仲野太賀が盟友・若葉竜也との共演に涙! 峯田和伸も23年越しの想いを吐露『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』舞台挨拶
映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の公開記念舞台挨拶が、3月28日、TOHOシネマズ 日比谷で開催。峯田和伸、若葉竜也、吉岡里帆、仲野太賀、間宮祥太朗、脚本の宮藤官九郎、田口トモロヲ監督が揃って登壇した。舞台挨拶中、田口監督の23年前の作品『アイデン&ティティ』(03)が大好きだという仲野が、10代のころからの友人で、同じく同作の大ファンである若葉と本作で共演できたことへの感慨で涙を流し、共演陣も思わずもらい泣きするというひと幕もあり、劇場は感動に包まれた。
いまから23年前、ロック映画の金字塔となった、みうらじゅん原作、宮藤の脚本&田口の初監督作となった映画『アイデン&ティティ』。本作は、その系譜とも呼べる新たな音楽青春映画となる。構想から10年を経て、ようやく公開を迎え、田口監督は「なんてのろまで呑気だったことかと思いますが、自分のスピードで作り上げ、こうやって公開までたどり着けて、いまはうれしいですし、みなさんに感謝しかありません」とキャスト陣と客席に向けて深々とお辞儀した。
「銀杏BOYZ」で活躍する峯田は、ミュージシャン役ではなく、彼らの目撃者であるカメラマン役で出演。「自分の周りには個性的なバンドマンがたくさんいるし、ちゃんとしている人もいるけど、常識人が果たしてカッコいい音楽をつくれるか?というと、そういうわけでもなく、生活が破綻している人がめちゃくちゃカッコいい音楽を鳴らすこともあるんです。でも、そういう人たちだけだと行き詰まってしまうし、ちゃんとしている人、社会的で周りが見えている人もいないと広がらないんです。僕はそういう人たちに迷惑をかけたことも多々あるので(苦笑)、今回の役(=ちゃんとしている側)を演じて、そういう人の協力があって音楽ができているんだな感じて、周りの人に感謝しています」としみじみ語る。
『アイデン&ティティ』に衝撃を受けたという若葉は「言語化するのが難しいんですけど『アイデン&ティティ』に影響を受けて、10代のころ、太賀と2人でしゃべったり、弾き語りをしたりしていたので、僕と同じように、この『ストリート・キングダム』に影響を受けた俳優さんやスタッフさんと、十何年後とかにまた一緒に映画を作れたら最高だなと思います」と語った。
吉岡は「Do It Yourself(=DIY)という言葉が映画の中でも印象的に出てきますが、(自身が演じた)サチがモモやユーイチと出会って、レコードを聴いてもらえるということを誇りに思っている感情が好きです。ないことを憂うのではなく、自分で作るし、自分で追いかけるし、自分で実現していく。一歩一歩だけど、歩みがちゃんとある、そこが映画の一員としても、良いキャラをやらせてもらえているなと実感していました」と本作への出演の喜びを口にした。
仲野は、全裸で歌う未知ヲを演じたが、未知ヲのモデルが「ザ・スターリン」の遠藤ミチロウであることに言及。「そのプレッシャーたるや…(苦笑)。数々の人に影響を与えた伝説的カリスマであり、そういう人物を果たして自分が演じられるのだろうか?と」と凄まじいプレッシャーを明かした。「演じるうえで僕は、なぜ彼はそういうことをやるのだろう?と論理的に考えたいタイプなんです。『なぜ未知ヲは豚の臓物を投げつけるのか?』『なぜ未知ヲはお客さんに放尿するのか?』と考えても、考えてもわからないんです(苦笑)。いろいろな選択肢があるなかでそうせざるを得なかった初期衝動を大事にしたいと思い、『こうするしかなかった』という熱量をたぎらせていくのを大事にやりました」と振り返った。
カリスマ的な雰囲気をまとうバンド「軋轢」のボーカリスト、DEEP役を演じた間宮は「カリスマ的で孤高で…というのは脚本上でもセリフで出てきますし、監督からもモデルとなった(「フリクション」の)レックさんの人となりについて『とにかくカッコよく』と暗示をかけられていて、プレッシャーではありましたが、口数が多いわけでもないので、とにかくライブでの演奏シーンが表現として強度のあるものになっていればいいなと演じました」と述懐。
宮藤は、脚本執筆について「『ストリート・キングダム』という原作本があるんですけど、半分は写真で、半分は事実が書いてあるだけで、セリフは、ないんです。写真から想像する『きっとこうだったに違いない』という物語を自分で考えて、セリフを考えて書きました。だから、レックさんがどんなしゃべり方をするかなんて知らないし、どうやって書いていいかわかんなかった。トモロヲさんに『これどうやって映画にするんですか?』と聞いたくらい、事実と写真の記録だけでした。でも、その記録をした人(=著者の地引雄一でユーイチのモデル)が主人公ということで、それを自分のなかでドラマにするのがいちばん大変でした」と苦労を明かす。
撮影現場では、バンド同士の間に独特の緊張感が生まれていたようで、峯田も「本物のバンドみたいだった」と振り返る。「軋轢」のライブシーンの撮影を「TOKAGE」のメンバーで見に行った時を振り返り、若葉が「予想以上にかっこよくて、メンバー同士“やばい!”ってなった」と明かすと、間宮は「正直うれしいです(笑)」と照れ笑い。
