藤井道人「秋葉恋の次の作品がどうなるのか見守ってほしい」『東京逃避行』公開記念イベントで師弟の絆が光る
『正体』(24)や「イクサガミ」(Netfixで独占配信中)で知られる藤井道人監督がプロデュースした、話題の映画『東京逃避行』(公開中)の公開記念イベントが、3月24日にテアトル新宿にて開催され、秋葉恋監督と藤井プロデューサーが登壇。熱い師弟愛と映画作りへの情熱を語りあった。
本作は、秋川監督自身が新宿・歌舞伎町で過ごした経験をもとに執筆した完全オリジナル脚本で、物語の舞台は、都の条例により“トー横”が封鎖されたあとの歌舞伎町。居場所を失った4人の想いと運命が交錯する、たった一夜の逃亡サスペンスとなっている。
3月20日に公開された本作は、興行通信社が発表するミニシアターランキング(3月20日~3月22日)において邦画第1位を記録する好発進となった。本作で長編映画監督デビューを果たした秋葉監督は「皆様のすばらしいお力のおかげでこのような結果が生まれたと思います。この先もさらに広がっていくように僕も精進していきたいです」と挨拶した。
秋葉監督が藤井に出会ったのは高校時代。藤井が審査員を務めた高校生映画甲子園で秋葉監督は『残されたもの、残せるもの、』にて最優秀監督賞を受賞した。秋葉監督は「時を同じくして藤井監督が『新聞記者』で日本アカデミー賞を受賞されて。それにものすごく感動して藤井さんの背中を追いかけたいと思った」と打ち明けると、藤井は当時の秋葉監督について「だぼだぼのシャツを着てサングラスをかけて。生意気そうな奴と思ったけれど、彼の撮った映画は芯があって挑戦的でおもしろかった」と振り返った。
秋葉監督はその後、藤井が主宰するスタジオBABEL LABELの新レーベル「2045」の一員に。藤井いわく「断っても断っても、秋葉恋は何度もスタッフ募集に応募してきた。その諦めの悪さは多くの人が持っていないものだった。秋葉恋は映画が好きで現場が好きで、クリエイターへのリスペクトがある。それが魅力的だった」とチームの一員として受け入れた理由を明かした。
本作は藤井、および綾野剛が審査員を務めた第2回東京インディペンデント映画祭のグランプリ受賞作を長編映画化したものだ。当初、藤井は秋葉監督が“身内”ということでグランプリ選出を渋ったそうだが、綾野が秋葉の作品一択で「俺は彼の映画に出たい」と言ったことでグランプリ受賞に至ったという。これに藤井は「綾野剛さんは本作を観てくれていて『いまの彼にしか撮れない映画になっていた』と言っていました」と綾野のリアクションを紹介。
本作について藤井は「頑張ったなと思う」と評しながら「観客の皆さんに観ていただいていろいろな意見や反応をもらうことが人生の糧になる。辛口の感想もあるかもしれないけれど、それはよかれと思って言っていることだと若いうちから思ったほうが楽になる」とアドバイスした。秋葉監督は「初号試写後に藤井さんが『よかったよ』と言ってくれた。その言葉を聞いた時に、僕は藤井さんなしでは生きていけないと思いました」とリスペクトを示した。
観客とのQ&Aコーナーに入ると、観客から現在のクリエイターに必要な要素を問われた藤井は「出会いを諦めないこと。すばらしい監督とすばらしい俳優がすばらしい映画を作れるかと言ったら、それはわからない。でも自分にとってとても大切な人は俳優部にもいて、その人だから頑張れるという奇跡的な化学反応がある。それに出会えるまで続ける。出会えるまで出会いを諦めない。監督であれば、いいプロデューサーに出会うまで努力を諦めない。それが大事な気がする」と回答した。
最後に藤井は「秋葉恋の次の作品がどうなるのか、それを見守ってほしいです」と観客に呼びかけながら「自分の足で立って自分でいいプロデューサーを見つけるまで頑張ってほしい」と秋葉監督を激賞。秋葉監督は「藤井さんの期待に応えることができたのか日々不安ですが、映画を観てくれた方々からいろいろな感想をたくさんいただき、自分の成長する時間になっていると思います。藤井さんの背中を超えられるように、5年10年、日本映画と観客の皆さんと歩んでいけたら」と意気込みを新たにしていた。
最後の挨拶と共に巻き起こった観客の大きな拍手で幕を閉じた本イベントは、秋葉監督と藤井道人の、師弟を超える特別な関係がさらに強い絆で結ばれることが証明された瞬間となった。『東京逃避行』の輪は広がり続けているので、今後の動向にも注目していきたい。
文/山崎伸子
