー・サフディ監督がトークイベントに登壇した。
1997年に総合格闘技デビューを果たして以降、無敗のまま頂点へと駆け上がったマーク・ケアー。UFCでの連覇を経て日本のPRIDEでも快進撃を見せるなど、“霊長類ヒト科最強の男”の異名で恐れられる存在となったケアーだったが、勝利を重ねるたびに重圧に侵食され鎮痛剤への依存を深めていく。とうとう初めての敗北を喫した彼は、自らの弱さに向き合い、人生の再起をかけてもう一度リングに挑むことを決意する。
これまで兄のジョシュ・サフディと共に“サフディ兄弟”として様々な作品を手掛けてきたサフディ監督は、本作で単独監督デビューを飾ると同時に、第82回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞。「この作品を日本へ届けられるのはとても意義深いことです。90年代後半から2000年代初頭の日本を誠実に描こうと思っていました」と、作品の主要な舞台のひとつとなった日本への愛情をのぞかせながら挨拶。
さらに主演のジョンソンから企画を持ちかけられたことを振り返り、「基になったドキュメンタリーを観てマーク・ケアーという男にすぐに興味が湧きました。とても強いけれど、それとは裏腹に物腰がとても柔らかく、内に優しさを秘めている。ドウェインだったらケアーの誠実さ、ユーモア、人としての美しさを再現できると思いました」と明かす。
続けてサフディ監督は、製作が一時暗礁に乗り上げた際に自身が俳優として出演した『オッペンハイマー』(23)で共演したエミリー・ブラントがその危機を救ってくれたというエピソードを披露。ブラントは本作で、ケアーの恋人ドーン役を演じている。そんな『オッペンハイマー』でメガホンをとったクリストファー・ノーラン監督が本作を観て、ドウェインの演技を絶賛していたことについて訊かれると、「ドウェインは抑えた演技でありながら、視線一つで1000の言葉を語るぐらい雄弁な演技を見せています」と絶賛。
「自分も俳優としてこんな演技をしたいと思うほどです。今回は現場で起きていることをリアルに、生々しく捉えることを意識していたので、彼ともそこは話し合いながら撮影に臨みました」とジョンソンとのやり取りを振り返り、「期待通りの刺激的な映画になっている」とあらためて手応えをにじませる。そして「ドウェインが演じるケアーを通し、この人として生きるのはどんな感じなのか、それをまるで自分が生きているかのような感覚で味わえるはずです。笑いも喜びも悲しみも、自分の記憶として受け取れる作品になっています」と語った。
本作の日本での撮影は2024年の夏に行われたという。「リングの作り込みからロッカールームに置かれたポカリに至るまで、丹念に誠心誠意を込めて作りました。当時はタングステンの電球を使っていたという情報をもとに、その電球を実際に使ったり。僕自身も格闘技ファンなので、正真正銘のPRIDEを再現したつもりです」とそのこだわりぶりを明かし、本作に本人役で出演している元UFC世界王者のバス・ルッテンからも「当時にタイムトラベルしたようだ」と言われたとうれしそうに振り返る。
また「どっしりとして落ち着いていますし、日本の人たちからもリスペクトを集めている方に演じてほしいと思っていたのでぴったりでした」と、PRIDE主催者の榊原信行役を演じた大沢たかおにも称賛の言葉を贈ったサフディ監督。劇中には大沢以外にも、光浦靖子や石井慧、布袋寅泰など日本人キャストが多数出演しているのも注目ポイントのひとつとなっている。
トーク終了後にはサフディ監督自らの希望で、来場者全員へのサインタイムが。歓声が沸き起こるなか自ら場内を周り、ひとりひとりに丁寧にサインをプレゼントしていったサフディ監督は、最後に「映画を是非エンジョイしてほしいし、浸ってほしいと思っています。人生の小さな瞬間が大きな意味を成すこともあると気付ける映画になっています」と呼びかけていた。
文/久保田 和馬