撮影に少し遅れて参加したという仲野は「ライバル心の塊だった」と振り返り、「扮装部に聞いてみたら、すでに推しバンドができていて。それが悔しくて!絶対負けたくないと思って、各バンドでスタジオ練習とかされてたと思うんですけど、俺は本番前ひたすら腹筋と腕立て伏せ!それで自分のモチベーションを上げて本番に臨んでました」と語ると、これに若葉が「芸歴も長いのに!」とツッコミを入れ、会場は笑いに包まれた。
トーク後半では、映画にちなんで、キャスト陣5名に「最近、胸が熱くなった体験」をフリップで発表してもらった。峯田は「マネージャーに子どもが生まれた!名前は僕が考えました」と書いたフリップを掲げ「おめでとう!」と呼びかけ、会場全体が拍手で祝福。若葉は「後輩の自主映画の現場の手伝いに行った」と書かれたフリップを見せ、本作でもバンドメンバーで共演した大友律がつくる自主映画の現場を手伝った経験を告白。
吉岡のフリップには「時代の目撃者」との文字が。吉岡は「この映画に参加して、その時代を本当に見たことがある人、ライブハウスに行ったことがある人、それに憧れて音楽を始めた人とか、いろいろな方と話す機会がありましたが、みなさん、とんでもない熱量で話してくださるんですよ。そういう人と出会うたびに、この映画がなかったら、一生話すことがなかったかもしれない人と、音楽の歴史の話をこんな楽しくできるって、『最高だな!』と思っています。胸がいっぱいになります」とうれしそうに語った。
間宮は「本作への出演」と書いたフリップを見せ、改めてこの映画への出演について「14歳の時に『アイデン&ティティ』を観て、銀杏BOYZが好きで…みたいな。音楽雑誌のインタビューを読んだり、友達と深夜に真っ暗な部屋に閉じこもって銀杏BOYZのDVDを見たりしていたし、太賀とも当時から友達で、そのころから竜也くんの名前も聞いていて『いつか会わせたい』みたいな話も聞いていました。その時の自分のことをすごく誇りに思えるというか、十数年経って、すごく報われたなと思います」と感慨深げに語った。
そして、トリを務めた仲野がフリップに書いたのは「若葉竜也」だ。仲野は「祥太朗の話とも通じるんですが、竜也とは中学生のころからよく遊んでいて、家が近くで、チャリで20分かけて毎晩、家に行くみたいな日々がありました。そこで聴いているのは銀杏BOYZ。もっぱら映画の話をして、『アイデン&ティティ』の話で盛り上がり、一緒に弾き語りをして、劇中の楽曲のコードを教えてもらって練習したり…。この映画のオファーをいただいた時、震えるくらいうれしかったですが『モモ役は誰ですか?』と聞いたら『若葉竜也です』と…。『うわっ!こんなことあるんだ?』と、あまりに感慨深すぎて…。最近、大人になって久々に(若葉の)家に行ったら『アイデン&ティティ』のポスターがあって…。当時はなくて、たぶん、手に入るものじゃなかったんですね。それが趣味だらけの部屋の真ん中に貼られているのを見て…」と話している内に、感極まったのか声を詰まらせる。
そんな仲野の様子を見て、峯田、若葉、吉岡らも思わずもらい泣きをして目頭をぬぐう。仲野は涙ながらに「変わらずに好きなものがあるってすてきだなと思って…。この座組で竜也が主役として立っていることがあまりに美しくて、いざ本編を観たら『なんてすばらしい芝居をしてるんだ!』と思いました。こんなに難しい役をこんなに自分のものにして圧倒的に表現している竜也を見て、カッコいいなと思って、胸が熱くなりました」と思いを絞り出す。
若葉は、涙を流す仲野の姿を見て「これは記事になるぞ!」と会場を笑わせつつ、盟友の言葉を嚙みしめながら「そんな映画なんです。夢を叶えてくださった僕の周りのスタッフ、それを見つめてくれていた仲間たちに感謝してもしきれないです。1人でも多く、この映画を観て、なにかを感じてもらえればうれしいです」と客席に向けて呼びかける。
峯田は「23年前に『アイデン&ティティ』という映画に出ることになって、初めてお芝居をやることになって、あの時は正直、なにがなんだかわからないままでした。でも23年が経って、こうやって、あの時、『アイデン&ティティ』があったから、こういう感じになりましたという役者さん、スタッフさん、お客さんの声に、あの時は気づけなかったけど、この映画も、観た人が何年か後に、あの時『ストリート・キングダム』があったから…と繋がっていくかと思うと、本当に言うことありません。『アイデン&ティティ』の中で『やらなきゃいけないことをやるだけさ。だからうまくいくんだよ』というセリフがあって、僕はそれからずっと、音楽をやる時も、映画に出る時も、その言葉がずっと残っています。あの時、あの言葉をくれて『ありがとう』とみうらじゅんさん、宮藤さん、トモロヲさんに言いたいです」と涙で言葉を詰まらせながら語り、会場は再び熱い拍手に包まれる。
田口監督は「宮藤くん、峯田くん、『アイデン&ティティ』撮ってよかったね」と感無量の様子。「今回、『アイデン&ティティ』が大好きという方が集ってくれて、『アイデン&ティティ』の貯金をすべて使いました。この作品でそれぞれが、題名の通り、自分のやり方で、演技という音を鳴らしてくれました。いろいろあって、心が折れそうな時もあったんですけど、あきらめずに作り上げて、よかったと思います。1作目からのスタッフの方たちも同志だと感謝しています。僕が原作を読んで感動したことを、なかなか文字化できないので、映画という形で世に送り出しました。少しでもその気持ちが伝わればいいなと思っています」と語り、感動の渦のなか、舞台挨拶は幕を閉じた。
文/山崎伸子
