腐った世界を怪物と花嫁がぶっ壊す!痛快ロマンススリラー『ザ・ブライド!』の高濃度なエンタメ性と力強いメッセージ

腐った世界を怪物と花嫁がぶっ壊す!痛快ロマンススリラー『ザ・ブライド!』の高濃度なエンタメ性と力強いメッセージ

『クレイジー・ハート』(09)でアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされ、監督デビュー作で脚本も手掛けた『ロスト・ドーター』(21)ではアカデミー賞脚色賞の候補にも挙がったマギー・ギレンホール。多才な彼女が再び監督と脚本を務めたのが、4月3日(金)に公開されるロマンススリラー『ザ・ブライド!』だ。メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」を基にした映画『フランケンシュタインの花嫁』(35)にインスパイアされたという物語は、主眼を怪物ではなく、花嫁に置くことでいま作られるべきフェミニズム映画として着地。原作者メアリー・シェリーと花嫁を一人二役で演じるオスカー女優ジェシー・バックリーら俳優陣の熱演、同時にゴシックホラー、ブラックコメディ、ミュージカルといった様々な要素を兼ね備えた本作の魅力をイラストと共に紹介する。

あの世から語りかける作家メアリー・シェリー(バックリー)が1930年代のシカゴに住む女性アイダ(バックリーの二役)に憑依。その後アイダは闇社会のボス、ルピーノに目を付けられ、手下によって殺されてしまう。一方、科学者フランケンシュタインが創り出した怪物は自らをフランク(クリスチャン・ベール)と名乗り、蘇生の研究家であるユーフォロニウス博士(アネット・ベニング)に伴侶が欲しいと懇願。博士は死んだアイダを墓から掘り起こし、フランクの花嫁“ブライド”として蘇らせるのだが…。

メアリー・シェリーの報われない魂から伝わるフェミニズムのメッセージ

メアリー・シェリーの魂が憑依した“ブライド”が覚醒!
メアリー・シェリーの魂が憑依した“ブライド”が覚醒!イラスト/チヤキ

ジェームズ・ホエールが監督した『フランケンシュタイン』(31)の続編『フランケンシュタインの花嫁』は、怪物が花嫁を求めるというヒューマニズムとセクシュアリティに言及した当時としては画期的な、だからこそいまも語り継がれる不朽の名作として独特の光を放っている。本作がユニークなのはブライドが主役として終始圧倒的な存在感を発揮している点だ。

ジェシー・バックリー扮するヒロインは、まず、原作者メアリー・シェリーとしてモノクロのクローズアップで画面に登場し、怒りに満ちた悪魔のように物語の始まりを宣言。以降は、1930年代のシカゴに暮らす女性アイダに取り憑いたメアリーの魂が、アイダを支配し、時に離脱しながら、花嫁を求めていたフランケンシュタイン改めフランクを相棒にして、欲望と差別が渦巻く魔界都市、シカゴを疾走していく。

【写真を見る】ブライドとフランクの行動が多くの女性たちを奮い立たせるなど、フェミニズムのメッセージがこめられた『ザ・ブライド!』
【写真を見る】ブライドとフランクの行動が多くの女性たちを奮い立たせるなど、フェミニズムのメッセージがこめられた『ザ・ブライド!』イラスト/チヤキ

そもそも、シェリーの原作「フランケンシュタイン」に登場する女性たちは皆、男性社会の無力な犠牲者として描かれていて、そこにシェリーのフェミニズムの教義が示されているのだが、彼女のメッセージはまるで評価されないまま、53歳の若さで病に倒れ、他界した。物語の起点となるシェリーの怒りの本質をそのように理解すると、彼女の無念さがアイダにある意味引き継がれる形で、本作『ザ・ブライド!』の物語が構成されていることに納得が行くはず。思えば、ギレンホールは前作『ロスト・ドーター』でも、母親としての使命を全うできなかった主人公の後悔と怒りにフォーカスしていた。彼女にとってこの最新作は映画作家としての方向性をより明確にした作品と考えて間違いないと思う。


一方、クリスチャン・ベールが演じるフランクはブライドとは真逆で、孤独に打ちひしがれた怪物として画面に現れる。ブライドに寄り添い、迫り来る危険にも敏感に反応する繊細さは、タイミング的にどうしてもギレルモ・デル・トロの『フランケンシュタイン』(25)でモンスターを演じたジェイコブ・エロルディと比較してしまう。でも、感情を抑制し、いつもためらいがちで、ツギハギだらけの顔とは対照的に柔らかな雰囲気を漂わせるベールの造形は、むしろ、ホエールが監督した『フランケンシュタイン』で怪物を演じたレジェンド、ボリス・カーロフに近い気がする。派手なヘアスタイルと不気味なメイク、カラフルな衣装で登場するブライドとフランクを視覚的に比較すると、さらに、ギレンホールが意図した女性主導のテーマが浮かび上がる仕掛けだ。

シカゴからニューヨークへと向かうブライドとフランク
シカゴからニューヨークへと向かうブライドとフランク[c]2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
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